【NAVAJO】ナバホの名工【George Kee】ジョージ・キー(c.1930-1980)による作品。アリゾナ州スコッツデールにあったインディアンクラフトショップ【White Hogan】ホワイト ホーガンに在籍中の作品であり、同店で販売されたビンテージ/アンティークベルトバックルです。
重厚なシルバーによって形作られた大変シンプルなスクエアシェイプのプレートタイプバックルで、美しいターコイズと同作者らしいカッティングワークによるデザインのみで構成された作品となっています。
1950年代後半~1970年代前半頃に作られた作品で、シンプルながら質実剛健で堅牢なベルトバックルに仕上げられています。
中央付近には作品のメインとなるスモーキーでワイルドなターコイズがマウントされ、その右上部分にはアルファベットの『G』でありモノグラムの可能性を感じるカッティングワークが施されています。
非常にシンプルでミニマルなデザインの作品ですが、White Hoganにおいて生み出され受け継がれた美意識や価値観が具現化された作品となっています。
マウントされた石は、ワイルドな表情が特徴的なハイグレードパージャンターコイズで、最も質の高いパージャンがアメリカで流通した1950年代~1960年代頃に輸入されたものと推測されます。
素晴らしいクオリティーを持ち、多く場合に不透明な石を産出するパージャンターコイズですが、こちらにマウントされた石は、まるで【Bisbee Turquoise】ビズビーターコイズの様な強い透明感とスモーキーな表情を持つマトリックス、濃いブルーの色相を持つターコイズです。
さらに、母岩を含むダークブラウン~サンドグレーのパージャンらしいワイルドなマトリックスが入ることで複雑な景色を形成しており、ハイグレードにグレーディングできる無添加ナチュラルターコイズとなっています。
【Persian Turquoise】パージャンターコイズ/ペルシャンターコイズは、現在のイラン産にあたり、カスピ海近くの鉱山で古くからたくさんのターコイズを産出しています。その歴史は紀元前にさかのぼることができ、中世にはトルコを経由してヨーロッパに輸出されたことからターコイズ/トルコ石と呼ばれるようになりました。(トルコではターコイズは産出していません。)
北米とは違った価値基準を持ちマトリックスの入らないフラットなブルーが上質とされ、すでに1930年代以前からアメリカにも輸出されていたようです。
また、1950年代にはネバダ、アリゾナの多くのターコイズ鉱山の石が細かくグレーディングされ、パージャンターコイズも上質なものは流通量が少なくなっていたようです。
北米産ターコイズの多くが薄い脈状で形成されているのに対し、パージャンターコイズは塊で採掘できるのが特徴で、それにより高さのあるハイドームカットが可能になっています。北米産では、【Number Eight Turquoise】ナンバーエイトや【Lone Mountain Turquoise】 ローンマウンテンターコイズ等が塊状で採掘されます。 色はターコイズらしい水色~ブルーの石を産出し、大変幅広いバリエーションを持っています。
幅広いバリエーションを持つ為、グレーディングの困難なターコイズであり、前述の様に世界基準と北米の基準は全く異なっていますが、比較的ペールトーンの石が多く、透明感と深く濃い色味を持ちワイルドなマトリックスの入るこちらの様な石が北米における基準では最も高く評価されています。
【George Kee】ジョージ・キーは1930年代にアリゾナ州に生まれ、兄弟に【Allen Kee】アレン・キー(1916-1972)や【Ivan Kee】アイヴァン・キーを持ち、若い時期からシルバースミスとしてのキャリアをスタートさせていたようです。
さらに、従兄には『ナバホモダンジュエリーの父』とも呼ばれる【Kenneth Begay】ケネス・ビゲイがおり、非常に恵まれた環境で技術やデザインを学び、兄弟たちと互いに切磋琢磨して現役当時から有名作家として、さらにはナバホモダンスタイルジュエリーの旗手として活躍しました。
1950年代から前述の【White Hogan】ホワイト ホーガンに所属し、同ショップを有名店にしてゆく立役者となっていきます。
1980年代までシルバースミスとして活動されたようですが、キャリア後期はWhite Hoganには所属していなかったようです。
現在は、息子である【Anthony Kee】アンソニー・キー氏にその技術やデザインが受け継がれています。
【White Hogan】ホワイト ホーガンは、1930年代後半に【Fred Wilson's】フレッド・ウィルソンズで働いていた【John Bonnell】がアリゾナ州フラッグスタッフで始めたインディアンクラフトショップで、創業当時からKenneth BegayとAllen Keeの両名とはパートナーシップを持っていました。
1951年には、同州スコッツデールに移転し、有名ショップとなっていきます。 当時の二人が作り上げるジュエリーはシンプルでエレガント、ナバホの武骨で原始的な技術を継承していましたが、非常に新鮮で新しい価値観を持っており、なんと、1950年だけで66本ものアワード受賞リボンを獲得しています。
そんなセンセーショナルな彼らの活躍によりWhite Hoganが批判の的になることもあったようですが、オーナーであるJohn Bonnellはインディアンシルバースミスをパートナーとして対等に接し、彼らの活躍の礎を築いたようです。
そしてKenneth BegayとAllen Keeは、当時日本に比べるとかなり発達していた書籍/メディアにも取り上げられ、全米で知名度のある作家となっていきます。
その後も二人の作り上げた世界観は、本作の作者であるGeorge KeeやIvan Kee、甥にあたる【Anthony Kee】やKenneth Begayの弟【Johnnie Mike Begay】、さらには現代作家として活躍する【Edison Cummings】へと引き継がれてゆき、2006年に閉店するまで受け継がれていました。
本作もそのデザインには、White Hoganの提案したシンプルでエレガントな表情や無駄のない造形美が息づいており、同店の美意識が体感できる作品です。
ナバホジュエリーのエスニシティーな魅力と共に、クリーンでミニマルなデザインによってモダンジュエリーのような表情を有し、比較的細いベルトにフィットするサイズのプレートタイプ。その為、日常的なスタイルやカジュアルな服装にも取り入れやすく、少しエレガントな装いにもフィットする高い汎用性も魅力的なベルトバックルとなっています。
名工George Keeの作品というネームバリューのみならず、その秀逸なデザインと深淵な奥行きを見せるハイグレードターコイズによって、コレクタブルでトレジャーハントプライスなビンテージピースの一つとなっています。
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コンディションは、シルバーのクスミや細かなキズ等は見られますが、特にダメージの無い良好な状態です。
ターコイズも長い時間の経過を感じさせない素晴らしい艶と透明感を保っています。
マトリックス部分には僅かな凹凸が見られますが、それらはカットされた時からの天然石が持つ特徴であり、ダメージではありません。