about OLD PAWN JEWELRY
ターコイズや貝殻等のビーズを用いたネイティブアメリカンによるアクセサリーや衣服装飾 の歴史は紀元前にまでさかのぼる事が出来ます。
しかし現在、代表的なインディアンジュエリーの一つである『銀』を用いたジュエリーの 制作は、スペイン人の入植により伝わった技術から生まれたもので、スペイン人の入植から 250年以上も経過した1800年代中頃から新しく創造されていった文化です。
1830年頃に生まれたナバホ族のAtsidi Saniは<Old Smith>と呼ばれ、現在のジュエリー の祖として有名です。
諸説ありますが、ヒスパニック系(メキシコ人)から鉄鍛冶技術がもたらされ、その後に 銀細工等の技術が出来ていくのですが、彼らはそれまでにあった獣皮革の加工技術や 伝統的な装飾文化を新しい鍛冶技術に織り交ぜて発展させていったのです。
そこに大変な新しさ、芸術性が生まれました!
Atsidi Saniからその息子へまたプエブロの他種族へとそれらの技術は進化しながら伝わって 行きました。
当時、多くのインディアン部族は迫害され、ロングウォークと呼ばれる強制移住や労働 からようやく解放されようとしていた時期にあたり、大変な貧困に喘いでいました。
アメリカの州制度確立など政治的にも重要な役割を果たしていた部族も存在しましたが、 ほとんどの部族の生活は保留地での大変原始的なもので、急速に近代化するアメリカとは とてもなじまない物だったようです。
そんな中、生まれたのがのちに『Old Pawn』と呼ばれるジュエリーです。
もともと、装飾品として作られはじめて細い指輪、腕輪そしてボタンなど単純なものから 制作されてゆき、スプーンやコンチョベルトなど実用性のあるものも作られていきます。
当時は必要なツールも全て手作業で作られ、まだまだ未熟な技術により形作られていました 原始的なサンドキャストや鍛造による成型で制作されて、最後に砂や灰を使って磨かれ、 鹿のバックスキンで仕上げられていたようです。
1870年代終わりごろにはロウ付けによりターコイズが初めてセットされます。 そして、1880年から90年代にかけてヒスパニック系の人々による技術の享受もあり、 急速に発達していきます。 このころはナバホとズ二やホピとの間でほとんど差がなく識別する事は出来なかった 様です。
また、1900年代に入るとジュエリーはボウガード等の実用品から装飾品まで作られて いましたが、まだ産業にはなっておらず家族や部族間でのトレードのために作られたもので、 素朴ながら芸術性の高い物が多く残っています。
そこで発展するのが白人によるターコイズトレーダーとパウンショップです。
大変貧しく、金銭による財産を持たなかった彼らはそれらの宝飾品を財産として おり、<Pawn Shop=質屋>の名前が付けられている通り生活の為、現金収入が必要で 白人が運営する質屋に入れられることが多かったのです。
当時は安全の為に預ける、と言う感覚もあったようです。
それらのうち引き上げることが出来ず『質流れ』となったものがトレーダーの手で 流通したことから後に『Old Pawn Jewelry』と呼ばれるようになりました。
金の買い取り販売に湧く現在のPawnShopでもインディアンジュエリーはよく売られています。
ちなみに現在でもアメリカ中西部などでは頑なにインディアンの精神、文化を受け継いで 暮らしている人たちが多く存在します。 逆に、ロサンゼルス中心地で突然現れる広大な空き地は彼らの土地としてアメリカ政府が 保障している土地であり、治外法権が適用されるために大きなカジノが運営され、非常に 裕福なインディアンも現在では多いようです。
そして・・・1910代以降になるとフレッドハービー社の登場などでスーベニア産業として 一般に普及し、50年代以降は量産品が大量に出回ったようです。
同時に、昔ながらの伝統的な作品を作り続ける作家やコンテンポラリージュエリー作家も 誕生しました。 個人的には常に新しく、あらゆる技術を取り入れてきた彼らにとってコンテンポラリーな 作品こそ本質であり、素晴らしい物がもっと生まれてほしいと思います・・・
1970年代にはハリウッドスターが着用したことにより大流行しました。 このころには、オールドパウンとフレッド・ハービースタイル、それにコンテンポラリー、 量産品、と明確に分類されるようになっていました。
それらの中でも『Old Pawn Jewelry』は希少性やその自由な造形、芸術性で最も高い評価を 受けています。
先でも述べた通り、Old Pawn Jewelryは自らや家族の装飾品として、さらには一家の財産 としての側面を色濃く持っており、産業としての工芸品ではなく部族や家族、自分たちの アイデンディディーとして、家宝として制作されたのもがほとんどなのです。
そのため、それらに込められた思いや呪術的な願いはとてつもないだろうと思います。
インディアンジュエリーの開祖であるAtsidi Saniはシャーマンでもありました。 インディアンジュエリーを身に着けることで我々日本人にも共通する部分があるインディアンの 精神性、スピリット、アニミズムを感じることが出来ると思います。