about FRED HARVEY STYLE
ターコイズや貝殻等のビーズを用いたネイティブアメリカンによるアクセサリーや衣服装飾の歴史は紀元前にまでさかのぼる事が出来ます。
しかし現在、代表的なインディアンジュエリーの一つである『銀』を用いたジュエリーの制作は、スペイン人の入植により伝わった技術から生まれたもので、1800年代中ごろから新しく創造されていった文化です。
1830年頃に生まれたナバホ族のAtsidi Saniは<Old Smith>と呼ばれ、現在のジュエリーの祖として有名です。
当時、多くのインディアン部族は迫害され、ロングウォークと呼ばれる強制移住や労働からようやく解放されようとしていた時期にあたり、大変な貧困に喘いでいました。
アメリカの州制度確立など政治的にも重要な役割を果たしていた部族も存在したが、ほとんどの部族の生活は保留地での大変原始的なもので、急速に近代化するアメリカとはとてもなじまない物だったようです。
そのため現在『Old Pawn』と呼ばれるジュエリーは銀貨や銀製品を溶かして作られ作家が部族間でトレードするために作られた素晴らしい工芸で、芸術性も高い物が多いのですが、<Pawn Shop=質屋>の名前が付けられている通り、生活の為、現金収入が必要で白人が運営する質屋に入れられることが多かったのです。
それらがトレーダーの手で流通していたことから『Old Pawn Jewelry』と呼ばれるようになりました。金の買い取り販売に湧く現在のPawnShopでもインディアンジュエリーはよく売られています。
ちなみに現在でもアメリカ中西部などでは頑なにインディアンの精神、文化を受け継いで暮らしている人たちが多く存在します。
逆に、ロサンゼルス中心地で突然現れる広大な空き地は彼らの土地としてアメリカ政府が保障している土地であり、治外法権が適用されるために大きなカジノが運営され、非常に
裕福なインディアンも現在では多いようです。
そんな『Old Pawn Jewelry』とは違った側面を持つのが『Fred Harvey Style』と呼ばれるジュエリー群です。
1800年代、アメリカ各地でゴールドラッシュがおこり、それまでほとんど荒野だったサウスウエストにも全米のみならず世界中から人がやって来るようになりました。それに伴い汽車が整備され、裕福な東海岸の白人たちは中西部などに旅行するようになりました。
そんな当時、観光産業で大成功を収めたのが『フレッドハービー社』です。駅に隣接したレストランやホテルを次々に開業し一世を風靡したそうです。
その中で中西部の名産品?お土産物として開発されたのがインディアンジュエリーでした。
それまでの作家が制作したものは重厚で重く、<スーベニア>には馴染みませんでした。そこで、軽量化しサンダーバードやアロー等、象徴的かつポップなモチーフを取り入れるよう依頼しました。これらが大変な人気を博すこととなったのです。
観光産業から生まれたジュエリーの為、アメリカでは<ツーリスト ジュエリー>と呼ばれる事も良くあります。
ただし、フレッドハービー社と言うのはあくまでそれらを企画、販売していた会社で製造は色々な工房に外部委託していました。
チマヨ村のラグ等で稀にフレッドハービーのネームが入った物を見かけますが、それらはフレッドハービー社からのオーダーで作られたモデルと言う事が分かりますね!
ジュエリーでは1900年代初頭からニューヨークに「Arrow Novelty」、ニューメキシコ等では、「Bell Jewelry」や「Maisel」「Silver Arrow」と言ったいくつかの工房が有名です。
これらのお土産物は1910年~1940年代当時より人気で、それなりに量産されたようですが、そのデザインの多様性や、オールドスクールな工芸品とアメリカらしい量産品の中間的味わいが熱狂的なファンを生んで、今日ではラルフ・ローレンや、クレイジーピックのデザイナーであるアーモンド・セラまで!世界中に沢山のコレクターが存在します。
そのため、現在ではなかなか良いものが見つからなくなっているようです。
また、日本でも大変多くのインディアンジュエリーがフレッド・ハービースタイルと謳われ販売されていますが、『スタイル』と言う意味では間違いではないのかも知れませんが、その多くがハリウッドの影響でインディアンジュエリーが流行した70年代にリプロダクトとして作られたのもです。
実際に上記の工房などで制作され、フレッドハービーのレストランやホテルで販売されていた1940年代以前の物は本当に希少で、ターコイズについてもナチュラルターコイズがほとんどで、個体によっては現在では大変にコレクタブルとなっている希少なターコイズがセットされている事があります。そう言う意味でも楽しいアンティークジュエリーが『Fred Harvey』だと思います!
新しい年代の粗悪なものが多く流通していますが、是非本当のOld Harvey Jewelryを手にとって下さい!
Old Pawn Jewelyの素晴らしいものには敵わないまでも大変素晴らしい味わいとぬくもりがありますし、100年近い時間が経過した重厚感は『土産物』とは思えない素晴らしいものです!
さらにこれらの刻印によるシンボル(サンダ―バードやスワスティカ、アロー等)はもともとお守りの意味合いがあり、インディアンの神秘的な力を身に着ける意味合いがあります。
インディアンジュエリーの開祖であるAtsidi Saniはシャーマンでもありました。インディアンジュエリーを身に着けることで我々日本人にも共通する部分があるインディアンの精神性、スピリット、アニミズムを体感できるかも?