【ACOMA】アコマプエブロの巨匠3兄弟【Hunt Brothers】の中でも最も秀逸な作品を残している次男【Wayne Henry "Wolf-Robe" Hunt】ウェイン ヘンリー『ウルフ ローブ』ハント(c.1902-1977)の作品。愛らしくも秀逸なデザインのサンダーバードシェイプに、美しいターコイズのマウントされた大変貴重なアンティーク/ビンテージリングピースです。
トラディショナルなナバホジュエリーの技術を踏襲しながらもWolf-Robeらしい独自性と突出したデザインセンスを感じさせる秀作となっています。
1940年代後半頃~1950年代に作られたと思われる作品で、シャンクはフロントが割り開かれた『スプリットシャンク』と呼ばれる伝統的な造形で2本に割り開かれてた造形となっております。
そのようなシャンクをベースとして、とても丁寧なカッティングワークによってオーセンティックで愛らしさのあるサンダーバードシェイプのフェイスが構成されています。
そこに、細かなスタンプワークによってサンダーバードの細部が描き出され、中央にはカボションカットされた美しいジェムクオリティターコイズがセットされており、ハンドメイドによる独特なノッチドベゼル(刻みの入る覆輪)も特徴的なディテールとなっています。
キャッチーな印象を持つサンダーバードモチーフですが、ウルフ・ローブという作者らしさを感じさせるサンダーバードの表情やそのデザイン、細部を描くスタンプワークとスタンプツール(鏨・刻印)の素晴らしいクオリティなど、オーセンティックな造形スタイルでありながら強いオリジナリティも持った作品です。
内側には『Wolf-Robe』のホールマーク(サイン)と、スターリングシルバー(925シルバー)製であることを表す『STERLING』の刻印が施されています。
セットされたターコイズについて鉱山の特定は困難ですが、非常にアーシーで深遠な表情をもつ石です。
柔らかなトーンの澄んだ水色を基調にブラウン等のマトリックスが入り、長い経年や摩擦に耐え得る硬度を持ったジェムクオリティを誇るターコイズです。
濃いブルーではありませんが現在も独特の煌めきを宿し、キャッチーで愛らしいサンダーバードを持ち―ルとした本作にとても良くフィットしたターコイズです。
【Wayne Henry "Wolf-Robe" Hunt】ウェイン ヘンリー ”ウルフ ローブ” ハントは、アコマ プエブロの巨匠として知られ、インディアン自身で店を経営した初めての作家である【Clyde Hunt】(c.1900-1972)を兄に持ち、その兄を師として、とても若い時期からシルバースミスとしてのキャリアをスタートしたようです。
1930年代にはアルバカーキに在住し、多くのショーを受賞しながらハイスクールにも通っていた記録が残っています。その後、オクラホマ州タルサに近いカトゥーサにて【CATOOSA Indian Trading Post】を経営しました。
そして、BELL TRADING POSTでシルバースミスとして働きながらそのデザインにも携わった弟の【Wilbert Hunt】(c.1906-2007)と合わせた3兄弟は、『Hunt Brothers』と呼ばれました。彼ら兄弟の中でもホールマーク(作家のサイン)を使用し、多くの秀作を残したのがWolf-Robeであり、ナバホの偉大な作家【Fred Peshlakai】フレッド・ぺシュラカイ(1896-1974)等と同時期に『作家』としてインディアンジュエリーを制作した最初期の人物の一人です。
また当時、共に仕事をしたアコマの作家の子孫には当店でも長く懇意にして頂いた【Greg Lewis】グレッグ・ルイス、その息子である【Dyaami E Lewis】ディアミ・ルイスがおり、その技術やスタイルは現代にも受け継がれています。
ツーリストスタイルの作品も多く残していますが、もちろん全てハンドメイドで制作され、オーセンティックでトラディショナルな技術をベースとしながらも独自性を模索し、さり気なくも一見して同作者の作品である事をを感じさせるデザイン/造形もWolf-Robeの特徴です。
内側に刻印された『STERLING』は、銀含有率92.5%の地金であることを示す表記であり、1930年代初頭頃には登場していました。
ただし、ショップやトレーディングポストにおいて多用されるようになったのは戦後である1940年代後半以降のようです。
本作の様に1940年代以前に作られたジュエリーでも散見されますが、第二次世界大戦中の金属需要が影響したと推測され、1940年代末以降の作品で非常に多くみられるようになりました。
『925』の表記も同じ意味を持っていますが、925の刻印はインディアンジュエリーにおいては非常に新しく採用された刻印であり、そのほとんどが1990年代以降の作品に刻印されています。
主にイギリスの影響を受けた国において『STERLING』、それ以外の国において『925』の表記・刻印が多く使用されています。
Sterling Silver/スターリングシルバー=925シルバーは、熱処理によって時効硬化性をもち、細かな細工や加工に向いている為、現在においても食器や宝飾品等様々な物に利用されています。
【Thunderbird】サンダーバード はインディアンジュエリーの伝統的なモチーフの一つで、伝説の怪鳥であり、雷や雲、ひいては雨とつながりが深く幸福を運んでくるラッキーシンボルでもあります。 ジュエリーでは『限界の無い幸福』を表すシンボルであり、ネイティブアメリカンの守り神的存在です。
実在しない怪鳥の為にその容姿は作者の意匠に委ねられており、イーグルの様な威厳のある姿から、小鳥の様な可愛いデザインまで幅広く表現されているのも魅力の一つとなっています。
ズニのインレイで制作されたサンダーバードは【Hopi Bird】ホピバードと呼ばれることもありますが、ナバホの作品と同じくサンダーバードがソース/起源となったモチーフです。
サンダーバードモチーフはキャッチーでポップな印象ですが、アンティークネイティブアメリカンジュエリー特有の質感と奥行きを持ち、作者の突出した造形センスによって重厚感やクラシックな雰囲気を宿すリングとなっています。
どこか愛らしさもあるサンダーバードシェイプのシェイプは、シャンクに対して立体的に構成される事で独特な存在感を示しながら、プエブロの美意識を宿す造形美は多くのスタイルにおいて効果的なアクセントになってくれると思われ、さり気なくも日常のコーディネートに違いをもたらしてくれるリングです。
また、アンティーク独特の味わい深い質感は重厚な雰囲気も醸し、大人向けのアイテムに昇華されている様に感じられます。
さらに、性別を問わず選んで頂けるサイズとなっていますが、男性向けとしても『遊び心』あるピース。スタイルに『ギャップ』を与えてくれるアイテムであり、さり気なくスタイルに奥行きをもたらすことが出来るビンテージリングです。
素朴で可愛い印象を備えながら、Wolf-Robe/ウルフ・ローブという偉大な作家のスペシャリティを持った作品であり、史料価値も高いアンティークジュエリーです。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションもアンティークピースとしては大変良好です。
シルバーのクスミや細かなキズ、ハンドメイド作品特有の制作上のムラ等は見られますが、ターコイズを含めとても良好な状態を保っています。