【NAVAJO】ナバホのアンティークジュエリー、約100年前に制作された非常に古い作品であり、製法やマテリアル等において歴史的な資料価値が高く、大変貴重なアンティーク/ビンテージリングです。
インゴットシルバー(銀塊)から成形されたシャンク等、全ての工程がプリミティブな技術とツールによって形作られた古拙の美を有する作品となっています。
1910年後半~1930年初頭頃に制作された作品と思われ、経年と使用感を感じさせる状態ですが、堅牢なシルバーワークによってしっかりとした完成度に仕上げられた作品のため、破損せずに現代まで受け継がれ、今でも特別な風格と魅力を放つリングです。
本作の大きな特徴は、1920年代以前に作られたナバホジュエリーの一部で確認できる、シルバーの含有率92.5~95.0%の地金が使用されたであろう少し白いシルバーの色味です。
現在のインディアンジュエリーにおける『コインシルバー』とは、銀含有率90.0%の通称『900コインシルバー』を示し、実際に1920年代~1940年代にかけてのツーリストジュエリーでは、900コインシルバーが多く使用されました。
しかしながら、1800年代後半~1920年代以前には銀含有率95.0%のメキシカンコインシルバーや銀食器等を溶かして材料となる銀地金を生み出しており、その当時の作品には、銀含有率92.5~95.0%というスターリングシルバー(銀含有率92.5%)よりも銀含有率が高く、少し白く感じられるシルバーが使用されていました。
その様な特殊な品位(純度)を持つシルバーの塊を作り、さらにそのインゴットシルバー(銀塊)からハンマーワーク等によって成形された作品です。
シャンクも同様で銀塊を叩き伸ばし、削って成形する事で作り出したラウンドワイヤー(断面が丸)を3連に重ねることで、『スプリットシャンク』と呼ばれる伝統的な造形に近い構造となっています。
内側を細くフロントに向けて少しづつ幅が広く造形されることでフェイスとの自然な繋がりが作られています。
1900年代以前の作品でもスプリットシャンクが用いられた作品は発見されていますが、1920年代以前に作られた個体では、この様に細いワイヤーを重ねる事でスプリットシャンクに類似した造形を作る構造のリングも多く発見されており、おそらくはスプリットシャンクよりも先に生まれていた造形スタイルではないかと思われます。
そしてまた、1970年代以降になると細いシルバーワイヤーの既製品(材料)を入手する事が出来るようになり、シャンクをスプリットするよりも簡単で技術力を反映しない仕上りとなる為に、多く採用される造形スタイルとなりました。
フェイスは美しいグリーンターコイズをメインに構成され、その外側にはツイステッドワイヤーではなく、分厚い土台に大胆なスタンプワークを刻むことにより、ナバホジュエリーらしい表情とワイルドな印象を生み出すロープの様なデザインが施されています。
またその石を留めているベゼル(覆輪)も、ハンマーワークにより成形されたハンドメイドベゼルが採用されています。
さらにそのベゼルを始め、シルバーを接合しているロウ付けにあたり、現在のシルバーワークでは基本となっている銀ロウ(少し銀含有率が低く、地金よりも低温で融解する素材)を使用せず、リングを形作る地金の銀を小さく薄く加工して溶接材(銀ロウ)としています。
マウントされたターコイズは、ワイルドでアーシーな印象のグリーンカラーで、鉱山を特定することは出来ませんが、変色によってグリーンになってしまった石ではなく、元々複雑なグラデーションやサンドカラー等のマトリックスを持つグリーンのターコイズであった事が判断できる石です。
グリーンターコイズとしては透明感も感じさせ、神秘的な奥行きを感じさせるナチュラル無添加なグリーンターコイズです。
【Coin Silver】コインシルバーとは、インディアンジュエリーにおいては銀含有率90.0%の地金を表しますが、本作の様に1920年代以前に作られた作品では、メキシカンコインの使用により、銀含有率92.5~95.0%の地金を使用している事が推測されます。
アメリカの古い硬貨における銀含有率は900(=90.0%)ですが、日本では800~900や古い100円硬貨では600、メキシカンコインは950であり、900シルバーが最も多く使われていますが世界中で共通した純度ではありません。
同様に【Sterling Silver】スターリングシルバー=【925シルバー】は、銀含有率92.5%の地金であり、こちらは世界中で共通の基準となっています。
また『割金』と呼ばれる残りシルバー以外の7.5%には、銅やアルミニウム等が含まれています。(現在では、スターリングシルバーの割金は7.5%全てが銅と決められています) 925シルバーは熱処理によって時効硬化性をもち、細かな細工や加工に向いていたため食器や宝飾品等様々な物に利用されていますが、インディアンジュエリーにおいては、その初期に身近にあった銀製品、特にシルバーコインを溶かすことで、材料を得ていた背景があるため、現代でも限られた作家によりコインシルバーを用いる伝統が残されています。
シルバーの色味や質感は、『割金』や製法にも左右され、コインシルバー900とスターリングシルバー925の差異は純度2.5%の違いしかない為、見た目で判断するのは困難ですが、やはりコインシルバーは少し硬く、着用によってシルバー本来の肌が現れた時に、スターリングシルバーよりも深く沈んだ色味が感じられると思います。
そして、本作を含むさらに古い1800年代後半~1920年代以前までの作品の一部では、メキシカンコインが多く含まれていたためか、そのシルバーの純度は95.0%に近くなっており、地金が少し白い印象となります。
ただし、当時は身近にあった銀製品を混ぜて溶かしていたという歴史的な背景からは、シルバーの純度に対してそれほど強い拘りはなかったことも推測されます。
【Ingot Silver】インゴットシルバー(銀塊)からの成形は、アンティークインディアンジュエリーにおいて非常に重要なファクターですが、銀含有率/品位とは関係なく、ジュエリーの製法技術を表します。
現在制作されている作品の多くは、材料として市販されているシルバープレート(銀板/ゲージ)を加工することでジュエリーとして成形されていますが、インゴットから成形する製法では一度溶かしたシルバーを、鍛冶仕事に近い方法であるハンマーやローラーで叩き伸ばすことでジュエリーとして成形していきます。
最終的にはどちらもプレートやバーの形態になるため、大きな差は無いように思われますが、インゴットから成形されたシルバーの肌は、硬くなめらかで鈍い光を持っています。
それにより生み出されるプリミティブで武骨な作品の表情は、やはりアンティークインディアンジュエリーの大きな魅力です。
また、1930年代にはシルバープレートが登場しますが、当時シルバープレートを用いて制作されたジュエリーは政府によりインディアンクラフトとして認定されず、グランドキャニオンなどの国立公園内で販売できなくなった記録も残っています。
本作もインゴットシルバーから成形されることで、独特の質感や特別な迫力を放つアンティークピースです。
また、ナバホの古典的な技術によって構成されたクラシックな作品ですが、重厚で丁寧なシルバーワークは現代の洗練された完成度の作品とは異なる野趣と共に、幻想的な魅力を放っているように感じられます。
また、長い経年と着用による摩耗によって全てが一体化したように変化したアンティーク/ビンテージリング。本作の様に、作られてから約100年が経過したリングは非常に貴重であり、中でもさらに希少なサイズの個体となっています。
ビンテージスタイルにはもちろん相性の良いリングですが、豊かな表情とナチュラルな質感は多くのスタイルに馴染みやすく、その立体的で複雑な表情は、見る角度や装着するスタイルによって変化するように感じられます。
さらに、このような年代に作られたリングは、日常的な着用ではなく、コレクションと特別なタイミングでの着用だけでもその価値を十分に味わえる作品かと思われます。
アンティークジュエリーの中でもリング/指輪は使用による摩耗や紛失などにより消費され、現存数が少なく大変希少なピース。アンティーク工芸品としても高く評価できる非常にコレクタブルな作品であり、トレジャーハントプライスなピースとなっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションは、経年・着用による摩耗が見られますが、目立ったダメージは無く着用に不安のない状態。
また、内側のキズ等はハンドメイド作品特有の制作上のムラであり、シャンクの一部にあるキズも着用時に出来たものか制作時に出来てしまったキズか判断不可能です。
ターコイズも経年を考慮しますと大変良好なコンディションです。
交換された石である可能性も完全に排除出来ませんが、クラック等のダメージの無い良い状態を保っています。