【Hopi】ホピのアンティークジュエリー、ナバホジュエリーとは少し異なったイメージを持つ作品で自然をモチーフとした多種多様なスタンプワークが刻まれたフォブパーツと『ナバホパール』とも呼ばれる60個もの上質なベンチメイド(ハンドメイド)シルバービーズで構成されたアンティーク/ビンテージネックレスとなっています。
【Hollow Style】ホロウスタイルと呼ばれる中空構造によって生み出された柔らかなボリューム感を持ったティアドロップ型のチャーム/フォブパーツには、アンティークホピ作品独特な感性を感じさせるスタンプワークが刻まれています。
伝統的な技術やディテールを用いていながら大変独創的なデザインを持ち、当時は非常に新しい造形/デザインであった事も推測されるネックレスとなっています。
本作の様なスタンプや造形スタイルを持つ作品は、ホピの偉大な作家【Ralph Tawangyawma】ラルフ・タワンギャウマ(1894-1972)の作品を想起させ、共通したスタンプツール(鏨・刻印)を確認しましたが、同一のスタンプを発見出来ておりません。
他にも同じくホピの【Morris Robinson】モリス・ロビンソン(1901-1984)や【Allen Pooyouma】アレン・プーユウマ(1922-2014)による作品である可能性も残りますが、断言できる判断材料がなく、正確な作者は不明となっています。
ただし、フォブパーツに施されたレインクラウド/雨雲等をモチーフとしたスタンプツールから、ナバホのシルバースミスではなく1950年代以前のホピ族のシルバースミスによる作品である事が推定可能です。
下記のリングとは全く同一のスタンプツール(鏨・刻印)が使用されていることから、同一の作者が近い時期に制作した作品と推測されますが、全く異なる場所から発見されており、元々セットで作られたものかは不明です。
下記のリンクよりご確認頂けます。
ITEM CODE:JRH008808
Antique Hopi Stamped Hollow Form Face Silver Ring c.1940~
1930年代後半~1950年代前半頃に作られたと思われる作品で、まだナバホジュエリーと共通した伝統的なシルバーワークによって造形され、造形上にはホピ族の特徴を持っていません。
長いネックレスではありませんが合計60個にも及ぶシルバービーズビーズと、その間に配されたフォブパーツによって構成され、それらのフォブパーツにはサイズのグラデーションが施されており、作者の拘りや技巧が感じ取れるディテールとなっています。
ベースとなっている伝統的なシルバービーズは、現地において『ナバホパール』(ナバホの真珠)や『デザートパール』(砂漠の真珠)等とも呼ばれ、ナバホジュエリーにおいて古くから制作されています。
それはホピの作品でも同様となっており、こちらの様なサイズの小さいビーズは、大きなサイズよりも制作に高い技術力が必要とされ、本作のシルバービーズは非常に質の高い完成度を誇ります。
こちらの様に古くからの製法でビーズを制作すると、一日中制作しても数粒程度しか制作できない為、全てのシルバービーズをそろえる為に大変長い時間が費やされていることが判ります。
その為、現代では限られた作家しか制作しないアイテムとなっています。本作では完全なハンドメイドのビーズとなっており、材料の加工からの全ての工程を手作業により作り上げられています。
コンチョを作るような手法で半球体を制作し、それらを二つロウ付けすることでビーズに成形しており、その形状や大きさは不均一ですが、独特の味わいが感じられます。
その様なナバホパールネックレスをベースとして、規則的に配された7個のフォブパーツも、シルバービーズと同様にHollow Styleによる中空構造となっている事で重量が抑えられ、ドーム状の柔らかな曲面を持った造形が魅力的です。
このような造形は、表部分になる方をハンマーワークによってドーム型に成形し、裏面となるフラットなベースをロウ付けしています。柔らかいドーム型の曲面がつけられたそのフォルムはとても美しいボリューム感を見せています。
さらに、それらのフォブパーツには、ホピ族の特徴を備えたレインクラウド/雨雲等をモチーフとした大胆で象徴的なスタンプワークが刻まれています。
この様な自然や動物、自然現象をモチーフとしたデザインは、農耕民族であったホピ族等のプエブロの人々が好み、狩猟を主としたナバホ族の工芸品ではあまり見られない特徴となっています。
現在、ホピジュエリーの代表的な技術であるオーバーレイ技術の定着以前にも、オーバーレイと近い印象を生み出すような大きく大胆なスタンプワークがホピの作家によって制作されていました。(丁度本作の様なスタンプです)
しかし、スタンプ(刻印)というデザインやサイズが固定されてしまう技術から解放し、もっと自由な図案を具現化できる技術・技法としてオーバーレイ技法が生み出されたのではないかと考えられます。
【Hollow Style】中空構造/ホロウスタイルは、1940年代後半頃からみられる技法の一つ。美しく造形するには高い技術を必要とし、本作の様に立体的で綺麗なフォルムを作り上げるのは容易ではありません。
ボリューム感のある造形を過剰な重量にすることなく形作ることが出来る技術であり、インディアンジュエリー以外でも古くから見られる技法です。
【Rain Cloud】雨雲は、砂漠地帯に住むインディアンにとって非常に重要であり、『吉兆』『良い展望』を表しています。特に農耕民族にとって重要な存在であり、狩猟民族であるナバホ/ディネの人々よりもホピやズニを含むプエブロの人たちの間でよく用いられたモチーフです。
【Ralph Tawangyaouma】ラルフ・タワンギャウマは、1894年にアリゾナ州北部のオライビに生まれ、クラン(母系の氏族を表す動物)はヤングコーン。少年時代である1906年の【The Oraibi split】オライビ スプリットによってさらに北部であるホートビラ=バカビに移住しています。
※【The Oraibi split】オライビ スプリットとは、1800年代後半からスペイン人の入植と共に宣教師がホピ族の村であったオライビにも布教を進め、政府の介入によりホピの子供たちに学校教育を強要しようとします。
1906年、それらアメリカ政府の方針に従った住民と、反対した住民が対立・分裂してしまった出来事。その後、反対派住民の多くはオライビを追われ、当時は何もなかったホートビラ=バカビに移り苦難の末に定住しました。
1906年前後という氏がまだ10代前半のころにはすでにシルバースミスとしてのキャリアをスタートさせていたとされています。
1930年代~1950年代にかけては、【VAUGHN'S INDIAN STORE】ヴァーンズインディアンストアや【Fred Wilson's Indian Trading Post】フレッド・ウィルソンズ インディアントレーディングポストに所属し多くの傑作を残しており、Vaughn's Indian Storeでは、【Fred Peshlakai】 フレッド・ぺシュラカイ(1896-1974)や【Morris Robinson】モリス・ロビンソン(1901-1984)とも同時期に在籍しており、それぞれにナバホの伝統的なスタイルをベースに強い独自性を持った作品を生み出しています。
その時期に彼らが互いに影響しあうことで生まれた技術やデザインには、現在ではトラディショナルなスタイルとして残るものも多く存在すると思われます。
特にラルフ・タワンギャウマは、一つの作品において異なった技法を組み合わせたり、ホピ独特のモチーフをジュエリーに多く取り入れ、その後生まれるオーバーレイ技法によるホピの特徴的なジュエリーにも多大な影響を与えているようです。
また、その多岐にわたるジュエリーに関する技術は、ホピの職人ではとても珍しいインレイワークにもおよび、独特なツイステッドワイヤーや繊細なワイヤーワーク等、非常に卓越した技術によって多くの造形スタイルを実践・確立していました。
1964年には自身が育った故郷であるホートビラに戻りますが、ジュエリーの制作は少しづつ継続していたようです。そして1972年11月に亡くなられています。
本作ではホールマーク(サイン)の刻印は見られませんが、同作者のホールマークは、『サンダークラウド』(レインクラウド/雨雲にサンダー/稲妻)のデザインで、HOPIの頭文字『H』と共に刻印されているものが多く見つかっています。ホピのシルバースミスとしては、最も早くホールマークを使用した作家だとされています。
ナバホの伝統的なディテールや造形スタイルを踏襲しながら、アンティークホピジュエリーらしい価値観や美意識を感じさせるモチーフや柔らかで流麗な曲線/曲面を感じさせるピース。またそれは、非常に強いオリジナリティともなり、比肩するものがない唯一無二の作品となっています。
そしてその個性的なデザインを、とても質の高い完全ハンドメイドのシルバーワークがバックアップすることで上質感や品位を失わず、現在でも素晴らしいクオリティを有するネックレスとなっています。
また、そのフォブパーツの立体的な造形は、強い存在感を示しながらもインディアンジュエリーらしい素朴でナチュラルな印象を与え、タイムレスな造形美は性別を問わず馴染みやすい印象です。
女性には遊び心を感じながらもエレガントにもフィットしますし、石が付かないシルバーのみで構成されている為、男性にもさりげなくお使いいただける汎用性の高いネックレス。日常的な装いにおいてもエフォートレスに個性とアクセントととなりえ、高揚感さえ与えてくれるスペシャリティを誇る作品です。
インディアンジュエリーの歴史においても重要なピースの一つであり、練り上げられた工芸品としての美しさや佇まいを持ち、ウェアラブルアートとしても高く評価できる作品。本作の様なアンティークホピジュエリーは非常に高い希少価値を持ち、非常にコレクタブルな作品の一つとなっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションも大変良好です。シルバーに僅かなキズや多少のクスミ等が確認できますが、使用感を感じないとても良好な状態となっています。
また、フォブパーツの一部に見られるスタンプ(刻印)が不明瞭になっている部分は、フラットな裏面のロウ付け時にスタンプ部分に銀ロウが流れた跡となっており、ハンドメイド特有の制作上のムラの一つでダメージではありません。
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