【NAVAJO】ナバホのアンティークジュエリー、重厚なハーフラウンドワイヤーをバンド(地金)に構成し、その曲面に曲線のラインを彫り込んだデザイン。シンプルながら非常に高度なシルバーワークによって形作られたアンティーク/ビンテージバングルです。
ミニマムな美しさを感じさせる作品となっており、ビンテージジュエリーでありながら非常にモダンで、現代のハイジュエリーやファインジュエリーともフィットする汎用性も魅力的な作品となっています。
※商品画像・着用サンプルにおいて重ねて撮影されている作品は、本作と共に発見されたブレスレットです。販売はそれぞれ単体での販売になっておりますのでご注意ください。
そちらの作品については、下記のリンクよりご確認頂けます。
ITEM CODE:JBO009236
Atq Navajo Line Pattern Silver Half-Round Wire Cuff c.1940~②
※全く同じデザインとサイズに制作されたブレスレットであり、同作者が同時に制作した作品と思われます。
左右の手に別けて装着するのも良いですし、スタッキング(重ねて)してお使い頂いても素晴らしい作品2点です。
ホールマーク(作者のサイン)やスタンプワーク等、制作背景を特定する判断材料が乏しい為、正確に特定はできませんが、1940年代~1960年代頃に作られたと思われます。
また、その造形スタイルや、このようなキャスト(鋳物)によってある程度成形されたインゴットを作り、それをローラーやハンマーワークで成形して、そこに本作の様なライン模様やヤスリで削ることによる装飾だけでデザインを構成した作品は、アリゾナ州のニューメキシコ州境に近い位置で運営されていた【Pine Springs Trading Post】パインスプリングストレーディングポストや『U.S.NAVAJO』の刻印で知られる【Indian Arts & Crafts Board】(IACB)の認証を受けたトレーディングポストにおいて古典主義の復権を目的に制作された作品において、類似したブレスレットが発見されています。
またそれらは、ナバホの【Ambrose Roanhorse】アンブローズ・ローアンホース(1904-1982)が中心になって運営されていた上記の『U.S.NAVAJO』【Indian Arts & Crafts Board】(IACB)や『Navajo Guild』【The Navajo Arts & Crafts Guild】(NACG)等と関係するプロジェクトの影響を受けた作品群であったようです。
そして、本作と同様の価値観や造形スタイルは後進の作家達にも受け継がれました。
特に【Hopi】ホピの【Lewis Lomay】ルイス・ロメイ(1913-1996)や【Cochiti】コチティの【Joe H. Quintana】ジョー・キンタナ(1915-1991)等が、1960年代~1970年代頃に本作と類似したスタイルの作品を制作しています。
本作もインゴットシルバー(銀塊)をハンマーやローラーで伸ばす事で形作ったハーフラウンドワイヤー(断面が半円型)をベースとした作品であり、細い幅でありながら重さが40g近くあるずっしりと重い作品で、高い圧力によって成形されたシルバーの質感はとても硬くなめらかに仕上げられています。
そのフロント部分には流麗なライン模様が描かれており、簡素なデザインによって最大限に美しく効果的な装飾が施されています。
さらに、そのサイドには同じくライン模様が描かれていますが、曲面に対して曲線の深い溝が刻まれており、とても繊細で高度なシルバーワークによって実現された造形となっています。
また、それらのミニマルな装飾がとても効果的にコントラストと視覚的な強さを生み、立体的で動きのある表情が与えているようです。
【Ingot Silver】インゴットシルバー(銀塊)からの成形は、アンティークインディアンジュエリーにおいて非常に重要なファクターですが、銀含有率/品位とは関係なく、ジュエリーの製法技術を表します。
現在制作されている作品の多くは、材料として市販されているシルバープレート(銀板/ゲージ)を加工することでジュエリーとして成形されていますが、インゴットから成形する製法では一度溶かしたシルバーを、鍛冶仕事に近い方法であるハンマーやローラーで叩き伸ばすことでジュエリーとして成形していきます。
最終的にはどちらもプレートやバーの形態になるため、大きな差は無いように思われますが、インゴットから成形されたシルバーの肌は、硬くなめらかで鈍い光を持っています。
それにより生み出されるプリミティブで武骨な作品の表情は、やはりアンティークインディアンジュエリーの大きな魅力です。
また、1930年代にはシルバープレートが登場しますが、当時シルバープレートを用いて制作されたジュエリーは政府によりインディアンクラフトとして認定されず、グランドキャニオンなどの国立公園内で販売できなくなった記録も残っています。
【Indian Arts & Crafts Board】(IACB)は、インディアンアートの普及やクオリティーの保全、職人の地位向上等のために現地トレーディングポストやトレーダーによって1937年に組織されました。
『U.S.NAVAJO』『U.S. ZUNI』『U.S. HOPI』のスタンプを使うことで、アメリカ政府の公認を表した公的な意味合いを重視した組織です。
国としての歴史が浅く、カルチャーやアートに乏しいと考えたアメリカ政府が、インディアンアート/クラフトをアメリカの誇る独自のアート・工芸として世界的に認知させることもIACB発足の目的だったようです。
さらに、1930年代以降に隆盛した【BELL TRADING POST】や【Maisel's Indian Trading Post】、【Arrow Novelty】等の"Manufacturers"とされる量産化を推し進めたメーカーによるマスプロ品と、その製法や工程において正当なインディアンジュエリーであること等を差別化する事も必要とされていました。
上記のような現在『フレッド・ハービースタイル』と呼ばれるメーカーでは、ジュエリー等の製作に分業化や機械化を進め、結果的にインディアンジュエリー作家の独立や生計を圧迫しました。
そのため、古くからインディアン達と密接に付き合い、インディアンアート/クラフトを扱うトレーディングポストやトレーダー、さらにはインディアンアーティスト自身たちによって、量産化を図るメーカーに対する対抗策が講じられました。
Indian Arts & Crafts Boardもその中の一つで、サンタフェの人類学研究所キュレーターである【Kenneth Chapman】ケネス・チャップマンと、フォートウィンゲート及びサンタフェインディアンスクールで彫金クラスを受け持つナバホの巨匠【Ambrose Roanhorse】アンブローズ・ローアンホース(1904-1982)の二人によって、その素材から製法・仕上げに至るまで『U.S.NAVAJO』の刻印を許可する厳しいガイドラインが設定されました。
前述の様に末尾のナンバーはそれぞれトレーディングポストや工房を表しています。
現在、判明しているナンバーは・・・
U.S.NAVAJO 1 = Gallup Mercantile
U.S.ZUNI 1 & U.S.NAVAJO 2 = C. G. Wallace Trading Post 等があります。
また、末尾の数字が二桁(20~60、70はナバホギルド)のものはアメリカ中西部に点在している政府が運営するインディアンスクールの彫金クラスで制作されたピースになります。
それらのホールマーク刻印は、ティファニー社に制作をオーダーしたとされており、通常はジュエリー制作の初期段階で刻むのがホールマークや素材表記の刻印ですが、ジュエリーの製法や素材に対する厳正な審査を受けた事を証明する為の刻印であるU.S.NAVAJO/U.S. ZUNI/U.S. HOPIの刻印は、作品完成後に刻印され、中央ではなくサイドやターミナルに近い場所に刻印されている事が多いのも特徴です。
その認証システムは、伝統的な作品を扱うトレーダーにとって非常に重要であり高い需要があったようですが、その審査を担当した彫金の教員経験を持つシルバースミスは僅か数人であり、アメリカ中西部の広い範囲に分布したトレーディングポストを回って審査・認証していくという供給が全く追い付かず、その為にシステム自体が短命に終わってしまったようです。
本作もその正確な背景は不明ながら、古典期と同様のプリミティブな製法によって形作られており、インゴットシルバー(銀塊)から成形された地金は硬くなめらかな質感で、素晴らしい装着感を体感できるブレスレットとなっています。
また、当時モダンスタイルといわれたクリーンな印象や上質感が与えられており、シルバーのみで構成されたソリッドな質感は、派手さは持っていませんが独特の味わいと量産品にはないビンテージジュエリー特有の雰囲気を併せ持っています。
そして、非常にシンプルで洗練されたデザインと普遍的な造形美は、性別やシーンを問わずどんな装いにもフィットする高い汎用性を示しながら、硬く強靭な造りと独特な上質感も備えており、タイムレスに末永く長くご愛用いただけるブレスレットです。
ラフなスタイルだけでなく少しフォーマルなコーディネイトにも馴染み、他のバングルと重ね付けにも向いた作品ですが、重厚な地金により単独でもしっかりとした存在感を発揮します。
アンティークインディアンジュエリーの力強い武骨さだけでなく、伝統工芸品としての歴史をも感じさせる作品であり、アートピース・ウェアラブルアートとしても高く評価される作品。このようなハーフラウンドワイヤーをバンドとしたブレスレットは、古いナバホ作品の中でも人気の高い造形スタイルの一つ。とてもコレクタブルなキラーピースとなっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションも大変良好です。
シルバーの細かなキズや僅かなクスミ、ハンドメイド特有の制作上のムラは見られますがとても良好な状態を保っています。