【NAVAJO】ナバホのビンテージジュエリー、インゴットシルバー(銀塊)から成形されたハーフラウンドワイヤーを3連に重ねる事によって構成したバンドをベースに、非常に美しいレクタングラー/長方形型カットの【Godber/Burnham Turquoise】ガドバー/バーナムターコイズが羅列されたアンティーク/ビンテージバングルです。
オーセンティックで美しいシルバーワークと、ワイルドな表情を見せるハイグレードターコイズの織りなす上質感、そしてシンプルながら完成された造形センスにもスペシャリティを有するハイエンドな作品となっています。
1940年代末頃~1950年代前後に作られた作品と思われ、インゴットシルバー(銀塊)から成形することで、硬く心地よい重量感が与えられた『ハーフラウンドワイヤー』と呼ばれる半円型の断面を持ったワイヤーを用いた作品。
それらを3連に重ねる事で、装着時に肌が透けるスリットを持ちながら、総重量は40gを超える重厚なブレスレットとなっています。
また、それら3本のハーフラウンドワイヤーはターミナル(両端)に向けて僅かに細く造形され、ターミナル部分に施されたタブパーツにロウ付けされる事でしっかりと固定されています。
これらのシルバーワークはどれもプリミティブで伝統的な技術となっていますが、その丁寧で質の高い仕事によりどこかモダンで現代的な雰囲気を帯びているようです。
そして、そのようなバンドをベースに深遠な景色を形成し強い透明感と艶の大変美しいハイグレードターコイズ3つが羅列されており『Row Work/ローワーク』と呼ばれる造形スタイルに仕上げられてます。
それらの石を留めるベゼル(覆輪)の外側には、2本のシルバーワイヤーを撚り合わせたツイステッドワイヤーが施され、両サイドにはシルバーボール/シルバードロップを並べて配されており、ナバホらしい印象を作りながら、立体造形物としてもバランスの良い造形を生み出しているようです。
バンド部分にはシンプルで力強いスタンプワークが刻印され、奥行きのある表情となっています。
また、それらのスタンプワークに使用されているスタンプツール(鏨・刻印)もハンドメイドによって作られたツールであり、作者のオリジナリティと秀逸な質を備えたスタンプツール(鏨・刻印)による文様が刻まれています。
さらに、そのスタンプワークは細かなライン模様を含んだスタンプツールで構成されており、そのラインの方向に合わせて連続して刻むことで、シルバーの内側にライン模様を内包したような奥行きと立体感が生み出されています。
このようなスタンプワークを用いた高度な表現方法は、ナバホの巨匠【Mark Chee】マーク・チー(1914-1981)の作品等で散見され、現代でも【McKee Platero】マッキー・プラテロ氏等がこちらのようなスタンプの技術を受け継いでいますが、スタンプツール(鏨・刻印)をオリジナルで制作可能な高い技術力を持つシルバースミスにのみ共通したクオリティといえます。
マウントされたターコイズは、素晴らしい透明感を持つ美しい水色に強くワイルドなブラック・ブラウンのスパイダーウェブが入る【Godber/Burnham】カドバー/バーナムターコイズと思われます。
同鉱山の特徴として、アルミニウムが多く含まれることで透明感のあるミルキーブルーになるとされていますが、本作にマウントされた石は濃く深い青さを湛えています。
均一なスパイダーウェブではありませんが、美しい青とワイルドなマトリックスによる複雑な景色のコントラストが素晴らしく、その色相やマトリックスの特徴から、カドバー/バーナムターコイズであることを判断しています。
ただし、ターコイズの青さやその色相は【Number Eight Turquoise】ナンバーエイトターコイズ、そして【Lone Mountain Turquoise】ローンマウンテンターコイズを凌ぐようなリッチなブルーとなっており、宝石としての存在感と煌めきを感じさせる無添加ナチュラルのハイグレードターコイズとなっています。
【Ingot Silver】インゴットシルバー(銀塊)からの成形は、アンティークインディアンジュエリーにおいて非常に重要なファクターですが、銀含有率/品位とは関係なく、ジュエリーの製法技術を表します。
現在制作されている作品の多くは、材料として市販されているシルバープレート(銀板/ゲージ)を加工することでジュエリーとして成形されていますが、インゴットから成形する製法では一度溶かしたシルバーを、鍛冶仕事に近い方法であるハンマーやローラーで叩き伸ばすことでジュエリーとして成形していきます。
最終的にはどちらもプレートやバーの形態になるため、大きな差は無いように思われますが、インゴットから成形されたシルバーの肌は、硬くなめらかで鈍い光を持っています。
それにより生み出されるプリミティブで武骨な作品の表情は、やはりアンティークインディアンジュエリーの大きな魅力です。
また、1930年代にはシルバープレートが登場しますが、当時シルバープレートを用いて制作されたジュエリーは政府によりインディアンクラフトとして認定されず、グランドキャニオンなどの国立公園内で販売できなくなった記録も残っています。
本作もインゴットシルバーから成形された作品特有の重厚感と硬いシルバーの質感が特徴的で、その質実剛健で独特な上質感を持ったシルバーと、特別な質を持つジェムクオリティターコイズにより、ジュエリーとしての品位とビンテージネイティブアメリカンジュエリー特有のアーシーな雰囲気、そしてアンティーク工芸品としての歴史や奥行きを感じさせる作品となっています。
また、本作の様にレクタングラーやスクエアのシェイプにカットされたターコイズを用いた作品の割合はごく僅かであり、あまり見つからない希少なデザイン/造形の一つとなっています。
伝統的でプリミティブな彫金技術によるアンティークナバホジュエリーの武骨でワイルドな印象と、クラシックなデザイン/造形、さらに少し控えめなボリューム感により、落ち着いた佇まいを持つブレスレットとなっています。
それは、ビンテージスタイルにはもちろん、ドレスや少しフォーマルなスタイルにも馴染む汎用性を有し、多くのスタイリングにおいてさり気なくも特別な存在感を放つ作品です。
雄大な自然を凝縮したかの様なハイグレードターコイズと、クラシックで洗練されたデザインによる気品を兼ね備え、アートピース・ウェアラブルアートとしても高く評価されるクオリティを誇るナバホジュエリーの一つとなっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションは、シルバーのクスミやキズ、ハンドメイド特有の制作上のムラが見られますが、使用感は少なくダメージの無い良好な状態となっています。
また3つのターコイズのサイド(片側)には、角のマトリックス部分にクラックが確認できますが、マトリックスと同化している為、肉眼では確認が難しい目立たないものとなっています。
また、センターの石にもマトリックス部分には凹凸が見られますが、それらはカットされた時からの天然石が持つ特徴であり、小さなクラック以外は現在も素晴らしい艶と透明感を持ち、素晴らしいコンディションを保っています。