【Hopi】ホピの名工【Jason Takala】ジェイソン・タカラ氏(1955-)による作品。同作者の代表的な造形スタイルとなっている『Man In The Maze』をモチーフとした14Kゴールドとシルバーのコンビネーションでオーバーレイしたオールドリングです。
同氏の長いキャリアの中でいつ頃制作されたピースか正確に判断するのは困難ですが、フォルムの造形やカッティングのディテールなどからは1990年代~2010年代初頭頃までの作品と推測される作品です。
シルバーを土台として、メイズ部分のみが14Kゴールドのオーバーレイとなっており、そのシルバーとゴールドのバランスやコントラストも美しいリング。サイドから内側にかけては、連続してヒューマンモチーフのオーバーレイが施されており、同スタイルのリングの中では比較的シンプルに感じられる個体となっています。
また、よく観察するとハンマーワークによって全体に柔らかな曲面が施されており、それが独特の上質感や美しいフォルムを生み出しています。
このような立体的な丸みを形作るリポウズ/バンプアウトは、硬い木の土台や鉛の塊にアール(曲面)の溝を彫り込み、そこにシルバーを細かく何度もタガネで叩き沿わせることによって曲面を作る手の込んだ技術によって形作られています。
内側には細かなパウンティング(ハンマーワーク)による打痕が残されており、丁寧に形作られたシルバーワークの一端が感じ取れます。
裏側には、同作者のホールマーク(Snow Cloud=雪雲)が2か所に刻まれています。
【Man In The Maze】マンインザメイズは、アリゾナ南部からメキシコに居住していたトホノ・オオダム部族のバスケット(籠)に編まれた文様が起源とされています。
人の一生を旅のように捉え、その教えと共に先史時代から受け継がれた伝統的なモチーフ。その頂点には男の誕生が描かれ、中心に向かって曲がりくねった迷路の様な道を進みます。
その曲がりくねった道は、人生における多くの選択を象徴しており、その道を進む道程で経験を積み、知恵や力を身に付けるとされています。
またこの迷路は、目標に向かって努力しながら、肉体的・社会的・精神的、そしてスピリチュアルな領域のバランスを模索する様子を表しています。
【Overlay】オーバーレイと言う技法は、シルバーの板に描いたデザインを切り抜き、下地のシルバーの上に貼り付けることで立体的に絵柄を浮き出させる技法です。
本作の様にスタンプワークと組み合わされた作品も見られ、完成度を高められたオーバーレイ技法を用いた美しいホピのジュエリーは、現代に至るまでに多くの傑作を残しています。
1930年代にホピの大家【Paul Saufkie】ポール・スフキー(1904-1998)によって生み出された技術ですが、その黎明期にはホピ以外のナバホ・プエブロのシルバースミスにも新しい表現方法として色々な作品が作られていました。
1940年代~1950年代にかけて【Harry Sakyesva】ハリー・サキイェスヴァ(1922-1969?)や同い年の作家【Allen Pooyouma】アレン・プーユウマ(1922-2014)、そして【Victor Coochwytewa】ヴィクター・クーチュワイテワ(1922-2011)等により、ホピの代表的なスタイルの一つとして定着させられました。
オーバーレイ技術の定着以前にも、オーバーレイと近い造形を生み出すような大きく大胆で細かな刻みを持たないスタンプ(鏨)がホピの作家によって制作されていました。
しかし、スタンプ(刻印)というデザインやサイズが固定されてしまう技術から解放し、もっと自由な図案を具現化できる技術・技法として生み出されたのではないかと考えられます。
【Jason Takala】ジェイソン・タカラは、1955年にションゴポーヴィで生まれ、クラン(ホピ特有の氏族)は『Snow』、伯父にはホピの巨匠【Bernard Dawahoya】バーナード・ダワホヤ(1935or36-2010)というファミリーで育ちます。
高校生までの若い時期には絵画を学んだようで、シルバースミスとしては1976年から活動を始めたとされ、1980年代に妻の故郷であるオライビに移ってから本格的にジュエラーとしてのキャリアをスタートさせました。
本作の様なMan In The Maze/マンインザメイズをモチーフとした作品等、同氏を代表するデザインも多数存在し、アワード・コンテストでの受賞歴も多数を誇ります。
ホピの伝承や価値観等が織り込まれたJason Takalaの作品群は、アメリカ国内外を問わず高い評価を受けており、その技術や思想は、ご子息を始めとする次世代に受け継がれています。
一見して作者の判断できるクリエイションと質実剛健な彫金技術は、Jason Takala氏のキャリアにおいても最も良い時期に作られた個体である事を示し、特別な気品が感じられます。
その僅かに丸みのあるフォルムやワイドな幅のボリューム感により、独特の強さと存在感と持つピースですが、石がマウントされていない事や無駄のないデザイン/造形により、多くのスタイルに違和感なくフィットし、性別やスタイルを問わずお使いいただけます。
【Jason Takala】ジェイソン・タカラという作者の代表的で完成された作品の一つであり、現在ではとてもコレクタブルとなっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションは、ハンドメイド作品特有の制作上のムラ、そしてシルバーのクスミや細かなキズ等、多少の使用感は見られますが、目立ったダメージのないコンディションを保っています。