【ZUNI】ズ二のアンティークジュエリー、ナローなバンドをベースとして15個もの大変美しい【Godber/Burnham Turquoise】ガドバー/バーナムターコイズが羅列された『Row Work/ローワーク』と呼ばれる造形スタイルのアンティーク/ビンテージバングルです。
伝統的な造形スタイルの作品でありホールマーク(作者や工房のサイン)等が刻印されていない為、正確に作者や背景を特定することは出来ませんが、造形の細部や過去に発見されているアーカイブ等からは、ヒストリックな名作を多く遺した【C. G. Wallace Trading Post】C.G.ウォレスインディアントレーディングポストに所属したシルバースミスによって作られた事が強く想起される作品となっています。
1930年代~1940年代前半頃に作られた作品と思われ、現代に受け継がれるトラディショナルな造形スタイルのブレスレットですが、その細部から垣間見えるアンティーク作品の特有のディテールやマウントされたターコイズの質により、大変貴重でハイエンドな作品である事が伝わってきます。
細く造形されながらもしっかりとした重厚感を持つバンドは、インゴットシルバー(銀塊)から成形されており、同スタイルのズニジュエリーとしてはかなり重厚な18g程度の重量を持つをバングルとなっています。
その様なバンドに小さくもハイグレードな【Godber/Burnham Turquoise】ガドバー/バーナムを羅列したブレスレット。またその石を固定するベゼル(覆輪)には、エッジに刻みの無いスムースベゼルが採用されています。
古典期の作品やもう少し年代の新しい時代に作られた作品では、刻みの入るノッチドベゼル/トゥースベゼルが使用される事が多くなり、小さなターコイズを用いたズニジュエリーにおいて、本作の様なスムースベゼルが採用されているのは1920年代~1940年代初頭頃までの作品の特徴かと思われます。
さらに、それらのターコイズの間の上下部分には、一つずつハンドメイドされた小さなシルバーボール(シルバードロップ)が配されることにより、立体感と奥行きのある造形に仕上げられています。
そして、バンドのサイド~ターミナル(両端)部分には素朴ながらモダンな印象を作るスタンプワークが刻まれており、ビンテージネイティブアメリカンジュエリー独特の武骨な表情も与えられています。
それら細部のディテールを含め、すべてハンドメイドで仕上げられており、ズニ・ナバホの伝統的な技術によって構成されていますが、一つ一つの丁寧で手の込んだ仕事により、アンティーク作品ながらとても高い完成度を見せています。
本作のような造形スタイルは、『Petit Point/プチポイント』等と呼ばれるズニのトラディショナルな造形スタイルの一つとなっています。
『スネークアイ』とも呼ばれるラウンドカットターコイズが特徴的で、このような小さなターコイズのカットやそれらをセットする造形は、非常に繊細な仕事が必要であり、ナバホジュエリーとは違った印象を持っていますが、伝統的なインディアンジュエリーらしい表情も感じられる造形スタイルです。
1930年代以前においては、ナバホ・ズニ共に差異の少ないデザインの作品を制作していましたが、1930年代~1950年代にかけてこちらのような繊細なターコイズの構成やニードルポイントと呼ばれる造形、さらにチャンネルインレイなどの技術は、細かな石のカットを得意とするズニの特徴的なスタイルとして確立されていきました。
現在ではズニの代表的なスタイルとして広く認知されています。
セットされたターコイズは、素晴らしい発色を持つリッチなブルーに強いブラック・ブラウンのウェブが入り、その色相やマトリックスの特徴から【Godber/Burnham Turquoise】カドバー/バーナムターコイズと思われます。
カドバー/バーナム鉱山の特徴として、アルミニウムが多く含まれることで透明感のあるミルキーブルーになるとされていますが、本作にセットされた石は澄んだ濃い水色となっています。
さらに、ローワークという石が羅列される造形スタイルによって石の質の高さが際立ち、ジュエリーとしての完成度も飛躍的に高めている無添加ナチュラルのハイグレードターコイズです。
近年では市場に出る事さえ大変珍しい、宝石としての煌きを持ったターコイズの一つとなっています。
【C. G. Wallace INDIAN TRADER/C. G. Wallace Trading Post】C.G.ウォレスインディアントレーダーは、【Charles Garrett Wallace】チャールズ・ガレット・ウォレスが、1928年にZUNI /ズ二のジュエリーを専門に扱うトレーダーとしてズニの町で創業し、非常に多くのズニジュエリー作家を支援しました。
創業後すぐに、ナバホのシルバー彫金技術を必要として【Ike Wilson】アイク・ウィルソン(1901-1942)とその兄である【Austin Wilson】オースティン・ウィルソン(1901-1976)、他にも【Billy Hoxie】ビリー・ホクシー、【Charles Begay】チャールズ・ビゲイ(1912-1998)等の一説には二十数人と言われるナバホ出身のシルバースミスが在籍していたと云われており、こちらの作者もその中の一人による作品だと思われます。
また、彼らの様にズニの町でシルバースミスをしていたナバホの職人は、技術的にはナバホの伝統的な彫金技術を重視していたようですが、植物のようなスタンプワークのデザインや表現等、そのデザインスタイルやディテールには、ナバホジュエリーにはあまり見られないズニ/プエブロの影響を受けていると考えられる作品が多く残されています。
そんな少し特殊な環境や優秀な職人による伝統の継承、さらに経営者であるCharles Garrett Wallaceの献身的なインディアンアーティストへのバックアップにより大変多くの傑作を生み出し、後世に残したトレーディングポストです。
それら残された作品群の一部であるCharles Garrett Wallaceの個人コレクションの約半数は、1975年にアリゾナ州フェニックスのバードミュージアムに寄贈されました。
また、残りの一部はSotheby Parke Bernet社のオークションに出品され、そのオークションカタログは現在でも多くの研究者やコレクターにとっての第一級の資料となっています。
【Ingot Silver】インゴットシルバー(銀塊)からの成形は、アンティークインディアンジュエリーにおいて非常に重要なファクターですが、銀含有率/品位とは関係なく、ジュエリーの製法技術を表します。
現在制作されている作品の多くは、材料として市販されているシルバープレート(銀板/ゲージ)を加工することでジュエリーとして成形されていますが、インゴットから成形する製法では一度溶かしたシルバーを、鍛冶仕事に近い方法であるハンマーやローラーで叩き伸ばすことでジュエリーとして成形していきます。
最終的にはどちらもプレートやバーの形態になるため、大きな差は無いように思われますが、インゴットから成形されたシルバーの肌は、硬くなめらかで鈍い光を持っています。
それにより生み出されるプリミティブで武骨な作品の表情は、やはりアンティークインディアンジュエリーの大きな魅力です。
また、1930年代にはシルバープレートが登場しますが、当時シルバープレートを用いて制作されたジュエリーは政府によりインディアンクラフトとして認定されず、グランドキャニオンなどの国立公園内で販売できなくなった記録も残っています。
本作もインゴットシルバーから成形した作品特有の重厚なバンドに仕上げられ、当時の武骨で素朴な雰囲気を堪能できるアンティークジュエリー。おそらく現在ではトラディショナルなスタイルとなっている、小さなターコイズを羅列した造形スタイルの初期作品と推測されます。
スタッズのようなターコイズの羅列が生み出すエッジーで洗練された造形美と、シンプルで高い完成度を誇るシルバーワークにより、多くのスタイルにフィットするとても高い汎用性示す作品。アウターの袖から少し覗かせたり、ショートスリーブの季節にも映え、細い幅のバンドは重ね付けで他のバングルやブレスレットと合わせるのも良いかと思われますが、複雑な表情と奥行きを持つターコイズによって単独でもしっかりとした存在感を放ちます。
また女性にも向いたサイズのブレスレットであり、腕に対するナチュラルなフィット感や装着感も素晴らしく、控えめな幅がさり気ない印象ですが、日常のスタイルにとても効果的なアクセントにも成り得る作品です。
伝統工芸品としてアートピースのような強さも宿しており、推測される制作背景や歴史も含め現在では非常に貴重な作品の一つとなっています。
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コンディションは、シルバーのクスミや僅かな摩耗、ハンドメイド特有の制作上のムラ等が見られますが、使用感を感じない良好な状態を保っています。
ターコイズも良好な状態です。母岩/マトリックス部分には凹凸が見られますが、それらは天然石由来の凹凸であり現在も美しい艶と透明感を保っています。