【NAVAJO】ナバホのビンテージジュエリー、非常にワイルドで美しい色相と発色を湛えるジェムクオリティターコイズをメインとしたビンテージリングです。
手の込んだベゼル(石を留める覆輪)が特徴的な作品となっており、石の美しさを際立たせながらリングとしての造形美も生み出されており、シンプルなデザインながら深遠な表情を有する作品となっています。
1960年代~1970年代前半頃の作品と思われ、残念ながらホールマーク(作者のサイン)等が入らない為に正確な作者は不明となっていますが、シルバーワークのディテール等からは、1927年創業のサウスウエスタンジュエリーショップ【Thunderbird Shop】サンダーバードショップを経営したイタリア系の作家【Frank Patania Sr.】フランク・パタニア(1899-1964)の影響を強く感じさせる作品となっています。
重厚なシルバーワークで形作られたシャンクは『スプリットシャンク』と呼ばれる造形によりサイドから3本に割り開かれています。そのフロントに向けて少しづつ幅が広く造形されるディテールにより、ボリュームのあるフェイスとの自然な繋がりを作り上げています。
フェイスはワイルドで美しいターコイズをメインに構成しています。そして、その石を留めるベゼル(覆輪)は厚みのあるシルバーを用い、立体的で奥行きを与えているノッチドベゼル/トゥースベゼル(刻みを持った覆輪)が採用される事で、フラットにカットされた石の厚みが感じられ、リングとしても美しいデザインのポイントともなっています。
それは、厚みを強調したフォルムでありスタンプワークによるライン状の刻みが施され、構築的で奥行きのある表情が与えられています。
このようなベゼルのディテールはやはり前述のThunderbird Shopに所属した経験を持つ【Kewa】キワ(サントドミンゴ)の大巨匠【Julian Lovato】ジュリアン・ロバト(1925-2018)や、ナバホの名工【Jimmy Herald】ジミー・ヘラルド(1914-1989)の作品を想起させます。
本作のベゼルも高い完成度を誇り、ベゼルだけで作品に個性を与え作者の技巧と価値観をも映し出すスペシャリティを感じさせるディテールとなっています。
セットされたターコイズは、深みのあるターコイズブルーに強いブラックのスパイダーウェブが入ります。
いくつかの鉱山が想起される特徴を持つ為、産出した鉱山の特定が難しいですが、ワイルドに入るスパイダーウェブにより非常にアーシーで深遠な表情を見せ、宝石としての存在感と煌めきを誇る石です。
母岩が抜ける事で生まれた凹凸のあるターコイズとなっていますが、それらの凹凸を持ったブラック/グレーのウェブが自然の力強さを感じさせる表情を作り上げているようです。
色相やマトリックスの特徴からは【Indian Mountain Turquoise】インディアンマウンテンターコイズや【Burnham/Godber Turquoise】バーナム/ガドバーターコイズ、【Turquoise Mountain】ターコイズマウンテンで産出した石が想起されます。
前述のようにウェブ(マトリックス)部分が凹となっていますが、現在も独特の煌めきを宿し本作のシンプルなシルバーワークにアーシーで複雑な表情をもたらす無添加ナチュラルターコイズです。
【Frank Patania Sr.】フランク・パタニア・シニアは、1899年シチリア生まれのイタリア人で、インディアンジュエリーの世界に新しい価値観を持ち込み、多くの傑作を生み出しました。そして、多くの優秀な後進を育てた人物としても有名です。
6歳からイタリアで金細工師に弟子入りし、その技術を身に付けていきました。10歳のころに母親、兄弟とともにニューヨークに渡り、多くの移民とともに産業革命の喧騒なかで成長していきました。その後、19歳のころにニューヨークでも大手のジュエリーカンパニーでデザイナーとしての仕事に就き、そこでも多くの経験を積んだようです。
転機となったのは1924年、当時大流行していた結核に侵され、療養のために訪れたサンタフェで、インディアンのシルバーとターコイズを使った仕事を見たとき、『自分の表現方法を発見した』 そして、『二度とニューヨークに戻りたくなくなった』と語っています。
そして、わずか3年後の1927年にはサンタフェに【Thunderbird Shop】サンダーバードショップをオープンしました。
当時、シカゴ~アルバカーキ~南カリフォルニアへ続く鉄道整備に伴なって、アメリカ中西部各都市の観光産業の活況と共にフレッド・ハービー社の隆盛、インディアンアートの産業化もあり、その新しい魅力を持つ「サンダーバードショップ」のジュエリーや工芸品は大変な好評を博しました。
やはり、オープン初期からFrank Pataniaの作品はナバホ・プエブロ双方のインディアンジュエリーの影響を色濃く感じさせます。
また、多くのインディアンアーティストを育てたことでも有名です。【Julian Lovato】ジュリアン・ロバト、【Louis Lomay】ルイス・ロメイ、他にも【Mark Chee】マーク・チーなどもサンダーバードショップで石のカッターとして働いていたようです。
彼らはFrank Pataniaの技術やその美意識を受け継ぎ、『パタニア サンダーバード』スタイルとも言われる作品を残しました。
それらは、独自性とインディアンジュエリーの伝統的で素朴な強さを持ちながら、新しい価値観や実験的な造形を生み出し、品位を感じさせる作品で、それぞれに強い個性を持っていますが、どこか共通する美意識を感じるのも特徴です。
本作もサンダーバードショップで経験を積んだ作者が想起され、シャンクのディテール等、全ての造形がナバホジュエリーの伝統的なシルバーワークを踏襲しながら、ミニマルで洗練されたデザインが魅力的な作品です。
また、ビンテージ作品では非常に貴重なジェムクオリティターコイズがセットされた個体であり、ワイルドな石によってナバホジュエリー独特の武骨な雰囲気も帯びていますが、クリーンで端正なシルバーワークによってクラシックでアーティーな魅力を宿しています。
さらに、そのクラシックな印象を持ったデザイン・造形により少しフォーマルなシーンでも品格を損なわず、ターコイズの豊かな表情と普遍的な造形美は性別やスタイルを問わずコーディネイトに取り入れやすいリングです。
ハンドメイドナバホジュエリーの魅力と複雑な景色を持つターコイズが織り成す、小さくも深淵な世界が広がるジュエリー作品。オーセンティックでクラシックな造形とアンティーク工芸品としての完成度も備え、大変コレクタブルな作品となっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションは、古い作品のためシルバーには多少のクスミなどが見られますが、特にダメージはなく良好なコンディションです。
また、ターコイズは前述の通りマトリックスロス(母岩部分の欠損)が見られますあ、高い硬度を感じさせる美しい色彩を保っており、目立ったダメージのないコンディションを保っています。