【NAVAJO】ナバホのオールドジュエリー、キャスト成形によって形作られたエッジーなトライアングルシェイプが3連に構成され、彫刻作品の様な立体造形品としても美しいビンテージ/オールドリングです。
前オーナーがアリゾナ州スコッツデールの名店【White Hogan】ホワイト ホーガンから購入した作品で、内側のホールマーク(作者や工房のサイン)からは、ナバホの名工【Tom Bahe】トム・バヘィ/バヒィ(1924-2009)、又はそのファミリーによる作品かと推測されるピースとなっています。
1990年代~2000年代初頭に作られたリングであり、非常にシンプルながら際立った存在感を放ち、丁寧に仕上げられたシルバーワークからは特別な上質感も感じられる作品です。
ある程度キャスト(おそらくサンドキャスト)によって形作られたシャンクは、中空ではなくソリッドなシルバーで構成され、しっかりと鑢によって削り出す事でエッジーで彫りの深い造形が作り上げられています。
トライアングルワイヤーを3連に重ねた様なデザインですが、異なったワイヤーを重ねるのではなく、丁寧な仕事で削り出す事によって成形されています。
またフロントから内側にかけて太さと幅に大きく変化を持たせた造形となっている事で、存在感と立体的な美しさが際立たせられ、そのさり気なくも手間の掛かったディテールにより、重厚で迫力のある造形が生み出されているようです。
【Bahe family】は、ナバホのシルバースミスを多く輩出している大きなファミリーであり『Bahe』姓もナバホ族では比較的多い姓の一つとなっています。
中でも本作はその販売元や制作時期、造形スタイル等からTom Baheによる作品である可能性が高いと推測しております。
【Tom Bahe】トム・バヘィは、1924年にアリゾナ州東部の町パインスプリングスに生まれ、Fort Wingate Indian Schoolで彫金技術を学び、非常に長いシルバースミスとしてのキャリアをスタートさせました。
ナバホネーションの中で羊の牧畜をしながらシルバースミスとしての仕事をし、部族のセレモニー等、ナバホの伝統的な生活を重視していたそうです。
作品の多くはアリゾナ州各地のフェニックスやスコッツデール、ツーソンのトレーダーの手に渡り、ギャラリーなどで販売されました。
そのシルバースミスとしてのキャリアは60年にも達し、とても多くのバリエーションを持った作品を残していいます。
初期には伝統的でオーセンティックなナバホジュエリーを制作していたようですが、当時の作品はホールマークが入らない為にそれらを確認することは困難となっています。
キャリア中期の作品では、スコッツデールのギャラリーやサンダーバードショップの影響で人気が高まったシンプルでクリーン、モダンな印象を持った作品を多く制作、本作もその価値観・美意識の影響を感じさせる造形となっています。そしてキャリア晩年には、オーバーレイ技術とスタンプワークを組み合わせた描写的なアニマルモチーフの作品で有名となっています。
また、【Office of Navajo Economic Opportunity】(ONEO)や【Community Action Committee】(CAC)というナバホの経済や産業、そして文化の保護育成団体においても積極体に活動しました。2009年、生まれた土地にも近いアリゾナ州フォートディファレンスにて永眠されています。
ホールマーク(作者のサイン)は『TOM BAHE』の他に『T.BAHE』の刻印も見つかっており、本作のように『BAHE』のものは作者個人の特定が困難ですが、Tomが使用したホールマークの一つではないかと考えられます。
【White Hogan】ホワイト ホーガンは、1930年代後半に【Fred Wilson's】フレッド・ウィルソンズで働いていた【John Bonnell】がアリゾナ州フラッグスタッフで始めたインディアンクラフトショップで、創業当時からKenneth Begayと【Allen Kee】アレン・キー(1916-1972)の両名とはパートナーシップを持っていました。
1951年には、同州スコッツデールに移転し、有名ショップとなっていきます。
当時の二人が作り上げるジュエリーはシンプルでエレガント、ナバホの武骨で原始的な技術を継承していましたが、非常に新鮮で新しい価値観を持っており、なんと1950年だけで66本ものアワード受賞リボンを獲得しています。
そのようなセンセーショナルな彼らの活躍によりWhite Hoganが批判の的になることもあったようですが、オーナーであるJohn Bonnellはインディアンシルバースミスをパートナーとして対等に接し、彼らの活躍の礎を築いたようです。
そしてKenneth BegayとAllen Keeは、当時日本に比べるとかなり発達していた書籍/メディアにも取り上げられ、全米で知名度のある作家となっていきます。
その後も二人の作り上げた世界観は、弟の【Johnnie Mike Begay】、従兄にあたる【George Kee】・【Ivan Kee】、Allen Keeの甥【Anthony Kee】、さらには現代作家として活躍する【Edison Cummings】へと引き継がれてゆき、2006年に閉店するまで受け継がれていました。
非常に成熟した技術を持ち、インディアンジュエリーを次のステージに引き上げたKenneth Begayは、『ナバホモダンジュエリーの父』とも呼ばれ、ホピの巨匠【Charles Loloma】チャールズ・ロロマ(1921-1991)も尊敬する作家としてその名前を挙げるほどです。
また、後進の育成にも積極的に携わっており、Allen KeeやJohnnie Mike Begay等の親族以外にも多くのシルバースミスを育成したインディアンジュエリー界の偉人です。
『STERLING』の刻印は、銀含有率92.5%の地金であることを示す表記であり、1930年代初頭頃には登場していました。
ただし、ショップやトレーディングポストにおいて多用されるようになったのは戦後である1940年代後半以降のようです。
1940年代以前に作られたジュエリーでも散見されますが、第二次世界大戦中の金属需要が影響したと推測され、1940年代末以降の作品で非常に多くみられるようになりました。
『925』の表記も同じ意味を持っていますが、925の刻印はインディアンジュエリーにおいては非常に新しく採用された刻印であり、そのほとんどが1990年代以降の作品に刻印されています。
主にイギリスの影響を受けた国において『STERLING』、それ以外の国において『925』の表記・刻印が多く使用されています。
Sterling Silver/スターリングシルバー=925シルバーは、熱処理によって時効硬化性をもち、細かな細工や加工に向いている為、現在においても食器や宝飾品等様々な物に利用されています。
本作の様に小文字で少しスクリプトよりな字体による『Sterling』刻印は、1980年代末以降に使用された刻印となっており、製作年代を特定する判断材料の一つとなります。
インディアンジュエリーの伝統的な製法を守り作り上げられていますが、そのオリジナリティと卓越したシルバーワーク、そして圧倒的な造形センスによって洗練された印象に仕上げられたリングです。
ホワイトホーガンらしいシルバーのみで構成されたシンプルでエレガントな造形ながら、ナバホジュエリーの伝統を踏襲した造りとなっている事で民族や歴史を問わずハイブランドのジュエリー等も含め、非常に幅広いスタイルに合わせる事が可能な作品です。
また、このようなプレーンなシルバーの質感を際立たせた作品は、日々の装いや環境・天気、そして周辺の景色を映し出します。
その為、際立ったボリューム感持ったリングですが、色々なスタイルやあらゆるシーンに溶け込みながら、特別なアクセントとして個性を主張できるジュエリーです。
コンテンポラリー作品ですが、類似した個体を探すのは非常に困難であり、その希少性も含め、コレクタブルで貴重なリングの一つとなっています。
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コンディションも大変良好です。
僅かなクスミや小キズ、ハンドメイド特有の制作上のムラが見られますが、ダメージの無いとても良い状態を保っています。