【NAVAJO】ナバホのアンティークジュエリー、非常に重厚なシルバーワークをベースに5つの美しい【Godber/Burnham Turquoise】ガドバー/バーナムターコイズが羅列された『Row Work/ローワーク』と呼ばれる伝統的なスタイルのアンティーク/ビンテージバングルです。
スクエアカットされた上質なターコイズと共に、トラディショナルで重厚なシルバーワークの織りなす武骨さと造形美は、特別な迫力と気品さえも帯びています。
さらにそれは単なるブレスレットに留まらず、アートピース/ウェアラブルアートとしても高く評価されるミュージアムクオリティを誇る作品となっています。
『U.S.NAVAJO』の刻印で知られる【Indian Arts & Crafts Board】(IACB)の認証を受けたトレーディングポスト、中でも末尾のナンバー5の【Kelsey Trading】ケルシートレーディングポストか【Pueblo Indian Arts and Crafts】プエブロインディアンアーツ&クラフツの作品において類似した個体が発見されていますが、とてもオーセンティックで伝統的な造形の作品である事や、ホールマーク(作者のサイン)等の制作背景を特定する判断材料に乏しい為、その詳しい背景を特定する事は出来ません。
1920年代末頃~1940年代初頭頃の作品と思われ、2本のトライアングルワイヤーの間にターコイズを挟むように羅列したオーセンティックな造形スタイルとなっています。
インゴットシルバー(銀塊)から成形されたトライアングルワイヤーを上下に、中央には単独のスクエアワイヤーを撚る/捻じることで作り上げた『ツイステッドワイヤー』を2本配した4連構造のバンドとなっており、見た目以上に重い(55g近い)シルバーワークも大変魅力的な作品です。
羅列してセットされた5つのターコイズは全てスクエアカットとなっており、その石を留めるベゼル(覆輪)が厚いシルバーによって造形される事で、作品としての一体感や堅牢な印象が与えられています。
また、石と石の間等には小さなシルバードロップ/ボールが規則的に配され、立体感や奥行きを生み出しながらローワークの連続性を強調し、ナバホジュエリーらしい造形を作り上げています。
バンドの上下、フロント部とターミナル(両端)付近には、力強くコントラストを付加するスタンプワークが刻まれています。
この単一のスタンプツール(鏨・刻印)だけで構成された造形も、制作に使用するスタンプを単一に制限した【Indian Arts & Crafts Board】(IACB)=U.S.NAVAJOの理念と共通した特徴となっています。
プリミティブでシンプルなスタンプワークですが、作者によってハンドメイドされたスタンプツールにより深く刻まれた文様により、武骨なブレスレットにグラフィカルなイメージと複雑な表情を与えているようです。
さらに、ターミナル(バングル両端)部分には、ワイヤー断面に対して垂直方向から内側にかけて小さなシルバーパーツが備えられることで、バンドを構成する3本のワイヤーが立体的にまとめられています。
それら、全てのディテールが伝統的でプリミティブな技術を駆使したシルバーワークですが、細部まで美意識を感じさせる造りとなっています。
本作のような上下にトライアングルワイヤーを配し、その間に石をマウントする造形スタイルは、前述の通りインディアンジュエリーの古典期から見られる造形であり、1930年代以降にはナバホの偉大な作家【Fred Peshlakai】 フレッド・ぺシュラカイ(1896-1974)等も多くの類似した作品を残しており、1950年代~1970年代には、こちらも巨匠である【Fred Thompson】フレッド・トンプソン(1921or1922-2002)が多く制作したスタイルです。
そして、現代まで長く受け継がれ、現在もコンテンポラリー作家の中でも素晴らしい技術を持つ【Perry Shorty】ペリー・ショーティー等が受け継いでいます。
マウントされたターコイズは、素晴らしい発色を持つリッチなブルーに強いブラック・ブラウンのスパイダーウェブが入り、その色相やマトリックスの特徴から【Godber/Burnham Turquoise】カドバー/バーナムターコイズと思われます。
カドバー/バーナム鉱山の特徴として、アルミニウムが多く含まれることで透明感のあるミルキーブルーになるとされていますが、本作にマウントされた石は澄んだ濃い水色となっています。
ローワークという石が羅列される造形スタイルによって石の質の高さが際立ち、ジュエリーとしての完成度も飛躍的に高めている無添加ナチュラルのハイグレードターコイズです。
近年では市場に出る事さえ大変珍しい、宝石としての煌きを持ったターコイズの一つとなっています。
【Ingot Silver】インゴットシルバー(銀塊)からの成形は、アンティークインディアンジュエリーにおいて非常に重要なファクターですが、銀含有率/品位とは関係なく、ジュエリーの製法技術を表します。
現在制作されている作品の多くは、材料として市販されているシルバープレート(銀板/ゲージ)を加工することでジュエリーとして成形されていますが、インゴットから成形する製法では一度溶かしたシルバーを、鍛冶仕事に近い方法であるハンマーやローラーで叩き伸ばすことでジュエリーとして成形していきます。
最終的にはどちらもプレートやバーの形態になるため、大きな差は無いように思われますが、インゴットから成形されたシルバーの肌は、硬くなめらかで鈍い光を持っています。
それにより生み出されるプリミティブで武骨な作品の表情は、やはりアンティークインディアンジュエリーの大きな魅力です。
また、1930年代にはシルバープレートが登場しますが、当時シルバープレートを用いて制作されたジュエリーは政府によりインディアンクラフトとして認定されず、グランドキャニオンなどの国立公園内で販売できなくなった記録も残っています。
【Indian Arts & Crafts Board】(IACB)は、インディアンアートの普及やクオリティーの保全、職人の地位向上等のために現地トレーディングポストやトレーダーによって1937年に組織されました。
『U.S.NAVAJO』『U.S. ZUNI』『U.S. HOPI』のスタンプを使うことで、アメリカ政府の公認を表した公的な意味合いを重視した組織です。
国としての歴史が浅く、カルチャーやアートに乏しいと考えたアメリカ政府が、インディアンアート/クラフトをアメリカの誇る独自のアート・工芸として世界的に認知させることもIACB発足の目的だったようです。
さらに、1930年代以降に隆盛した【BELL TRADING POST】や【Maisel's Indian Trading Post】、【Arrow Novelty】等の"Manufacturers"とされる量産化を推し進めたメーカーによるマスプロ品と、その製法や工程において正当なインディアンジュエリーであること等を差別化する事も必要とされていました。
上記のような現在『フレッド・ハービースタイル』と呼ばれるメーカーでは、ジュエリー等の製作に分業化や機械化を進め、結果的にインディアンジュエリー作家の独立や生計を圧迫しました。
そのため、古くからインディアン達と密接に付き合い、インディアンアート/クラフトを扱うトレーディングポストやトレーダー、さらにはインディアンアーティスト自身たちによって、量産化を図るメーカーに対する対抗策が講じられました。
Indian Arts & Crafts Boardもその中の一つで、サンタフェの人類学研究所キュレーターである【Kenneth Chapman】ケネス・チャップマンと、フォートウィンゲート及びサンタフェインディアンスクールで彫金クラスを受け持つナバホの巨匠【Ambrose Roanhorse】アンブローズ・ローアンホース(1904-1982)の二人によって、その素材から製法・仕上げに至るまで『U.S.NAVAJO』の刻印を許可する厳しいガイドラインが設定されました。
前述の様に末尾のナンバーはそれぞれトレーディングポストや工房を表しています。
現在、判明しているナンバーは・・・
U.S.NAVAJO 1 = Gallup Mercantile
U.S.ZUNI 1 & U.S.NAVAJO 2 = C. G. Wallace Trading Post 等があります。
また、末尾の数字が二桁(20~60、70はナバホギルド)のものはアメリカ中西部に点在している政府が運営するインディアンスクールの彫金クラスで制作されたピースになります。
それらのホールマーク刻印は、ティファニー社に制作をオーダーしたとされており、通常はジュエリー制作の初期段階で刻むのがホールマークや素材表記の刻印ですが、ジュエリーの製法や素材に対する厳正な審査を受けた事を証明する為の刻印であるU.S.NAVAJO/U.S. ZUNI/U.S. HOPIの刻印は、作品完成後に刻印され、中央ではなくサイドやターミナルに近い場所に刻印されている事が多いのも特徴です。
その認証システムは、伝統的な作品を扱うトレーダーにとって非常に重要であり高い需要があったようですが、その審査を担当した彫金の教員経験を持つシルバースミスは僅か数人であり、アメリカ中西部の広い範囲に分布したトレーディングポストを回って審査・認証していくという供給が全く追い付かず、その為にシステム自体が短命に終わってしまったようです。
本作も古典主義・回顧主義が垣間見える原始的で根源的な技術・製法によって形作られており、インゴットシルバーから成形された作品特有の重厚感と硬いシルバーの質感等、とても特別で魅力的な作品となっています。
また、本作のようにビンテージ作品において、ジェムクオリティーのターコイズがセットされた作品は非常に貴重であり、そのターコイズが作り上げるアーシーで悠然とした存在感は、工芸品としてもジュエリーとしてもタイムレスな魅力を感じさせます。
さらに、ジェムクオリティターコイズによりジュエリーとしての品位とビンテージネイティブアメリカンジュエリー特有のアーシーな雰囲気、そしてアンティーク工芸品としての歴史や奥行きさえも感じさせます。
ターコイズが羅列されたローワークデザインは男性的な強さを感じさせますが、本作のボリューム感は他のブレスレットとの重ね付けにも向き、高い汎用性を示す作品です。
上質なターコイズは日常のスタイルに特別な彩をもたらし、着用者に高揚感をも与える力のあるバングルです。
プリミティブなナバホジュエリーの伝統を継承し、100年近く前に作られた作品ながら、すでに高い完成度と無駄のない造形美を誇り、アンティーク工芸品としてミュージアムクオリティを有する大変貴重なブレスレットとなっています。
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コンディションは僅かなシルバーのクスミやターコイズのベゼル(覆輪)等には多少の使用感が見られ、ハンドメイドによる造形ですので僅かな制作上のムラ等がありますが、特にダメージの無い良好な状態を保っています。
ターコイズも良好なコンディション。
マトリックス部分には凹凸等が見られますが、それらはダメージではなく天然石に由来する『マトリックスロス』と思われます。
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