【NAVAJO】ナバホのアンティークジュエリー、大きく2匹のラトルスネーク/ガラガラ蛇のアップリケが施されたバンドをベースとし、【逆卍】Whirling Log/Nohokosやアロー等のスタンプワークも印象的なアンティーク/ビンテージバングルです。
1920年代~1930年代頃に制作されたピースであり、【Tourist Jewelry】ツーリストジュエリーや【Fred Harvey Style】フレッド・ハービースタイルとも呼ばれる、20世紀前半頃に観光客向けに作られたスーベニアアイテム(記念品)の一つとなっています。
おそらくコインシルバー(銀含有率90.0%)の地金から作られたバンドは、ツーリストアイテムとしては重厚な厚みを有し、フロントが広くターミナル(両端)にかけて少しづつ細くなるクラシックなシェイプとなっています。
そのセンターにはラウンドカットされたアーシーなグリーンターコイズがマウントされています。
そして、その石を留めるベゼル(覆輪)には『ベゼルカップ』と呼ばれる既製のパーツが用いられており、殆どの工程がハンドメイドとなっていますが、一部の工程に機械による加工が採用されたマシン&ハンドメイドのハイブリッドなピースです。
ターコイズの両サイドには迫力のあるラトルスネーク/ガラガラ蛇のアップリケが施されており、力強いスタンプワークが刻まれる事で奥行きと動きのある表情が与えられています。
さらに、ツーリストジュエリーやフレッド・ハービースタイルを代表するモチーフである、逆卍やアロー等のスタンプワークが施され、キャッチーなデザインに重厚な質感が付加されているようです。
造形スタイルやディテール等から、1923年により創業され多くのナバホやプエブロの職人が所属した有名工房【Maisel's Indian Trading Post】マイセルズ インディアントレーディングポストや、1932年創業の【BELL TRADING POST】ベルトレーディングポスト、ニューヨークのメーカー【Arrow Novelty】アローノベルティ社等で製造された事が想起されますが、こちらにはショップマークやホールマークは入らず明確な製作元は不明となっています。
ただし、当時のカタログ資料によればその製作工房によらず、コインシルバー製である可能性の高い事が推測されます。
【Coin Silver】コインシルバーとは、インディアンジュエリーにおいては銀含有率90.0%の地金を表します。
また、アメリカの古い硬貨における銀含有率は900ですが、日本では800~900や古い100円硬貨では600、メキシカンコインは950であり、900シルバーが最も多く使われていますが世界中で共通した純度ではありません。
同様に【Sterling Silver】スターリングシルバー=【925シルバー】は、銀含有率92.5%の地金であり、こちらは世界中で共通の基準となっています。
また『割金』と呼ばれる残りシルバー以外の7.5%には、銅やアルミニウム等が含まれています。(現在では、スターリングシルバーの割金は7.5%全てが銅と決められています) 925シルバーは熱処理によって時効硬化性をもち、細かな細工や加工に向いていたため食器や宝飾品等様々な物に利用されていますが、インディアンジュエリーにおいては、その初期に身近にあった銀製品、特にシルバーコインを溶かすことで、材料を得ていた背景があるため、現代でも限られた作家によりコインシルバーを用いる伝統が残されています。
シルバーの色味や質感は、『割金』や製法にも左右され、コインシルバー900とスターリングシルバー925の差異は純度2.5%の違いしかない為、見た目で判断するのは困難ですが、やはりコインシルバーは少し硬く、着用によってシルバー本来の肌が現れた時に、スターリングシルバーよりも深く沈んだ色味が感じられると思います。
さらに古い1800年代後半~1920年代以前の作品では、メキシカンコインが多く含まれていた為、そのシルバーの純度は95.0%に近くなっている個体も多いようですが、身近な銀製品を混ぜて溶かしていた歴史を考えると純度に対してそれほど強い拘りはなかったことが推測されます。
【Rattlesnake】ガラガラ蛇/ラトルスネークは、ネイティブアメリカンにとって神聖な存在として、特にプエブロインディアンの間で古くからジュエリーやポッテリー等、色々な作品に用いられました。
当店のロゴにも登場するモチーフであり、脱皮して成長していく姿から、<再生><革新><挑戦><知恵> 等を象徴するシンボルとされています。
ジュエリーにおいてはナバホの偉大な作家【Fred Peshlakai】フレッド・ぺシュラカイ(1896-1974)やアコマの伝説的な作家【Clyde Hunt/Chief Sunny Skies】クライド・ハント(1900-1972)等が素晴らしいスネークモチーフの作品を残しており、それらのデザイン・スタイルが後世に受け継がれています。
前述の通り、ナバホのシルバースミスやツーリスト向けの作品においても散見されるモチーフですが、アメリカ中西部において神聖な存在として古くから大切なモチーフとしてきたのは、ナバホ以外の部族(プエブロ)です。
【卍】【Whirling Log】ワーリングログ【Swastika】スワスティカについて・・・
アルファベットの『L』を4つ組み合わせて生まれた記号であり 『LOVE・LIFE・LUCK・LIGHT』 からなる幸福のシンボルであり、ラッキーシンボルとしてネイティブアメリカンの工芸品において広く認知されていたモチーフです。
しかしながら、1933年のナチスドイツ出現、1939年にWW2開戦により、アメリカにおいては敵国であるドイツのハーケンクロイツと酷似した記号は不吉だとして使われなくなってしまいました。
1941年当時の新聞記事にも残っていますが、インディアンたちにも卍が施された作品の廃棄が求められ、政府機関によって回収された事もあったようです。
その後、大戦中にも多くが廃棄されてしまった歴史があり、現存しているものは大変貴重となりました。
本作はそのような歴史的な受難を乗り越えて現在まで受け継がれてきたピースであり、史料価値を感じる事の出来るビンテージジュエリーとなっています。
【Arrow/Arrow Head】アロー/アローヘッドは、 プロテクト(お守り)を意味しています。
ツーリストジュエリーでありながらアンティークのシルバーが持つ質感によって渋い表情とビンテージ特有の迫力を持っています。
また、ラトルスネークの躍動感やキャッチーな印象は、男性向けのアクセサリーには重要な要素である『ギャップ』と『遊び心』を与えてくれ、スタイルにアクセントと奥行きをもたらすことが出来るブレスレットです。
少し毒気のあるラトルスネーク/ガラガラ蛇のデザインも魅力的で、クラシックな印象とツーリストアイテムらしいモチーフが融合する事で、特別な魅力を放ちます。
また、『マニュファクチュアラー』と呼ばれる、スーベニアジュエリーの量産化を図った大手の工房で作られたものですが、その現存数は限られており、希少性も高いコレクタブルなピースとなってます。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションも大変良好。シルバーは全体に少し黒っぽくなっていますが、ダメージや使用感の無い大変良い状態を保っています。
【卍】の入るピースは戦後もほとんど着用されずに保管されていることが多く、現存数は少ないですが、コンディションの良い個体が多いことも特徴の一つです。