【NAVAJO】ナバホか【PUEBLO】プエブロのアンティークジュエリーで、インゴットシルバー(銀塊)から成形されたバンドをベースとし、躍動的なラトルスネーク/ガラガラ蛇のアップリケがメインに構成された作品。ターミナル(両端)付近には【逆卍】Whirling Log等の力強いスタンプワークも施された大変貴重なアンティーク/ビンテージバングルです。
大胆なカッティングによりスリットが作られたバンドは、伝統的な造形技法スタイルの一つである『スプリットバンド/スプリットワイヤー』から派生した造形となっており、その全体に刻印されたスタンプワークの質も魅力的な作品となっています。
本作の様な造形スタイルや卍モチーフ等を用いたジュエリーは、後に多く作られる【Fred Harvey Style】フレッド・ハービースタイルや【Tourist Jewelry】ツーリストジュエリーと呼ばれる、20世紀前半頃に観光客向け/ツーリストアイテムのデザインソースとなった作品です。
全ての工程を一人の職人が担当し、オールハンドメイドで丁寧に仕上げられており、上記の様なフレッド・ハービースタイルと呼ばれる【Manufacturers】メーカーによって分業化や量産化されたツーリストアイテムとは一線を画すクオリティーと味わいを持った貴重なオリジナルピースであり、その希少性と価値を高めています。
1920年代後半~1930年代頃に作られ、インゴットシルバー(銀塊)から成形されたバンドは、分厚くはありませんがパウンディングを感じさせる固く滑らかなシルバーの肌を生み、腕への装着感も素晴らしいバングルです。
その様なバンドの中央~サイドにかけてを2本のカッティングを施すことで『スプリットバンド』と呼ばれる造形を作っており、その中央にはラトルスネーク/ガラガラ蛇の立体的なアップリケが大胆に配されています。
また、そのスネークのアップリケの隙間を縫うようにスティック状のスネークモチーフやアロー等のスタンプワークが刻まれ、幾何学模様や卍のスタンプが配されることで、アンティークナバホジュエリーらしい重厚な質感にキャッチーな雰囲気が与えられているようです。
それらスタンプワークの秀逸なクオリティも本作の特筆すべきポイントとなっています。
それは文様を刻む構成やデザインだけでなく、スタンプツール(鏨・刻印)自体のクオリティに起因し、それらの質の高さにより、武骨な質感のブレスレットに現代作品には無い迫力や上質感が生み出されています。
これらの『スタンプワーク』は、スタンプ/鏨ツールを打ち付けることによってシルバーに文様を刻みこんでいますが、そのツール(鏨)はシルバーよりも硬い鉄(鋼)で作られています。その為、その加工はジュエリー制作よりもはるかに高い難易度となります。
そして、ナバホジュエリーにおけるスタンプワークは、古くからその根幹を成す技術の一つであり、シルバースミスの「技術力」は、スタンプツール/鏨を制作する「技術力」次第であり、優れたシルバースミスは優れたスタンプメーカーと同義です。
さらに、スタンプツール(鏨・刻印)のクオリティは現代作品とビンテージ作品を見分ける上でも大きな特徴となります。
1950年代以前の作品で見られる1920年代~1940年代に作られたスタンプツールの多くは、本作と同様に非常に細かな文様を刻むことが出来る高い質を持つことが特徴となっています。
【Rattlesnake】ガラガラ蛇/ラトルスネークは、ネイティブアメリカンにとって神聖な存在として、特にプエブロインディアンの間で古くからジュエリーやポッテリー等、色々な作品に用いられました。
当店のロゴにも登場するモチーフであり、脱皮して成長していく姿から、<再生><革新><挑戦><知恵> 等を象徴するシンボルとされています。
ジュエリーにおいてはナバホの偉大な作家【Fred Peshlakai】フレッド・ぺシュラカイ(1896-1974)やアコマの伝説的な作家【Clyde Hunt/Chief Sunny Skies】クライド・ハント(1900-1972)等が素晴らしいスネークモチーフの作品を残しており、それらのデザイン・スタイルが後世に受け継がれています。
前述の通り、ナバホのシルバースミスやツーリスト向けの作品においても散見されるモチーフですが、アメリカ中西部において神聖な存在として古くから大切なモチーフとしてきたのは、ナバホ以外の部族(プエブロ)です。
その為、制作な背景は不明ですが、本作もナバホ以外の部族による作品である可能性のあるピースとなっています。
【卍】【Whirling Log】ワーリングログ【Swastika】スワスティカについて・・・
アルファベットの『L』を4つ組み合わせて生まれた記号であり 『LOVE・LIFE・LUCK・LIGHT』 からなる幸福のシンボルであり、ラッキーシンボルとしてネイティブアメリカンの工芸品において広く認知されていたモチーフです。
しかしながら、1933年のナチスドイツ出現、1939年にWW2開戦により、アメリカにおいては敵国であるドイツのハーケンクロイツと酷似した記号は不吉だとして使われなくなってしまいました。
1941年当時の新聞記事にも残っていますが、インディアンたちにも卍が施された作品の廃棄が求められ、政府機関によって回収された事もあったようです。
その後、大戦中にも多くが廃棄されてしまった歴史があり、現存しているものは大変貴重となりました。
本作はそのような歴史的な受難を乗り越えて現在まで受け継がれてきたピースであり、史料価値を感じる事の出来るビンテージジュエリーとなっています。
【Arrow/Arrowhead】アロー/アローヘッドは、『お守り』の意味合いを持ちインディアンジュエリー創成期からみられる最古のモチーフの一つです。
【Ingot Silver】インゴットシルバー(銀塊)からの成形は、アンティークインディアンジュエリーにおいて非常に重要なファクターですが、銀含有率/品位とは関係なく、ジュエリーの製法技術を表します。
現在制作されている作品の多くは、材料として市販されているシルバープレート(銀板/ゲージ)を加工することでジュエリーとして成形されていますが、インゴットから成形する製法では一度溶かしたシルバーを、鍛冶仕事に近い方法であるハンマーやローラーで叩き伸ばすことでジュエリーとして成形していきます。
最終的にはどちらもプレートやバーの形態になるため、大きな差は無いように思われますが、インゴットから成形されたシルバーの肌は、硬くなめらかで鈍い光を持っています。
それにより生み出されるプリミティブで武骨な作品の表情は、やはりアンティークインディアンジュエリーの大きな魅力です。
また、1930年代にはシルバープレートが登場しますが、当時シルバープレートを用いて制作されたジュエリーは政府によりインディアンクラフトとして認定されず、グランドキャニオンなどの国立公園内で販売できなくなった記録も残っています。
本作もインゴットシルバーから成形された硬いシルバーに、可愛げと抜けた雰囲気を持ったラトルスネーク/ガラガラ蛇のアップリケが施され、素朴でプリミティブな造形ながらも大変雰囲気のあるブレスレットとなっています。
スネーク等のキャッチーなモチーフと、ナバホジュエリーとしては端正なシルバーワークとのコントラストも好印象。アイコニックでポップなモチーフやデザインは、男性向けのアクセサリーには重要な要素である『ギャップ』と『遊び心』を与えてくれるアイテムであり、スタイルにアクセントと奥行きをもたらすことが出来るビンテージ独特の魅力を有する作品です。
また、腕に良くなじむ装着感があり、程よいボリューム感はさり気なく使いやすいバングル。シルバーのみで構成されたソリッドな質感は、ビンテージスタイルはもちろんですが、その他の多くのスタイルにフィッさせることが可能であり、ナバホジュエリー特有の質感も手首に馴染みの良い印象のバングルです。
本作のモチーフや造形スタイル等はツーリストジュエリーを製造したメーカー等に受け継がれていますが、細部には作者のオリジナリティを宿し、類似した作品を見つけるのはほぼ不可能だと思われます。
アンティーク工芸品としても評価できる質と非常に高い希少性を持ったアンティーク/ビンテージバングルの一つです。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションも良好です。シルバーのクスミや細かなキズ、ハンドメイド作品特有の制作時のムラなどが見られますが、使用感は少なくダメージ等は見られません。
【卍】の入るピースは戦後もほとんど着用されずに保管されていることが多く、現存数は少ないですが、コンディションの良い個体が多いことも特徴の一つです。