【PUEBLO】プエブロ・【NAVAJO】ナバホの優秀な作家が在籍したインディアンクラフトショップ【GARDEN OF THE GODS TRADING POST】ガーデンオブザゴッズトレーディングポストで作られた貴重な作品。中でも作者個人のホールマーク『BA』の刻印が入り、非常に例外的なデザイン・造形を持つアンティーク/ビンテージバングルです。
インゴットコインシルバー(銀塊)から成形された非常に重厚なバンドをベースとして、チベットやインド、トルコなどアジア~中東等のユーラシア大陸で作られたアンティークジュエリーをデザインソース・モチーフとした他に類を見ないピースとなっています。
ホールマーク(作者やショップのサイン)がなければネイティブアメリカンメイドである事も判断の難しい個体であり、同トレーディングポストで作られた作品の中でも突出したスペシャリティを持つ作品。唯一無二のオリジナル作品であり高い史料価値を誇る作品の一つとなっています。
内側に刻印されている『HAND MADE BY INDIANS』と『SOLID SILVER』の表記により1930年代中頃~1940年代初頭にガーデンオブザゴッズトレーディングポストで作られた作品である事が特定可能です。
さらにホピ族やズニ族等のプエブロの精霊カチナと思われるモチーフの刻印と作者のイニシャルである『BA』の文字が刻まれています。
同様のホールマークが刻印された作品は幾つか発見されており、アメリカ国内の書籍上では【Benny Apachito】ベニー・アパチートのホールマークと紹介されている事がありますが、活動期間等から全く異なったプエブロの作家が用いたホールマークと思われ、残念ながら現時点でその作者個人を特定する事は出来ません。
また、当時作られた同工房のにおける『SOLID SILVER』が刻印された銀製品は全てコインシルバーとされており、本作もコインシルバー(品位900=90.0%の銀)製となっています。
インゴットコインシルバー(銀塊)から成形された大変重厚なバンドは、『ハーフラウンドワイヤー』と呼ばれる半円型の断面と『ラウンドワイヤー』の円型断面の中間的なシェイプに造形され、フロントとターミナル(両端)にボリューム感を持たせたインディンジュエリーでは特殊な造形です。
またそれは、控えめな幅でありながら<50g>を超える重厚なバンドとなっており、経年による摩耗と硬いシルバーの質感によってとてもなめらかでヘリテイジ感の素晴らしい表情となっています。
さらに、『ファイルワーク』と呼ばれるヤスリで削る原始的な技術を用いて、上下左右対称に立体的な刻みが施され、削り出しによってシルバーボールが配されたような半球体が作られたり、細かなスタンプワークによって網目の様なデザインが生み出されており、本作の大きなポイントでありオリジナリティとなっています。
それらの装飾・デザイン様式は、明らかにチベットやインド、トルコ、モロッコ等の伝統的なブレスレットをモチーフとしていますが、それらとの違いはソリッドシルバー(銀無垢)の造形による重量感と、非常に原始的な技術のみを用いて作り上げられたシルバーワークによる独特な経年変化に見ることが出来ます。
素朴ながら手間を惜しまない仕事により、とても効果的に強いコントラストを生み、立体的で動きのある表情を与えているようです。
また、インディアンジュエリーの伝統的な技術・ディテールで構成された作品ですが、GARDEN OF THE GODSのみでなく、インディアンジュエリーとしても全く例外的な造形スタイルであり、特殊なクオリティとデザイン・造形を持つブレスレットです。
稀に同工房に所属した有名作家が残したものにおいて、例外的なオリジナリティと質を持った作品が残されており、本作も作者個人は特定できませんが、おそらく強いオリジナリティを求めた作家が制作した貴重な作品であり、ミュージアムクオリティを有するピースとなっています。
【GARDEN OF THE GODS TRADING POST】ガーデンオブザゴッズトレーディングポストは、もともとFred Harvey Companyで働いていた【Charles E. Strausenback】チャールズ・E・ストローセンバックが、1920年にコロラド州Pike's Peakの国立公園『ガーデンオブザゴッズ』で始めた観光客向けのインディアンアートショップです。
多くの優秀なプエブロインディアン作家を擁し、ナバホのオールドスタイルをベースにしながらも、プエブロスタイルを積極的に取り入れたミックススタイルが特徴的な工房です。
所属していたのは、インディアンジュエリー創成期の最もクリエイティブな作家の一人として知られるサン・イルデフォンソの【Awa Tsireh】アワ・シーディー(1898-1955)をはじめ、ナバホの【David Taliman】デビッド・タリマン(1902or1901-1967)、他にも【Epifanio Tafoya】【William Goodluck】【John Etsitty】等、プエブロ・ナバホの中でも、後に偉大なアーティストとして知られる多くの作家達であり、それぞれが独創的なスタイルを生み出し、沢山の傑作を送り出したインディアンアートショップです。
GARDEN OF THE GODSも1900年代以降のサウスウエスト観光産業の隆盛により創業された「スーベニア(記念品)ビジネス」と言う意味では、【Fred Harvey Style】フレッド・ハービースタイルと呼ばれるジャンルにカテゴライズされている【BELL TRADING POST】や【Maisel's Indian Trading Post】、【Arrow Novelty】等の分業化や機械化を進めインディアンクラフトの量産化を図ったメーカー/Manufacturersと同じスタートを切っていますが、インディアンアートショップとして古い伝統技術や製法を守り、独自性を持ちながら工芸品/アートピースとしての制作が行われており、上記の様なフレッド・ハービースタイルのマスプロダクト製品とは一線を画す存在です。
しかしながら、当時とても新しいかったポップなスタイルを持つAwa Tsirehの作品が、【BELL TRADING POST】をはじめとする量産メーカーに模倣されたことや、【Fred Peshlakai】の作品、【C. G. Wallace】で作られたデザイン/造形が上記のようなメーカーのデザインソースとなったことによりGARDEN OF THE GODS TRADING POSTやFred Wilson's Indian Trading Post、Southwestern Arts and Crafts等の分業や量産化を図っていない工房の作品も量産メーカーによるフレッド・ハービースタイルと混同されることになってしまいました。
1940年代には、コロラド州ガーデンオブゴッドとコロラドスプリングス、そしてアリゾナ州フェニックスにも店舗を展開しますが、1956年頃にCharles E. Strausenbackが亡くなっており、その後は妻がビジネスを引き継いでいたようですが、1979年にはビジネス自体が買収されました。そのため、ジュエリー等の制作は1950年代頃までだったと思われます。
また、同店はコロラド州にある神々の庭/Garden of the Godsにて、現在もヒストリックなトレーディングポストとして当時の姿を残して土産物店・カフェとして運営されています。
【Coin Silver】コインシルバーとは、インディアンジュエリーにおいては銀含有率90.0%の地金を表します。
また、アメリカの古い硬貨における銀含有率は900ですが、日本では800~900や古い100円硬貨では600、メキシカンコインは950であり、900シルバーが最も多く使われていますが世界中で共通した純度ではありません。
同様に【Sterling Silver】スターリングシルバー=【925シルバー】は、銀含有率92.5%の地金であり、こちらは世界中で共通の基準となっています。
また『割金』と呼ばれる残りシルバー以外の7.5%には、銅やアルミニウム等が含まれています。(現在では、スターリングシルバーの割金は7.5%全てが銅と決められています) 925シルバーは熱処理によって時効硬化性をもち、細かな細工や加工に向いていたため食器や宝飾品等様々な物に利用されていますが、インディアンジュエリーにおいては、その初期に身近にあった銀製品、特にシルバーコインを溶かすことで、材料を得ていた背景があるため、現代でも限られた作家によりコインシルバーを用いる伝統が残されています。
シルバーの色味や質感は、『割金』や製法にも左右され、コインシルバー900とスターリングシルバー925の差異は純度2.5%の違いしかない為、見た目で判断するのは困難ですが、やはりコインシルバーは少し硬く、着用によってシルバー本来の肌が現れた時に、スターリングシルバーよりも深く沈んだ色味が感じられると思います。
さらに古い1800年代後半~1920年代以前の作品では、メキシカンコインが多く含まれていた為、そのシルバーの純度は95.0%に近くなっている個体も多いようですが、身近な銀製品を混ぜて溶かしていた歴史を考えると純度に対してそれほど強い拘りはなかったことが推測されます。
【Ingot Silver】インゴットシルバー(銀塊)からの成形は、アンティークインディアンジュエリーにおいて非常に重要なファクターですが、銀含有率/品位とは関係なく、ジュエリーの製法技術を表します。
現在制作されている作品の多くは、材料として市販されているシルバープレート(銀板/ゲージ)を加工することでジュエリーとして成形されていますが、インゴットから成形する製法では一度溶かしたシルバーを、鍛冶仕事に近い方法であるハンマーやローラーで叩き伸ばすことでジュエリーとして成形していきます。
最終的にはどちらもプレートやバーの形態になるため、大きな差は無いように思われますが、インゴットから成形されたシルバーの肌は、硬くなめらかで鈍い光を持っています。
それにより生み出されるプリミティブで武骨な作品の表情は、やはりアンティークインディアンジュエリーの大きな魅力です。
また、1930年代にはシルバープレートが登場しますが、当時シルバープレートを用いて制作されたジュエリーは政府によりインディアンクラフトとして認定されず、グランドキャニオンなどの国立公園内で販売できなくなった記録も残っています。
本作は、インゴットコインシルバーという製法・素材だけでなく、デザイン・製法に至るまでヒストリックなインディアンジュエリーの歴史を感じさせる作品。あまりにも特別なデザインの個体ながらホールマークによりある程度正確な制作時期等の背景が特定可能であり、工房や作者の価値観や技術を考察する上でのでの重要な史料ともなるブレスレットです。
また、細い幅でありながら厚みのあるワイヤーによって大きなボリューム感を持ちますが、石が付かないシルバーのみで構成された作品の為、多くのコーディネイトに馴染む高い汎用性を示します。
GARDEN OF THE GODS TRADING POST/ガーデンオブザゴッズトレーディングポストの個体は、ツーリストジュエリーとして作られた作品ながらアンティーク工芸品としても評価されていますが、中でも本作の様なスペシャリティを持った個体はヒストリックであり、ミュージアムクオリティを誇る作品の一つとなっています。
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コンディションは、長期の着用による摩耗のためスタンプは少し薄くなっており、アンティークのハンドメイド作品の為、制作上のムラ等が見られますが、目立ったダメージは無く着用に不安のない状態です。
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