【NAVAJO】ナバホの中でも多くの傑作を残している組織【The Navajo Arts & Crafts Guild】(NACG)=通称『ナバホギルド』の作品。バンデット(ボーダー)デザインを基調としたミニマルでクリーンな印象と、立体的なフォルムが美しいアンティーク/ビンテージバングルです。
ナバホギルドらしいオリジナリティを持ちながら普遍的な造形美を感じさせ、インゴットシルバー(銀塊)から成形されたバンドには、一見して判断する事が出来ない特徴・スペシャリティが隠されています。
また、その非常に硬く70gを超える重厚なバンドは独特な上質感を宿し、ビンテージジュエリーながらエルメスやティファニー等、現代のハイジュエリーとも違和感なく馴染む造形美と気品を有するブレスレットとなっています。
※本作は、同時に制作されたと思われる下記のピンブローチとセットで発見されたビンテージジュエリーです。
販売は2作品セットではなくそれぞれ単体での販売になっておりますのでご注意ください。
もう一方の作品については、下記のリンクよりご確認頂けます。
ITEM CODE:JPO008458
【NAVAJO GUILD】Vintage Banded Stamped Ingot Silver Pin c.1945~
内側には、ナバホギルドのホールマーク(作者やショップのサイン)である【Horned Moon】のみが刻印されており、1940年代後半~1950年代頃の作品と思われます。
インゴットシルバー(銀塊)から成形されたバンドは、日本において『平打ち』と呼ばれる造形に近いフォルムですが、細部まで観察するとバンドの中央部分が厚く上下のエッジに向けて少し薄く成形されています。
ターミナル(両端)にかけて細くなったり薄く造形されたバンドはインゴットシルバーから成形された作品では多く見られますが、本作の様にバンド中央(帯状にスタンプワークが施された部分)が厚く、上下のエッジ部分と差を与えたディテールは、他に類を見ないように思われます。
その様なバンドの最も厚い中央部分に刻まれた帯状のスタンプワークが本作のハイライトとなっていますが、このスタンプワークも基本的な技術を応用しながらも特殊な技巧を駆使しています。
それは、先に2本の深いライン(凹/溝)をスタンプやファイルワークと呼ばれるヤスリによって掘り込み、その2本のラインの間に、スピンドルシェイプを連続して刻印していくことにより、まるで七宝の様な文様が生み出されています。
それは、伝統的なデザインにも見えますが、作品に個性を与える独自性の強い文様であり、本作が制作された1940年代後半~1950年代初頭頃の空気感や作者の精神性をとらえたデザインにも感じられます。
さらに、その上下にはナバホギルド作品で多く見られるジグザグ模様を刻むスタンプを連続して刻む事によって、素朴でナバホジュエリーらしい表情が与えられています。
また上下のエッジ部分も丸く鞣される事で、少し柔らかな表情や上質感が付加され、さり気ないディテールながら作品の仕上がりや着用時の印象に多きな違いを作っているようです。
クリーンでミニマムなデザイン/造形を作り上げるシルバーワークは、無機質で無駄のない表情を生み出していますが、それと同時に作者の熱量や信念さえも宿しているように感じられ、現在においても洗練された印象を与える作品です。
またこれらのディテールは、ナバホギルドらしい伝統的な製法やデザインを重視し制作されたピースであることを表しており、武骨でプリミティブな技術によって作り上げられていますが、シンプルでセンスを感じさせるデザインにより、当時モダンスタイルと呼ばれた美しさを持っています。
現代では、ナバホの有名アーティストである【McKee Platero】マッキー・プラテロ氏等が、本作のような【Ambrose Roanhorse】アンブローズ・ローアンホース(1904-1982)やナバホギルドが生み出した「古典作品(技術)をベースにモダンで完成されたジュエリー」という理念の影響を強く受けていると思われます。
特に初期のMcKee Platero氏の作品では、こちらと同じようなシンプルで簡潔なスタンプワークとファイルワークのみで構成されたピースが散見されます。
それらをベースにさらに自身の思想や美意識を反映させ、高い次元へと作品を昇華させたマッキー・プラテロ氏は、日本の伝統継承で云う『守・破・離』を体現し、伝統工芸品であるナバホジュエリーをアートピースに押し上げています。
【The Navajo Arts & Crafts Guild】(NACG)※以下ナバホギルドはインディアンアートの普及やクオリティーの保全、職人の地位向上等、【The United Indian Trader’s Association】(UITA)とも近しい目的の為に、ナバホのシルバースミス達の手によって組織されました。
中でもナバホギルドは、UITA等に比べナバホの職人主導で組織された団体で、大巨匠であるナバホのシルバースミス【Ambrose Roanhorse】アンブローズ・ローアンホース(1904-1982)が代表を務め、後進の育成や伝統的な技術の伝承、インディアンジュエリーのさらなる普及などを目的に1941年にギルドとして発足しました。
明確にはなっていませんが、U.S.NAVAJO/Indian Arts & Crafts Boardが1937年~1940年代の初め頃までしか見られないのも、第二次世界大戦の激化による影響だけではなく、どちらの組織においても重要な役割を担っていたAmbrose Roanhorseが、Navajo Guild/The Navajo Arts & Crafts Guildに注力したためではないかと考えられます。
ナバホギルドによる作品のスタイルは特徴的で、Ambrose Roanhorseの意図が強く働いた影響のためか、インゴットから作られたベースに、クリーンで構築的なスタンプワークをメインとしたデザインと、昔ながらのキャストワークによるピースが多く、どちらも回顧主義的なオールドスタイルでありながら、洗練された美しい作品が多く制作されました。
また、もう一つの特徴はその構成メンバーです。当時から有名で最高の技術を究めた作家が名を連ねています。
【Kenneth Begay】ケネス・ビゲイ、【Mark Chee】マーク・チー、【Austin Wilson】オースティン・ウィルソン、【Allan Kee】アレン・キー、【Ivan Kee】アイバン・キー、【Jack Adakai】ジャック・アダカイ、【Billy Goodluck】ビリー・グッドラック等、さらに、Ambrose Roanhorseの教え子の一人であるホピ族の【Louis Lomay】ルイス・ロメイもナバホギルドのメンバーだったようです。
さらに特筆すべきは、これだけ有名作家が揃っていながら【NAVAJO GUILD】のジュエリーとして制作されるものは、個人のホールマーク(署名/サイン)が認められていませんでした。
そのため、1941年の発足から1940年代の半ばごろまでは、まったくホールマークなどが記載されていないか、1943年以前には『U.S.NAVAJO 70』が用いられています。
その後、1943年に【Horned Moon/ホーンドムーン】と呼ばれる空を司る精霊をモチーフとしたシンボルがナバホギルドの象徴として商標登録されており、諸説ありますが1940年代後半頃からホールマークとして作品に刻印されるようになったようです。
1950年代以降になってからは『NAVAJO』の文字や、銀含有率92.5%の地金であることを示す『STERLING』の刻印が追加されていきます。
また、1940年代後半以降でもホールマークの刻印が刻まれていない個体も多く発見されています。
ナバホギルドの代表を務めた【Ambrose Roanhorse】は後進の育成にも熱心な作家で、1930年代からサンタフェのインディアンスクールで彫金技術のクラスを受け持っており、多くの教え子を持っていました。
サードジェネレーションと呼ばれる第3世代の作家ですが、さらに古い年代の伝統を重んじた作品を多く残し、独特の造形美や完成された技術は次世代に絶大な影響を与えた人物です。
【The Navajo Arts & Crafts Guild】 (NACG)ナバホギルドのピースは、アメリカ国内では非常に高い知名度を誇っていますが、それに比例せず、現存数がとても少ないことも特徴です。
コレクターのもとには一定数があると思われますが市場に出る個体は少なく、現在発見するのが大変困難になっています。
【Ingot Silver】インゴットシルバー(銀塊)からの成形は、アンティークインディアンジュエリーにおいて非常に重要なファクターですが、銀含有率/品位とは関係なく、ジュエリーの製法技術を表します。
現在制作されている作品の多くは、材料として市販されているシルバープレート(銀板/ゲージ)を加工することでジュエリーとして成形されていますが、インゴットから成形する製法では一度溶かしたシルバーを、鍛冶仕事に近い方法であるハンマーやローラーで叩き伸ばすことでジュエリーとして成形していきます。
最終的にはどちらもプレートやバーの形態になるため、大きな差は無いように思われますが、インゴットから成形されたシルバーの肌は、硬くなめらかで鈍い光を持っています。
それにより生み出されるプリミティブで武骨な作品の表情は、やはりアンティークインディアンジュエリーの大きな魅力です。
また、1930年代にはシルバープレートが登場しますが、当時シルバープレートを用いて制作されたジュエリーは政府によりインディアンクラフトとして認定されず、グランドキャニオンなどの国立公園内で販売できなくなった記録も残っています。
本作もインゴットシルバーからの成形を含む、全てのディテールが原始的な技術で構成された素朴なアンティークジュエリーですが、手間を惜しまない丁寧で完成されたシルバーワークと、アンティーク作品と思えないデザインの洗練度、そして長い経年によりアートピース・ウェアラブルアートとしても高く評価される作品に昇華されています。
またこの様な非常にシンプルでミニマルなデザインは、特筆すべき特徴を持っていないようにも感じられますが、一見してナバホギルドで作られた作品が想起されるスペシャリティを有しています。
それは、現代においても簡単に再現できない技巧と作者の精神性が注ぎ込まれた証によるものと思われます。
また、独自性のあるスタンプワークも素晴らしいですが、基本的にはプレーンなシルバーの質感を活かした作品となっており、このようなシルバーの美しさを際立たせた作品は、着ている服の色や天気・環境、そして周辺の景色を映し出します。
その為、ある程度の幅を持ったバングルですが、色々なスタイルやあらゆるシーンに溶け込みながら、個性を主張できるジュエリーとなっています。
前述のホールマーク【Horned Moon】が刻印され、【The Navajo Arts & Crafts Guild/ナバホギルド】の美意識や特徴を集約したような造形スタイルのバングル。歴史的な資料価値も高く大変コレクタブルで貴重な作品の一つとなっています。
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コンディションも良好です。
多少のキズやシルバーのクスミ、ハンドメイド作品特有の制作上のムラ等は見られますが、目立ったダメージの無い良好な状態を保っています。
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