【NAVAJO】ナバホのビンテージジュエリーと思われる作品で、ターミナル(両端)にインディアンヘッド/チーフヘッドのデザインがあしらわれた『チーフプロファイル』とも呼ばれる造形スタイルのピース。バンドが2枚のシルバーを貼り合わせた様に見える造形や、内側にSTERLING刻印が施されているディテールにより、リプロダクトや後年の補強等が考えられるアンティーク/ビンテージバングルです。
本作の様なチーフプロファイルスタイルの作品は、1920年代以前に多く作られていますが、本作の場合には1910年代頃に作られた作品を補強する為に、1940年代以降になってからシルバーの板を内側に貼り合わせたか、アンティークピースを元にしてキャストによって複製したようにも見られます。どちらにしても量産された作品ではなく貴重なブレスレットですが、来歴には謎の残る作品となっています。
チーフプロファイルスタイルのバングルは【Tourist Jewelry】ツーリストジュエリーや【Fred Harvey Style】フレッド・ハービースタイルと呼ばれる、20世紀前半のサウスウエスト観光産業の隆盛に合わせて作られた作品の一つですが、それらの最初期作品群であり最もコレクタブルな造形スタイルの一つとなっています。ただし、ツーリストジュエリーという背景によりその殆どが薄いシルバーバンドをベースとしており、破損をリペアしたり補強された個体も散見される造形スタイルとなってます。
フロント部分には、オーセンティックでどこか有機的な雰囲気を持つスタンプワークが刻まれています。そしてサイド部分にはアローのスタンプが刻まれ、ターミナル(両端)には、本作の最大の特徴となっているインディアンチーフヘッズが造形されています。どこか愛らしいインディアンチーフのデザインが形作られ、スタンプワークを駆使することで、ウォーボンネット/ヘッドドレスを着けたインディアンが細部まで描き出されています。また、それらが描き出す紋様に呼応するように、上下のエッジにもカッティングされており、そのさりげなくも手間の掛かったディテールにより、トラディショナルなチーフプロファイルの造形が形作られています。
【War Bonnet/Headdress】ウォーボンネット/ヘッドドレスは、頭に着ける羽飾りのことで、スタンプ(鏨)のモチーフとしてはセレモニアルダンス/儀式でのダンスを表します。こちらの作品の様なインディアンチーフのモチーフではほとんどの作品において、象徴的にウォーボンネットを装着したインディアンヘッドが描かれています。
【Arrow/Arrowhead】アロー/アローヘッドは、『お守り』の意味合いを持ちインディアンジュエリー創成期からみられる最古のモチーフの一つです。
また、裏側には『STERLING』の刻印が刻まれています。これは、銀含有率92.5%の地金であることを示す表記であり、1930年代中頃には登場していた刻印です。ただし、ショップやトレーディングポストにおいて多用されるようになったのは戦後である1940年代末以降のようです。1940年代以前に作られたツーリストジュエリーでも散見されますが、第二次世界大戦中の銀の不足が影響した事で広く普及したと推測され、1940年代末以降の作品で非常に多くみられるようになりました。
『925』の表記も同じ意味を持っていますが、925の刻印はインディアンジュエリーにおいては非常に新しく採用された刻印であり、そのほとんどが1990年代以降の作品に刻印されています。Sterling Silver/スターリングシルバー=925シルバーは、熱処理によって時効硬化性をもち、細かな細工や加工に向いている為、現在においても食器や宝飾品等様々な物に利用されています。
このようなインディアンヘッドをターミナルにあしらったブレスレットは、ビンテージ作品の名作の一つとして高く評価されており、ほとんど市場に出ることがなくなりました。
また、多くのリバイバル/復刻作品が作られているデザインであり、本作もミッドセンチュリー期前後に作られたリバイバル/リプロダクト作品である可能性が残るピースとなっています。
また重量も<27g>としっかりとした厚みと重厚感を有し、同スタイルの作品としては例外的な重さです。
ナチュラルで武骨な印象はツーリスト向けながらチープな印象を作らず、シルバーのみで構成されたソリッドな質感は、ビンテージスタイルはもちろんですが、その他の多くのスタイルにフィットさせることが可能なバングルとなっています。
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コンディションは、リペアの跡か制作上のムラ、そして部分的な摩耗が見られますが、目立ったダメージは無く着用に不安のないコンディションとなっています。