【PUEBLO】プエブロ・【NAVAJO】ナバホの作家が在籍したインディアンクラフトショップ【GARDEN OF THE GODS TRADING POST】ガーデンオブザゴッズトレーディングポストで作られた、コッパー/銅製のアンティーク/ビンテージバングルです。
インゴットコッパー(銅塊)から成形された重厚なバンド(地金)をベースに、大変力強く武骨な仕上がりながら、手間を惜しまず高い技術力を感じさせるチェイシングやスタンプワーク等の彫金技術によって構成された作品です。
ホールマーク(作者のサイン)は刻印されていませんが、同店/工房を創業した【Charles E. Strausenback】チャールズ・E・ストローセンバックの親族が保管していた同氏のコレクション(遺品)の一つであり、【GARDEN OF THE GODS TRADING POST】ガーデンオブザゴッズトレーディングポストで制作された作品である事が特定可能です。
また、使用されているスタンプツール(鏨・刻印)やそのデザイン・造形からも、同工房で1920年代末~1930年代頃に作られた事が判断が可能となっています。
本作と全く同一のスタンプ(鏨)ツールが使用されているGARDEN OF THE GODS TRADING POST作品につきましては・・・
『JBF000352』や『JBO015265』←リンクをご参照ください。
インゴットコッパー(銅塊)から成形されたバンド/地金をベースとして『Chasing/チェイシング』と呼ばれる鏨を使いシルバーに立体的な角度を付ける(彫刻の様なイメージ)技術、さらに『ファイルワーク』というヤスリで削る原始的な技法を駆使することで、立体的な凹凸のボーダーラインが形成されています。
またそれらのライン状の凹凸は、強く立体的なラインと、美しい山型が交互に造形されており、立体的で奥行きのある表情が生み出されいてまいます。
さらに、本作のスペシャリティは、フロントからターミナル(両端)にかけて細い幅になり、それに合わせてチェイシングによる山型のラインが細く造形されている部分です。
このような造形を実現する為には、高い技術力だけでなく力強くも繊細なハンマーワークと、それを継続して形作っていく為の集中力を必要とします。
プリミティブなシルバーワークながら、作者の拘りやとてつもない技術力を垣間見ることが出来る彫金技術により作り上げられたブレスレットです。
また、力強く細かく打ち込まれたスタンプワークからもナバホジュエリーらしさと、強い陰影と奥行きを生み出す作者の思いを宿すかの様なシルバーワークが見て取れます。
【GARDEN OF THE GODS TRADING POST】ガーデンオブザゴッズトレーディングポストは、もともとFred Harvey Companyで働いていた【Charles E. Strausenback】チャールズ・E・ストローセンバックが、1920年にコロラド州Pike's Peakの国立公園『ガーデンオブザゴッズ』で始めた観光客向けのインディアンアートショップです。
多くの優秀なプエブロインディアン作家を擁し、ナバホのオールドスタイルをベースにしながらも、プエブロスタイルを積極的に取り入れたミックススタイルが特徴的な工房です。
所属していたのは、インディアンジュエリー創成期の最もクリエイティブな作家の一人として知られるサン・イルデフォンソの【Awa Tsireh】アワ・シーディー(1898-1955)をはじめ、ナバホの【David Taliman】デビッド・タリマン(1902or1901-1967)、他にも【Epifanio Tafoya】【William Goodluck】【John Etsitty】等、プエブロ・ナバホの中でも、後に偉大なアーティストとして知られる多くの作家達であり、それぞれが独創的なスタイルを生み出し、沢山の傑作を送り出したインディアンアートショップです。
GARDEN OF THE GODSも1900年代以降のサウスウエスト観光産業の隆盛により創業された「スーベニア(記念品)ビジネス」と言う意味では、【Fred Harvey Style】フレッド・ハービースタイルと呼ばれるジャンルにカテゴライズされている【BELL TRADING POST】や【Maisel's Indian Trading Post】、【Arrow Novelty】等の分業化や機械化を進めインディアンクラフトの量産化を図ったメーカー/Manufacturersと同じスタートを切っていますが、インディアンアートショップとして古い伝統技術や製法を守り、独自性を持ちながら工芸品/アートピースとしての制作が行われており、上記の様なフレッド・ハービースタイルのマスプロダクト製品とは一線を画す存在です。
しかしながら、当時とても新しいかったポップなスタイルを持つAwa Tsirehの作品が、【BELL TRADING POST】をはじめとする量産メーカーに模倣されたことや、【Fred Peshlakai】の作品、【C. G. Wallace】で作られたデザイン/造形が上記のようなメーカーのデザインソースとなったことによりGARDEN OF THE GODS TRADING POSTやFred Wilson's Indian Trading Post、Southwestern Arts and Crafts等の分業や量産化を図っていない工房の作品も量産メーカーによるフレッド・ハービースタイルと混同されることになってしまいました。
1940年代には、コロラド州ガーデンオブゴッドとコロラドスプリングス、そしてアリゾナ州フェニックスにも店舗を展開しますが、1956年頃にCharles E. Strausenbackが亡くなっており、その後は妻がビジネスを引き継いでいたようですが、1979年にはビジネス自体が買収されました。そのため、ジュエリー等の制作は1950年代頃までだったと思われます。
また、同店はコロラド州にある神々の庭/Garden of the Godsにて、現在もヒストリックなトレーディングポストとして当時の姿を残して土産物店・カフェとして運営されています。
【Ingot Copper】インゴットコッパー(銅塊)からの成形は、アンティークインディアンジュエリーにおいて非常に重要なファクターですが、【Ingot Silver】インゴットシルバー(銀塊)と同じく、銅含有率/品位という素材の質とは関係なく、ジュエリーの製法技術/成形技法を表します。
現在制作されている作品の多くは、材料として市販されているシルバーやコッパーのプレート(銀・銅板/ゲージ)を加工することでジュエリーとして成形されていますが、インゴットから成形する製法では一度溶かした金属(銅や銀)を、鍛冶仕事に近い方法であるハンマーやローラーで叩き伸ばすことでジュエリーとして成形していきます。
最終的にはどちらもプレートやバーの形態になるため、大きな差は無いように思われますが、インゴットから成形された地金の肌は、硬くなめらかで鈍い光を持っています。
それにより生み出されるプリミティブで武骨な作品の表情は、やはりアンティークインディアンジュエリーの大きな魅力です。
本作の内側に見られるようなコッパーの重なったような部分は、ハンマーワークによるインゴット成形作品の特徴です。
この様な特徴は、インゴット製法の『マーク』と呼ばれ、制作上のムラではありますが、コレクターに好まれる特徴の一つであり、逆に価値を高めるディテールとなっています。
また、1930年代には既製のシルバー/コッパープレートが登場しますが、当時シルバープレートを用いて制作されたジュエリーは政府によりインディアンクラフトとして認定されず、グランドキャニオンなどの国立公園内で販売できなくなった記録も残っています。
本作はコッパーという素材だけでなく、インゴットコッパーから成形され、デザイン・製法に至るまでヒストリックなインディアンジュエリーの歴史を感じさせる作品です。
随所に作者の技術力や美意識が感じられ、現在では考えられない程に手間を要する彫金作業が、伝統工芸品として作られたシルバージュエリーをウェアラブルアートとしても評価できる作品へと昇華しているようです。
銅/コッパーのみで構成されたソリッドな質感は派手な存在感を与えず、荒々しくも細かなスタンプワークは、プリミティブで武骨な印象を作ります。
さらに立体的な動きのある造形は特別な迫力を生み、奥行きと複雑な表情を作っている為、ビンテージスタイルを始め色々なコーディネイトに馴染み、長くご愛用頂けると思われます。
GARDEN OF THE GODS TRADING POST/ガーデンオブザゴッズトレーディングポストの個体は、ツーリストジュエリーとして作られた作品ながらアンティーク工芸品としても評価されており、その来歴も含め非常にコレクタブルでトレジャーハントプライスな作品となっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションも大変良好です。
長い保管期間によるコッパーのクスミやハンドメイド作品特有の制作上のムラ等は見られますが、良好なコンディションを保っています。
内側の極一部にはインゴット製法独特のコッパーの重なった部分(亀裂の様な部分)がみられます。これらは制作中にできるもので、ダメージではありません。