【NAVAJO】ナバホか【PUEBLO】プエブロのアンティークジュエリーで『ナバホパール』とも呼ばれるベンチメイド(ハンドメイド)シルバービーズネックレスに、サンドキャスト(砂型鋳物)により成形されたコーンフラワーをモチーフとした造形のフォブパーツがあしらわれたアンティーク/ビンテージネックレスです。
こちらの作品にはホールマーク(作者や工房のサイン)がなく正確な作者は不明ですが、コーンフラワーをモチーフとしたデザインは、インディアンジュエリー史における黎明期に活躍したインディアンシルバースミス【Etsitty Tsoie】エツィッティ・ツォージー(c.1880-1937)を発祥としていると思われます。
そして【Cochiti】コチティ族の巨匠【Joe H. Quintana】ジョー・キンタナ(1915-1991)等にも受け継がれ、インディアンジュエリーのオーセンティックなモチーフの一つとなっています。
さらに、本作の様にサンドキャストによるフォブパーツとシルバービーズを組み合わせたネックレスは、ナバホ族の中でも多くの傑作を残した1941年発足の組織【The Navajo Arts & Crafts Guild】(NACG)=通称『ナバホギルド』で制作されており、本作もナバホギルドで作られた可能性の高いピースとなっています。
1940年代~1950年代頃に作られた作品と思われ、サンドキャストによって形作られたコーンフラワーのフォブパーツは、素朴で柔らかな印象ながらNAVAJO GUILD/ナバホギルドにも通じる美意識と、裏側の仕上げ等の細部には高い完成度を感じさせます。
また、それらのフォブパーツは、センターが最も大きく構成され、左右のパーツが少しづつ小さくなるようにサイズのグラデーションが施されており、手間暇を惜しまない作者の拘りが感じ取れるディテールとなっています。
ベースとなっているナバホの伝統的なシルバービーズは、現地において『ナバホパール』(ナバホの真珠)や『デザートパール』(砂漠の真珠)等とも呼ばれ、本作の様なサイズの小さいビーズは、大きなサイズよりも制作に高い技術力が必要となり、長いネックレスではありませんが、合計66個にも及ぶビーズによって構成されています。
こちらの様に古くからの製法でビーズを制作すると、一日中制作しても数粒程度しか制作できない為、全てのシルバービーズをそろえる為に大変長い時間が費やされていることが判ります。
その為、現代では限られた作家しか制作しないアイテムとなっています。本作では完全なハンドメイドのビーズとなっており、材料の加工からの全ての工程を手作業により作り上げられています。
コンチョを作るような手法で半球体を制作し、それらを二つロウ付けすることでビーズに成形しています。そのため、その形状や大きさは不均一ですが、独特の味わいが感じられます。
パール/真珠の名に相応しい、ラウンドシェイプで美しく成形されたシルバービーズと、流麗で有機的な造形のフォブパーツが独特なバランスで調和しており、ナバホジュエリーらしいナチュラルな味わいだけでなく、素晴らしい上質感が与えられたネックレスとなっています。
【The Navajo Arts & Crafts Guild】(NACG)※以下ナバホギルドはインディアンアートの普及やクオリティーの保全、職人の地位向上等、【The United Indian Trader’s Association】(UITA)とも近しい目的の為に、ナバホのシルバースミス達の手によって組織されました。
中でもナバホギルドは、UITA等に比べナバホの職人主導で組織された団体で、大巨匠であるナバホのシルバースミスAmbrose Roanhorseが代表を務め、後進の育成や伝統的な技術の伝承、インディアンジュエリーのさらなる普及などを目的に1941年にギルドとして発足しました。明確にはなっていませんが、U.S.NAVAJO/Indian Arts & Crafts Boardが1937年~1940年代の初め頃までしか見られないのも、第二次世界大戦の激化による影響だけではなく、どちらの組織においても重要な役割を担っていたAmbrose Roanhorseが、Navajo Guild/The Navajo Arts & Crafts Guildに注力したためではないかと考えられます。
ナバホギルドによる作品のスタイルは特徴的で、Ambrose Roanhorseの意図が強く働いた影響のためか、インゴットから作られたベースに、クリーンで構築的なスタンプワークをメインとしたデザインと、昔ながらのキャストワークによるピースが多く、どちらも回顧主義的なオールドスタイルでありながら、洗練された美しい作品が多く制作されました。
また、もう一つの特徴はその構成メンバーです。当時から有名で最高の技術を究めた作家が名を連ねています。
【Kenneth Begay】ケネス・ビゲイ、【Mark Chee】マーク・チー、【Austin Wilson】オースティン・ウィルソン、【Allan Kee】アレン・キー、【Ivan Kee】アイバン・キー、【Jack Adakai】ジャック・アダカイ、【Billy Goodluck】ビリー・グッドラック等、さらに、Ambrose Roanhorseの教え子の一人であるホピ族の【Louis Lomay】ルイス・ロメイもナバホギルドのメンバーだったようです。
さらに特筆すべきは、これだけ有名作家が揃っていながら【NAVAJO GUILD】のジュエリーとして制作されるものは、個人のホールマーク(署名/サイン)が認められていませんでした。そのため、1941年の発足から1940年代の半ばごろまでは、まったくホールマークなどが記載されていないか、1943年以前には『U.S.NAVAJO 70』が用いられています。
その後、1943年に【Horned Moon/ホーンドムーン】と呼ばれる空を司る精霊をモチーフとしたシンボルがナバホギルドの象徴として商標登録されており、諸説ありますが1940年代後半頃からホールマークとして作品に刻印されるようになったようです。1950年代以降になってからは『NAVAJO』の文字や、銀含有率92.5%の地金であることを示す『STERLING』の刻印が追加されていきます。
また、1940年代後半以降でもホールマークの刻印が刻まれていない個体も多く発見されています。
ナバホギルドの代表を務めた【Ambrose Roanhorse】は後進の育成にも熱心な作家で、1930年代からサンタフェのインディアンスクールで彫金技術のクラスを受け持っており、多くの教え子を持っていました。
サードジェネレーションと呼ばれる第3世代の作家ですが、さらに古い年代の伝統を重んじた作品を多く残し、独特の造形美や完成された技術は次世代に絶大な影響を与えた人物です。
また、【The Navajo Arts & Crafts Guild】 (NACG)ナバホギルドのピースは、アメリカ国内では非常に高い知名度を誇っていますが、それに比例せず、現存数がとても少ないことも特徴です。 コレクターのもとには一定数があると思われますが市場に出る個体は少なく、現在発見するのが大変困難になっています。
インディアンジュエリーの伝統的な製法で造形されたビンテージジュエリーですが、洗練されたセンスを感じさせるデザインは、オリジナリティを持ちながらもクリーンで現代におけるハイジュエリーともナチュラルに組み合わせる事が出来る作品です。
またその個性的なデザインを、とても質の高い完全ハンドメイドのシルバーワークがバックアップすることで上質感や品位を失わず、現在でも素晴らしいクオリティを誇るネックレスとなっています。
また、コーンフラワーのモチーフや石のマウントされていないソリッドなシルバーの質感により、存在感を示す造形やボリューム感でありながら、シンプルで派手過ぎない印象も魅力的な作品です。
長さやボリューム感を含め、性別や季節を問わず多くのスタイルにフィットし、日常の特別なアクセントになるアイテム。女性にはエレガントにフィットしますが、男性にもさりげなくお使いいただける汎用性の高いネックレスに仕上げられています。
ナバホジュエリーのクラシックな造形スタイルを受け継いだ造形と、アーシーな表情を持ちながらもどこかモダンな印象に仕上げられたネックレス。類似作品を見つけるのが不可能に近い独自性を有し、大変コレクタブルでトレジャーハントプライスな作品の一つとなっています。
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コンディションも大変良好です。
シルバーのクスミや僅かなキズ、ハンドメイド作品特有の制作上のムラ等は見られますが、ダメージの無いとても良好な状態を保っています。