【NAVAJO】ナバホか【PUEBLO】プエブロのアンティークジュエリーで『ナバホパール』とも呼ばれるベンチメイド(ハンドメイド)シルバービーズネックレスに、【逆卍】Whirling Logのスタンプワークが刻まれたコーンフラワーモチーフのフォブパーツがあしらわれたアンティーク/ビンテージネックレスです。
こちらの作品にはホールマーク(作者や工房のサイン)がなく正確な作者は不明ですが、コーンフラワーをモチーフとしたデザインや使用されているスタンプツール(鏨・刻印)等からは、インディアンジュエリー史における黎明期に活躍した初期インディアンシルバースミス【Etsitty Tsoie】エツィッティ・ツォージー(c.1880-1937)や同作者の影響下にあった【C. G. Wallace Trading Post】C.G.ウォレスインディアントレーディングポスト所属の作者による作品と推定可能となっています。
そして本作の様なEtsitty Tsoieを発祥とするコーンフラワーモチーフの造形は【Cochiti】コチティ族の巨匠【Joe H. Quintana】ジョー・キンタナ(1915-1991)等にも受け継がれ、ネイティブアメリカンジュエリーのオーセンティックなモチーフの一つとなっています。
1920年代~1930年代頃に作られた作品と思われ、ハンドメイドのシルバービーズはナバホメイドとメキシカンメイドが混在しており、コーンフラワーのフォブパーツ(チャーム)も異なった作者によって作られている事が推測されます。
その為、本作は異なるネックレスから得たシルバービーズとフォブパーツを後年になって組み合わせたカスタム/リメイク作品です。
※当店で組み合わせたものではなく、古い時代にカスタムされたピースとなります。
ベースとなっているナバホの伝統的なシルバービーズは、現地において『ナバホパール』(ナバホの真珠)や『デザートパール』(砂漠の真珠)等とも呼ばれ、本作の様なサイズの小さいビーズは、大きなサイズよりも制作に高い技術力が必要となります。
また形状やホールの違いから、メキシカンシルバービーズも混在しているように思われますが、その製法はナバホ族のシルバースミスと同様であり、シルバーの質を含め大きな差はございません。
こちらの様に古くからの製法でビーズを制作すると、一日中制作しても数粒程度しか制作できない為、全てのシルバービーズをそろえる為に大変長い時間が費やされていることが判ります。
その為、現代では限られた作家しか制作しないアイテムとなっています。本作では完全なハンドメイドのビーズとなっており、材料の加工からの全ての工程を手作業により作り上げられています。
コンチョを作るような手法で半球体を制作し、それらを二つロウ付けすることでビーズに成形しています。そのため、繋ぎ目が確認できる仕上げや、その形状や大きさに不均一な部分が見られますが、独特の味わいが感じられます。
粗暴な印象の仕上げながら、パール/真珠の名に相応しいラウンドシェイプに近いフォルムのシルバービーズと、有機的でエスニシティな造形のフォブパーツが独特なバランスで調和しており、武骨な趣だけでなく独特な上質感や迫力が与えられたネックレスとなっています。
さらに、本作の特別なディテールとして、コーンフラワーのフォブパーツにおける半球体部分も、上記のシルバービーズと同じ製法により立体的な半球体を用いて造形されており、半球体部分は中空の構造となっています。
その下部の百合の紋章を思わせるようなコーンフラワー部分のみ、キャスト(トゥーファキャストかサンドキャスト)によって形作られており、裏側の仕上げ等の細部には高い完成度を感じさせます。
そして、象徴的に刻印された卍/Whirling Logのスタンプワークにより、アンティークジュエリーらしい味わいと時代を反映した重厚で複雑な表情を作っています。
【卍】鉤十字 (Swastika/スワスティカ)とは・・・
ネイティブアメリカンにおける卍モチーフは【Whirling Log】ワーリングログや【Nohokos】ノホコスと呼ばれ『LOVE・LIFE・LUCK・LIGHT』4つの単語における頭文字【L】を組み合わせる事で生み出された幸福を象徴するラッキーシンボルとして長い歴史を持っています。
また世界的にも、サンスクリット語の『幸運』を意味する言葉に由来し、仏教、ヒンドゥー教、オーディン教、さらにキリスト教における十字の一種としても用いられ、神聖なシンボルとして古くから世界中で見られる記号・象徴の一つとなっています。
日本においても家紋や寺社を表す地図記号として現在でも使用され、身近な図案や記号として用いられています。
しかしながら1933年のナチスドイツが出現し、1939年にはアメリカも第二次世界大戦に参戦すると、敵国ドイツ(ナチス)のシンボルであるハーケンクロイツと非常に類似した記号は不吉だとして使われなくなってしまいました。
1941年の新聞記事にも残っていますが、ネイティブアメリカンたちにも卍が入った作品の廃棄が求められ、政府機関による回収も行われました。
その後、大戦中にも多くの卍を用いた作品が廃棄されてしまった歴史があり、現存しているものは大変貴重となりました。
本作はそのような歴史的な受難を乗り越えて現在まで受け継がれてきたピースであり、史料価値を感じる事の出来るビンテージジュエリーとなっています。
また、ネイティブアメリカンの工芸品においては、ジュエリーだけでなくラグやバスケット、ポッテリー等でも重用されていたモチーフですが、卍と逆卍の使い分けは意識されていなかったようで、比較的逆卍が多いようにも感じられますが、卍・逆卍共に区別なく用いられていたと思われます。
【C. G. Wallace INDIAN TRADER/C. G. Wallace Trading Post】C.G.ウォレスインディアントレーダーは、【Charles Garrett Wallace】チャールズ・ガレット・ウォレスが、1928年にZUNI /ズ二のジュエリーを専門に扱うトレーダーとしてズニの町で創業し、非常に多くのズニジュエリー作家を支援しました。
創業後すぐに、ナバホのシルバー彫金技術を必要として【Ike Wilson】アイク・ウィルソン(1901-1942)とその兄である【Austin Wilson】オースティン・ウィルソン(1901-1976)、他にも【Billy Hoxie】ビリー・ホクシー、【Charles Begay】チャールズ・ビゲイ(1912-1998)等の一説には二十数人と言われるナバホ出身のシルバースミスが在籍していたと云われており、こちらの作者もその中の一人による作品だと思われます。
また、彼らの様にズニの町でシルバースミスをしていたナバホの職人は、技術的にはナバホの伝統的な彫金技術を重視していたようですが、植物のようなスタンプワークのデザインや表現等、そのデザインスタイルやディテールには、ナバホジュエリーにはあまり見られないズニ/プエブロの影響を受けていると考えられる作品が多く残されています。
そんな少し特殊な環境や優秀な職人による伝統の継承、さらに経営者であるCharles Garrett Wallaceの献身的なインディアンアーティストへのバックアップにより大変多くの傑作を生み出し、後世に残したトレーディングポストです。
それら残された作品群の一部であるCharles Garrett Wallaceの個人コレクションの約半数は、1975年にアリゾナ州フェニックスのバードミュージアムに寄贈されました。
また、残りの一部はSotheby Parke Bernet社のオークションに出品され、そのオークションカタログは現在でも多くの研究者やコレクターにとっての第一級の資料となっています。
プリミティブなアンティークネイティブアメリカンジュエリーの荒々しさの残るディテールながら素晴らしい造形センスを感じさせ、エレガントささえも感じさせるピースです。
また、コーンフラワーのモチーフや石のマウントされていないソリッドなシルバーの質感により、厳かなアンティーク作品でありながらシンプルで派手過ぎない印象も魅力的な作品です。
さらに長さやボリューム感を含め、性別や季節を問わず多くのスタイルにフィットし、日常のコーディネートにおいて特別なアクセントに成り得るアイテム。女性にはエレガントにフィットしますが、男性にもさりげなくお使いいただける汎用性の高いネックレスに仕上げられています。
非常に素晴らしいデザインと高い史料価値も魅力的なネックレス。アメリカ国内でも類似品の発見がとても困難なジュエリー作品ですが、カスタム/リメイクされている為にトレジャーハントプライスとなっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションも良好です。
ビーズにはシルバーのクミスと繋ぎ目の跡等、制作時のムラなどが見られますが、着用に不安の無い良好なコンディションとなっております。
ビーズワイヤー(フォックステイルワイヤー/チェーン)とフックパーツは当店で新しいものに交換済みとなっております。