【NAVAJO】ナバホ/【PUEBLO】プエブロのオールドジュエリー、おそらく1994年に制作された作品で、リポウズ/バンプアウトと呼ばれる伝統的なハンマーワークによって形作られたバングルです。非常にクリーンな印象と立体的で上質感のある造形美が魅力的なピースとなっています。
内側の刻印『‵94』の刻印から、1994年に作られた作品と推定され、『H』と『L』を組み合わせた様なホールマーク(作者やショップのサイン)が刻印されていますが、残念ながら作者は不明となっています。年号の刻まれた作品は、インディアンスクールの彫金教室で制作されたジュエリー等に刻印されている事がありますが、本作は作者のパーソナルなホールマークも同時に刻印されている為、インディアンスクールで作られた作品ではないと思われます。
非常にミニマムでクリーンな印象のバンドは、立体的なドーム状の膨らみを生み出すリポウズ/バンプアウトの技術をメインとした造作となっています。単純なアールではなく、中心に向けてアールの強くなる独特なシェイプとなっており、とても美しく独自性と奥行き、そして力強い存在感のある造形を作り上げています。
また、約45gのずっしりとした重量感も素晴らしく、しっかりとした厚みのあるシルバーに立体的なアールを与えている本作の様なリポウズ/バンプアウトは、硬い木の土台や鉛の塊にアール(曲面)の溝を彫り込み、そこにシルバーを細かく何度もタガネで叩き沿わせることによって曲面を作る手の込んだ技術によって形作られています。このようなディテールにより、手首に対するとても心地よい装着感が与えられています。さらに、それらの立体的な断面がターミナル(両端)部分ではフラットに成形されており、作者の細部への拘りとハンドメイドの上質感を体感することが出来ます。
そして、目立たずさり気ないディテールながら、本作の大きなポイントとなっているのが、フィニッシュに差をつけてシルバーの質感・トーンの違いをデザインに落とし込んでいる部分です。バイアスに刻み込まれたライン模様を境にして、フロント部を含む大きな面積の方をハイポリッシュ仕上げに、その逆サイドはマットな仕上げとなっています。その差は大きくありませんが、とても効果的に光の差異を生み、粋なデザインとなっています。
裏側の『STERLING』刻印は、銀含有率92.5%の地金であることを示す表記であり、1930年代中頃には登場していた刻印です。ただし、ショップやトレーディングポストにおいて多用されるようになったのは戦後である1940年代末以降のようです。1940年代以前に作られたツーリストジュエリーでも散見されますが、第二次世界大戦中の銀の不足が影響した事で広く普及したと推測され、1940年代末以降の作品で非常に多くみられるようになりました。
『925』の表記も同じ意味を持っていますが、925の刻印はインディアンジュエリーにおいては非常に新しく採用された刻印であり、そのほとんどが1990年代以降の作品に刻印されています。Sterling Silver/スターリングシルバー=925シルバーは、熱処理によって時効硬化性をもち、細かな細工や加工に向いている為、現在においても食器や宝飾品等様々な物に利用されています。
立体的な曲面で構成される事で、シルバーの造形美や質感を最大限に生かしたブレスレットとなっています。また、本作の様にシルバーの美しさを際立たせた作品は、着ている服の色や天気・環境、そして周辺の景色を映し出します。その為、色々なスタイルやあらゆるシーンに溶け込みながら、個性を主張できるジュエリーとなっています。
クリーンで無駄のないデザインと優れた汎用性は、性別を問わず多くのコーディネートにナチュラルにフィットし、長くご愛用いただける印象です。
当店では比較的新しい年代の作品であり、ナバホジュエリーらしい作品ではありませんが、伝統的な技術で形作られており、その優れたデザイン/造形は、当店が提案している価値観にフィットするブレスレット。アンティークではありませんが、作者不明の一点物であ、類似作品を発見するのはとても困難な貴重な作品の一つとなっています。
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コンディションも大変良好で、シルバーにはクスミや僅かなキズ、制作上のムラ等は見られますが、使用感を感じさせずダメージの無い良い状態を保っています。