【NAVAJO】ナバホの中でも多くの傑作を残している組織【The Navajo Arts & Crafts Guild】 (NACG)=通称『ナバホギルド』の作品。サンドキャストで成形されたナバホギルドらしいアイテムながら、同組織ではとても珍しいハイグレードターコイズがマウントされたビンテージ/アンティークピンブローチです。
本作にはナバホギルドのホールマークである【Horned Moon】と【NAVAJO】の文字が刻印されており、1950年代頃の作品と思われます。ナバホギルドの作品としては珍しくターコイズがマウントされており、やはり細部には特別な美意識と高い完成度を感じさせる作品となっています。
サンドキャストによる成形で、少し大きめのボリューム感となっており、デザインはサンドキャストの作品ではオーセンティックな造形です。そして、その中央には小さいサイズですが確かな存在感を放つスクエアカットのハイグレードナンバーエイトターコイズがマウントされています。有機的な曲線で構成され、クラシックで重厚な印象のシルバーワークに素晴らしいアクセントとなっており、品位や上質感を与えているようです。
シンプルで素朴なピンブローチながら【NAVAJO GUILD】ナバホギルドらしく根源的な美しさや力強さを持つ作品。ナバホによるインディアンジュエリー創成期の作品を意識したデザイン造形です。
また、サンドキャストによる成形技術は、ナバホジュエリーの古典期から現在に至るまで大きく変わっておらず、その製法やデザインスタイルも長く受け継がれています。しかしながら、現在では多くが同一の『型』を使用した作品となってしまいました。本作は、量産向けにパターン化された『型』によるピースではなく、作者のオリジナリティーと高い技術を感じさせ、裏面の研磨等の仕上げ工程や、細部がヤスリで削り出して作り上げられていることで、厚みがありエッジのしっかりとした造りとなっています。それら、細部のディテールには1960年代以前のサンドキャスト作品に多くみられる上質感を持っており、ナバホギルドの作品の中でも仕上げの丁寧なピースとなっています。
マウントされたターコイズは非常に美しい艶と透明感を持ったオールドナンバーエイトターコイズです。 ブラウン~ブラックのウェブが入り、ディープブルーではありませんが、ナンバーエイトらしい澄んだ水色を湛えハイグレードにグレーディングできる石です。小さなサイズですが、透明感と今なお艶を保ち、宝石としての価値を持った無添加ナチュラルのナンバーエイトターコイズです。
【The Navajo Arts & Crafts Guild】(NACG)※以下ナバホギルドは【The United Indian Trader’s Association】(UITA)等と共にインディアンアートの普及やクオリティーの保全、職人の地位向上等のために現地トレーディングポストや作家たちの手によって組織されました。
中でもナバホギルドは、UITA等に比べナバホの職人主導で組織された団体で、大巨匠であるナバホのシルバースミスであるAmbrose Roanhorseが代表を務め、後進の育成や伝統的な技術の伝承、インディアンジュエリーのさらなる普及などを目的に1941年にギルドとして発足しました。
ナバホギルドによる作品のスタイルは特徴的で、Ambrose Roanhorseの意図が強く働いた影響のためか、インゴットから作られたベースに、クリーンで構築的なスタンプワークをメインとしたデザインと、昔ながらのキャストワークによるピースが多く、どちらも回顧主義的なオールドスタイルでありながら、洗練された美しい作品が多く制作されました。
また、もう一つの特徴はその構成メンバーです。当時から有名で最高の技術を究めた作家が名を連ねています。前述のKenneth Begay、【Mark Chee】マーク・チー、【Austin Wilson】オースティン・ウィルソン、【Allan Kee】アレン・キー、【Ivan Kee】アイバン・キー、【Jack Adakai】ジャック・アダカイ、【Billy Goodluck】ビリー・グッドラック等、さらに、Ambrose Roanhorseの教え子の一人であるホピ族の【Louis Lomay】ルイス・ロメイもナバホギルドのメンバーでした。
さらに特筆すべきは、これだけ有名作家が揃っていながら【NAVAJO GUILD】のジュエリーとして制作されるものは、個人の署名(ホールマーク)が認められていませんでした。そのため共通して、【NAVAJO】の文字と【Horned Moon】と呼ばれるホールマークが刻印されています。
ナバホギルドの代表を務めた【Ambrose Roanhorse】は後進の育成にも熱心な作家で、1930年代からサンタフェのインディアンスクールで彫金技術のクラスを受け持っており、多くの教え子を持っていました。 サードジェネレーションと呼ばれる第3世代の作家ですが、さらに古い年代の伝統を重んじた作品を多く残し、独特の造形美や完成された技術は次世代に絶大な影響を与えた人物です。
また、【The Navajo Arts & Crafts Guild】 (NACG)ナバホギルドのピースは、アメリカ国内では非常に高い知名度を誇っていますが、それに比例せず、現存数がとても少ないことも特徴です。 コレクターのもとには一定数があると思われますが市場に出る個体は少なく、現在発見するのが大変困難になっています。
こちらの作品も前述のホールマーク 【Horned Moon/Horned Sun】と【NAVAJO】の文字が刻印されており、作者個人を特定することはできませんが、非常にナバホギルドらしい重厚で洗練された造形のピンブローチです。
当時、インディアンジュエリー創成期のリバイバル作品制作をメインとしたナバホギルドですが、やはりその完成度や古典を踏襲しながら新しいクリエーションを含んだ作品群は、アンティークよりもクリーンで練り上げられた造形美を持っています。さらに、美しいハイグレードターコイズがマウントされることで、洗練された完成度と現代的な印象がもたらされています。またそれらは、ビンテージインディアンジュエリー特有の武骨でアーシーな雰囲気と、美しくエレガントな印象の双方を与えており、どこか品位のある作品となっています。
そして、クラシックで重厚なデザインと深遠な景色を形成するターコイズの煌めきはフォーマルなシーンでも品格を損なわず、普遍的な造形美はラペルやハット以外にもバッグ等多くのアイテム・スタイルにフィットします。
アンティーク作品において、ジェムクオリティー以上のターコイズがセットされた物は非常に貴重です。洗練されたシルバーワークを含め、アートピース・ウェアラブルアートとしても高く評価でき、非常にコレクタブルな作品の一つとなっています。
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コンディションも大変良好です。シルバーのクスミは見られますが、ターコイズを含め使用感少なく、ダメージのない良好な状態を保っています。