【NAVAJO】ナバホのアンティークジュエリーで、【United Indian Trader's Association】(UITA)に参加していたトレーダーの中でも『UITA22』 = 【Dean Kirk of Manuelito】のピース。
伝統的なスタイルのベースにとても珍しいBow(リボン)モチーフのパッチワーク/アップリケと大変美しいナンバー8ターコイズが施されたアンティークながら珍しいディテールとターコイズについてもハイエンドなアンティーク/ビンテージバングルです。
1940年代~50年代製で、おそらくインゴットシルバー(銀塊)から成形されたバンド/地金は、2本のフラットなワイヤーがスプリットシャンクの様に配され、間に挟まれたツイステッドワイヤーと合わせてベースとなっています。そこに、美しいオーバルカットのナンバーエイトターコイズがセットされ、ベゼルにはツイステッドワイヤーが施されています。その両サイドはBow/リボンモチーフの立体的に造形されたパッチワーク/アップリケで装飾され、さらに小さなシェルコンチョが配されることでアンティーク作品らしい表情が作られています。
細かく丁寧なシルバーワークにより、上質感があり心地よい重量感を持っています。また、リボンのモチーフ自体はさらに古い作品でも見られますが、その多くはボタンやピンブローチ、ネックレスのディテールにおいて見られ、こちらの様にバングルに施されたものは他に類を見ない大変珍しいディテールです。立体的なリボンモチーフは そのシルバーワークも高い技術を感じさせ、男性的で無骨な印象の作品ながら、ドレスや少しフォーマルなスタイルにもフィットする表情を作り上げています。
さらに、リボンをはじめサイド~ターミナルにかけてはナバホらしいスタンプワークが施され、ターミナルは小さなタブパーツで仕上げられています。
セットされたターコイズは【Old Number Eight Turquoise】オールドナンバーエイトターコイズです。澄んだ水色に細かなブラウンウェブの入る石で、強い艶を持つこちらの石は、ジェムグレード以上にグレーディングできるクオリティーのブラウンウェブナンバーエイトターコイズ。 ナンバーエイトらしい表情と、高い硬度を感じさせる透明感/艶を持つ宝石としての価値を持ったターコイズです。
【Number Eight Turquoise】ナンバーエイト鉱山は、ネバダ州の鉱山で1920年代中頃~60年年代頃まで採掘されていました。特に1930年代中頃に採掘された石は素晴らしいクオリティーを持っていたとされています。採掘されるターコイズは、バリエーションが豊かな鉱山の一つですが、その多くは澄んだ水色を持ち、ハイグレードにグレーディングされるものは北米産ターコイズの中でも最も変色や劣化しにくいとされ、高い硬度を誇っています。現在はその多くがコレクターや有力なトレーダーに収蔵され、市場に出ること自体が少なくなってしまいました。
こちらのオールドナンバーエイトのも数十年を経過してなお変色せずにこの美しい青さ保ち、ナンバーエイト独特の魅力を湛えています。
【the United Indian Trader's Association】(以下UITA)は1931年に組織され、C. G. WallaceやGARDEN OF THE GODS TRADING POST、Tobe Turpen等をはじめ、最終的には75のトレーディングポスト/インディアンアートトレーダーが加盟する組織となりました。
UITAが組織された目的は、BELL TRADING POSTやMaisel's等のManufacturersと呼ばれるインディアン工芸品の分業化や量産化を推し進めたメーカー(マスプロ)に対抗するためで、伝統的な製法や材料、一つの作品を一人のシルバースミスが全行程を通して制作するという体制等を守ることなどを規定し、上記のマスプロ品との差別化を計ることでした。
当時、サウスウエスト地方の観光の隆盛に伴ってスーベニア産業もその需要に応えるため、多くのショップやメーカーが生まれました。それらは元々トレーディングポストとして運営されていましたが、やがて多くのインディアンを雇い入れるArrow NoveltyやMaisel's等のメーカーも創業されることになります。初期の1910年代~20年代までは、双方の作品には製法やデザインに大きな差がありませんでした。 しかし、後者のメーカーは1930年代に入ると工房で多くのインディアンに同時制作させることにより分業化や機械化をはじめ、少しずつ伝統的な製法や作品の味わいは失われていきました。
また、それらのメーカーの生産する作品の多くはクリエイティブな作家を要するトレーディングポストで生まれた作品の模倣も多く、NAVAJO GUILDの作品やGARDEN OF THE GODS TRADING POSTに所属したAwa Tsirehのデザイン、VAUGHN'S Indian StoreやJulius Gans Southwestern Arts and Craftsの作品等は多くの模倣品が作られています。
こちらの作品もおそらく1940年代~50年代に作られたピースで、内側のホールマーク【UITA22】の末尾の数字『22』から、【Dean Kirk of Manuelito】製であることを特定することができます。 UITAではそれぞれのトレーダー(ショップ)ごとにナンバーを割り振っており、いくつかのナンバーはそのトレーダーが判明していますが、いまだ不明となっているナンバーも多く存在しています。
Dean Kirk of Manuelitoの作品は、ツーリストスタイルのピンブローチ等も多く見られますが、プエブロの作品を想起させるシンプルなブレスレット等、多岐にわたる作品が見つかっています。多くのシルバースミスが所属していたと推測され、その作者を特定することは出来ませんが、こちらの作品の様に素晴らしいクオリティーを持つ作品が多く残されており、UITAの刻印が入ると云うことは、その製法や材料等について厳しい条件をクリアしていることを表しています。
とても独創的なディテールを持ち、センスの良いデザインと手の込んだシルバーワークは、古い作品ながら非常に完成度の高い作品。 素晴らしい奥行きを持ち、クラシックなイメージも持つ造形はビンテージスタイルに大変馴染の良い表情を持っています。
また、黒っぽいシルバーの表情などによるアンティークインディアンジュエリー独特の質感と、素晴らしいクオリティーのターコイズや丁寧なシルバーワークやにより洗練されたエレガントな印象も感じさせるバングルです。 希少性・史料価値も高いアンティークジュエリー。
着用画像はこちら↓
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コンディションもビンテージとしては大変良好です。シルバーにクスミは見られますが、ターコイズも含め大変良い状態を保っています。
ターコイズは天然石のため、カットされた時からの僅かな凹凸や母石のヌケが見られます。