【NAVAJO】ナバホのアンティークジュエリーで、1930年代~1950年代当時、多くのインディアン居留地が点在するアメリカ中西部でインディアンクラフト等を扱うトレーダー(トレーディングポスト)によって組織された【United Indian Trader's Association】(UITA)に参加していたことを表す『UITA10』のホールマークを持つ作品。カウ/牛?の様なシェイプがキャッチーなトップのアンティーク/ビンテージネックレスです。
こちらの作品も1930年代~40年代に作られたピースで、【UITA10】の末尾の数字『10』から、Shonto(アリゾナ州北部の町)にあったトレーディングポストと推測されます。UITAでは、それぞれのトレーダー(ショップ)ごとにナンバーを割り振っており、いくつかのナンバーはそのトレーダーが判明していますが、ほとんどの資料は火災により焼失しており、いまだ不明となっているナンバーも多く存在し、こちらの作品に刻まれる『10』も明確になっていないナンバーの一つです。
また、当時のトレーディングポストにはナバホをはじめ沢山の部族のシルバースミスが作品を供給していたため、こちらのようなUITAの作品では作者の部族を断定することは出来ませんが、造形スタイルやトレーディングポストの所在地である程度推測することが出来、こちらの作品はナバホのシルバースミスによる作品と思われます。
キャッチーな印象のアニマルシェイプは、カウ/牛に見えますが角が無く、馬やロバとしては、首や尻尾が短すぎると思います。子牛?豚?動物は特定できませんがアニマルモチーフであり、そのシェイプはハンドカットで造形されています。顔や尾などはスタンプワークで細部が描かれ、センターにはスタンプワークと共にターコイズが施されています。ベースのシルバーは薄く仕上げられていますが、インゴット(銀塊)からハンマーで成形されています。また、ポップなデザインや軽く仕上げられた造形は『ツーリストジュエリー』と呼ばれる観光客向けに制作された作品ですが、量産されたピースではなく全てハンドメイドにより作られた味わい深い作品です。
付属のシルバーチェーンは新しいものですが、しっかりとしたシルバー製チェーンで、独自にアンティーク加工を施しており、ビンテージ作品によく馴染む表情になっております。
【the United Indian Trader's Association】(以下UITA)は1931年に組織され、C. G. WallaceやGARDEN OF THE GODS TRADING POST、Tobe Turpen等をはじめ、最終的には75のトレーディングポスト/インディアンアートトレーダーが加盟する組織となりました。
UITAが組織された目的は、BELL TRADING POSTやMaisel's等のManufacturersと呼ばれるインディアン工芸品の分業化や量産化を推し進めたメーカー(マスプロ)に対抗するためで、伝統的な製法や材料、一つの作品を一人のシルバースミスが全行程を通して制作するという体制等を守ることなどを規定し、上記のマスプロ品との差別化を計ることでした。
当時、サウスウエスト地方の観光の隆盛に伴ってスーベニア産業もその需要に応えるため、多くのショップやメーカーが生まれました。それらは元々トレーディングポストとして運営されていましたが、やがて多くのインディアンを雇い入れるArrow NoveltyやMaisel's等のメーカーも創業されることになります。初期の1910年代~20年代までは、双方の作品には製法やデザインに大きな差がありませんでした。 しかし、後者のメーカーは1930年代に入ると工房で多くのインディアンに同時制作させることにより分業化や機械化をはじめ、少しずつ伝統的な製法や作品の味わいは失われていきました。
また、それらのメーカーの生産する作品の多くはクリエイティブな作家を要するトレーディングポストで生まれた作品の模倣も多く、NAVAJO GUILDの作品やGARDEN OF THE GODS TRADING POSTに所属したAwa Tsirehのデザイン、VAUGHN'S Indian StoreやJulius Gans Southwestern Arts and Craftsの作品等は多くの模倣品が作られています。
前述の通りUITAの『10』は、アリゾナ州北部のショントにあったトレーディングポストであったことが推測されていますが、明確になっていません。しかし、同じUITA10のホールマークを持つ作品は幾つか発見されており、アニマルモチーフのペンダントトップが多い様に感じられます。
また、UITAの刻印が入ると云うことは、その製法や材料等について厳しい条件をクリアしていることを表しています。
こちらの作品もモチーフはツーリストジュエリーらしいアニマルモチーフであり、キャッチーな印象ですが、荒々しくも温かみのあるシルバーワークと造形で、量産されたピースにはない味わいと面白さを持っています。
キャッチーで遊び心のあるデザインは性別を問わずお使いいただけ、アンティークインディアンジュエリー特有の質感がありますので、男性のスタイリングにも良い『ギャップ』と奥行きを与えてくれると思います。
また、現在も明確になっていない【UITA 10】の刻印された作品であり、アンティーク作品としてインディアンジュエリーの歴史的な資料価値も高いピースです。
着用画像はこちら↓
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コンディションはシルバーに僅かなクスミや制作時のムラは見られますが、使用感は少なく良好。ターコイズも良い状態を保っています。