【NAVAJO】ナバホのアンティークジュエリー、内側のホールマークから【United Indian Trader's Association】(UITA)に参加していたトレーダー(トレーディングポスト)の販売した作品。スノーマン/雪ダルマをモチーフとしたデザインが施されたスプーンベースの貴重なアンティーク/ビンテージのピンブローチです。
UITAの末尾に配されたナンバー『3』は、詳細不明のナンバーとなっていますが、 現在のところ【Toadlena Trading Post】トードリーナトレーディングポスト/【Two Grey Hills Trading Post】トゥーグレイヒルズトレーディングポストで作られたと紹介される事の多いナンバーです。
また、本作は小さなスプーンにピンニードルを備えることでピンブローチとなっていますが、ニードルパーツに隠されたUITA3の刻印を少しズレた場所に打ち直している事から、後年になってリフォームされた作品ではなく、元々の作者がピンブローチとして制作した物と判断可能です。
本作は『UITA3』のホールマークなどから、1940年代~1950年代頃のピースと思われ、おそらくインゴットシルバー(銀塊)からハンマーワークによって成形されたスプーンがベースとなっています。
その持ち手の先端(柄尻)丁寧なカッティングワークによって小さなスノーマン/雪だるまが切り出されています。
さらに大胆なスタンプワークが刻まれる事によってスノーマンの細部が描き出されており、それらのスタンプ(鏨)ツールもアンティーク作品特有の高いクオリティを誇るスタンプが使用されています。
とても愛らしいスノーマンが魅力的で、スプーンそのものがピンブローチとなったユニークな作品。季節感があり以外に色々なアイテムに馴染みやすいピンブローチとなっています。
本作のようなインディアンメイドのスプーンは、1880年代から作られている伝統的な工芸品であり【Tourist Jewelry】ツーリストジュエリーや【Fred Harvey Style】フレッド・ハービースタイルと呼ばれる20世紀前半頃にアメリカ中西部の観光客向けに制作されたスーベニアアイテムの一つとも言えます。
また、それらは非常に多くのバリエーションが存在し、ツーリストジュエリーにも見られるキャッチーなモチーフが施された記念品として作られた作品が多く見つかっていますが、実用性を重視したマドラーやフォーク等のカトラリー全般、さらにはサラダセットからボウル等の多様なテーブルウエアが作られました。中にはターコイズがセットされたものやサンダーバードショップで作られた著名作家による作品も残されています。
【the United Indian Trader's Association】(以下UITA)は1931年に組織され、C. G. WallaceやGARDEN OF THE GODS TRADING POST、Tobe Turpen等をはじめ、最終的には75のトレーディングポスト/インディアンアートトレーダーが加盟する組織となりました。
UITAが組織された目的は、BELL TRADING POSTやMaisel's等のManufacturersと呼ばれるインディアン工芸品の分業化や量産化を推し進めたメーカー(マスプロ)に対抗するためで、伝統的な製法や材料、一つの作品を一人のシルバースミスが全行程を通して制作するという体制等を守ることなどを規定し、上記のマスプロ品との差別化を計ることでした。
当時、サウスウエスト地方の観光の隆盛に伴ってスーベニア産業もその需要に応えるため、多くのショップやメーカーが生まれました。それらは元々トレーディングポストとして運営されていましたが、やがて多くのインディアンを雇い入れるMaisel'sやBell等のメーカーも創業されることになります。
初期の1910年代~20年代までは、双方の作品には製法やデザインに大きな差がありませんでした。 しかし、後者のメーカーは1930年代に入ると工房で多くのインディアンに同時制作させることにより分業化や機械化をはじめ、少しずつ伝統的な製法や作品の味わいは失われていきました。
また、それらのメーカーの生産する作品の多くはクリエイティブな作家を要するトレーディングポストで生まれた作品の模倣も多く、NAVAJO GUILDの作品やGARDEN OF THE GODS TRADING POSTに所属したAwa Tsirehのデザイン、VAUGHN'S Indian Storeの作品等は多くの模倣品が作られています。
特にこれらの模倣作品はピンブローチが多く、UITAの作品はブレスレットやコンチョベルト等すべてのアイテムに見つけることが出来ますが、ピンブローチに比較的多く刻印されている傾向があるのは、模倣品との明確な区別を促すためだったのではないかと推測されます。
また、UITAではそれぞれのトレーダー(ショップ)ごとにナンバーを割り振っており、『UITA』の末尾にそれぞれのナンバーが刻印されています。それらの内、いくつかのナンバーはそのトレーダーが判明していますが、いまだ不明となっているナンバーも多く存在しています。
『1』 = 【Gallup Mercantile】 ギャラップ マーカンタイル
『2』 = 【C. G. Wallace INDIAN TRADER】C.G.ウォレスインディアントレーダー
『12』 = 【Packards Indian Trading】パッカーズインディアントレーディング
『21』 = 【SOUTHWEST ARTS&CRAFTS/Ganscraft】サウスウエスト アーツアンドクラフト
等々・・・
本作の内側のホールマーク【UITA3】の末尾に施された数字『3』は、明確なトレーダー(取り扱いショップ)が判明していない番号の一つです。
書籍等では前述の通り、【Toadlena Trading Post】トードリーナトレーディングポスト/【Two Grey Hills Trading Post】トゥーグレイヒルズトレーディングポストに割り振られたナンバーであることが紹介されていますが、UITAに関する資料はそのほとんどが焼失しており、いくつかのナンバーはそのトレーダーが判明していますが、いまだ不明となっているナンバーも多く存在しています。
【Toadlena Trading Post】トードリーナトレーディングポスト/【Two Grey Hills Trading Post】トゥーグレイヒルズトレーディングポストは、1897年を起源とする非常に長い歴史を持つヒストリックトレーディングポストの一つです。
ニューメキシコ州北西部のトードリーナに位置しToadlena Trading PostとTwo Grey Hills Trading Postはそれぞれ別々のショップですが、とても近い距離に存在し互いに協力して運営されました。
Toadlena Trading Postの方は1909年に日用品からハードウェア、インディアン工芸品等を扱うショップとして創業しており、何度か経営者が変わりながら現在もToadlena Weaving Museumという素晴らしいミュージアムと共に運営されています。
またこの二つのトレーダーの功績は、ナバホラグの中でも織りの美しさに拘り20世紀最高の質を持つナバホラグとされるトゥーグレイヒルスタイルの織物を生み出し、ナバホラグに新しい一面をもたらしたことです。
色彩やパターンの美しさが強調されてきたナバホラグに、織りの正確さや上質な仕上がりを重視したラグを、付近に住むナバホのウーバーと協力・研究して誕生させた歴史を持っています。
【Arrow/Arrow Head】アロー/アローヘッドは、 インディアンジュエリーにおける最古のモチーフの一つで、プロテクト(お守り)を意味しています。
【Ingot Silver】インゴットシルバー(銀塊)からの成形は、アンティークインディアンジュエリーにおいて非常に重要なファクターですが、銀含有率/品位とは関係なく、ジュエリーの製法技術を表します。
現在制作されている作品の多くは、材料として市販されているシルバープレート(銀板/ゲージ)を加工することでジュエリーとして成形されていますが、インゴットから成形する製法では一度溶かしたシルバーを、鍛冶仕事に近い方法であるハンマーやローラーで叩き伸ばすことでジュエリーとして成形していきます。
最終的にはどちらもプレートやバーの形態になるため、大きな差は無いように思われますが、インゴットから成形されたシルバーの肌は、硬くなめらかで鈍い光を持っています。それにより生み出されるプリミティブで武骨な作品の表情は、やはりアンティークインディアンジュエリーの大きな魅力です。
また、1930年代にはシルバープレートが登場しますが、当時シルバープレートを用いて制作されたジュエリーは政府によりインディアンクラフトとして認定されず、グランドキャニオンなどの国立公園内で販売できなくなった記録も残っています。
本作もインゴットシルバーから成形された硬い質感や古色の雰囲気、そして武骨なスタンプワークにより、存在感のあるスプーンデザインながら、ビンテージスタイルをはじめ多くのスタイリングに大変馴染みが良く、色々なコーディネイトに溶け込む汎用性を有しています。
またこちらのようなピンはアウターのアクセントとして、ラペルや襟等にもフィットしますし、ハット等のワンポイントにも使い勝手の良いピースで、プリミティブでアンティーク作品の迫力を備えた本作の雰囲気は、チープな印象を作らず大人向けのアイテムとなっています。
ネイティブアメリカンによるスプーン/銀の匙は、同時期の作品において散見されるアイテムとなっていますが、本作の様に小さ目のサイズ感でピンブローチとして制作されたピースは非常に貴重でコレクタブルです。
また、明確な背景を確認することができる、インディアンジュエリーの歴史においても重要なピースの一つであり、オールハンドメイドで作り上げられた味わいを体感できる大変コレクタブルなピンブローチとなっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションも大変良好です。
シルバーのクスミやハンドメイド特有の制作上のムラが確認できますが、ダメージの無いとても良好な状態を保っています。
ニードルパーツの先端に少し歪みが有りますが、これはニードルのキャッチパーツに収納する為に作者が施したディテールかと思われます。