アンティークの【Navajo Rug】ナバホラグを配した巾着タイプのオリジナルショルダーバッグ。アンティークラグを使用する事で、一点毎に異なった表情を持った作品となっています。
表にはアンティークナバホラグ、裏面はイタリアンヌメのシュリンクレザーを使用し、サイドには毛足が特徴的なヘアオンカウハイドを用いる事で、とても表情豊かなバッグに仕上がっています。
口を絞る紐はヌメ革の丸紐となっており、そのストッパーはコンチョボタンをイメージしたシンプルな丸いパーツが丁寧な手縫いによって形作られています。
また、そのストッパーにより簡単に開閉が可能で高い機能性も備えています。
ショルダーロープは綿100%の国産ロープを使用。長いロープの結び目は、とても簡単に移動させることが可能で、約70㎝~約140㎝まで容易に長さを調整できます。ロープの長さを変えることで、持ち方やスタイリングも変化させることが可能であり、性別やスタイルを問わずお使いいただけるバッグとなっています。
【Navajo Rug】ナバホラグは、ディネ/ナバホ族の伝統工芸品であり、彼らの価値観・美意識や思想、そして長きにわたる逆境を乗り越えた誇り高い精神が込められた毛織物です。
ファミリー毎に飼育する羊の毛を刈り、梳かし、原毛を紡いで糸に加工。そして、その糸を染色しラグやブランケットとして織り上げるまでの全工程を一人の女性が担う、プリミティブで根源的な強さを持った実用品であり美術品でもあります。
日本人にも馴染みのある横型(水平型)の織り機ではなく、縦型(垂直型)のフレームを使う大変原始的な技術が300年以上守られており、1800年代後半に大きく発展するまでは屋外の木の枝から縦糸を吊るし、そこに横糸を通すことで織っていたそうです。
その発祥には諸説ありますが、西暦1700年前後から始まったとされており、『スパイダーウーマン』がナバホ族に伝えたとされています。
おそらくは他部族(プエブロインディアン)の原始的な織物(ブランケット)に、スペイン人が入植と同時に持ち込んだ技術やパターン等が取り込まれる事で発展したと思われ、スパイダーウーマンとはプエブロの中でも織物の技術を備えた女性だったのではないかと推測されます。
『チーフブランケット』と呼ばれる織物(ブランケット)を起源とし、馬とサドル(鞍)の間に馬の肌を守る目的で使用された『サドルブランケット』、そして敷物/絨毯としての『ラグ』や壁掛けである『タペストリー』が生み出されて行きます。
それは、1800年代後半に鉄道が整備された事に伴い、列車によって外部から多くの交易品が流入し、安価で上質なブランケットの普及によって大変高価であったチーフブランケットの需要が激減した事に起因しています。同時に鉄道は多くの白人観光客をもたらし、彼らはナバホ族の美しい織物を求めます。その需要に応えるためにチーフブランケットは、ラグやタペストリーへと生まれ変わっていきました。
さらに、1800年代末にかけてJ.B.ムーアやロレンゾ・ハッベルを始めとする白人のトレーダーによって世界中の美術様式が取り入れられ、それらの影響を受けることで短期間に大きく進化しました。
1900年代頃には『ナバホラグ』として認知され、全米でも人気の高い美術工芸品の一つとなります。
過渡期となる1880年代頃~1910年代頃に、チーフブランケットからナバホラグへ進化していく過程で生まれた織物は、『トランジショナルブランケット/移行期の織物』と呼ばれます。
それらは、ブランケットであった名残りから現代のラグよりも柔らかく織り上げられており、多様で美しいパターンや様々なサイズが混在し、現代においても非常に高い人気を誇ります。
また、味わい深く奥行きのある色彩もナバホラグの大きな魅力となっていますが、ナチュラルホワイトやダークブラウン(ブラック)、グレーについては羊の毛色をそのまま生かしている為に無染色です。
白い羊をメインに少しの黒い羊を飼育しており、原毛の時点でその2色を混合して紡ぐことによって独特な杢グレーの毛糸を生み出しています。
上記の基本的な3色以外の多くの色彩は、植物等から採取された天然染料による『Vegetable Dye/ベジタブルダイ』(草木染)によって染色されています。
ただし1800年代後半には赤いアニリン染料(合成染料)が採用され、その美しい『赤』をメインとしたパターンが非常に高く評価される事により、ナバホラグ自体の需要を大きく高めました。
※コチニール色素による赤の染色は、コチニールカイガラムシという小さな虫を原料とした美しい発色の「赤」を生み出しますが、メキシコやペルー原産の虫であり、ナバホ族がコチニールを用いた染色をすることは殆どありません。1800年代後半頃のチーフブランケットに用いられている赤い毛糸は、スペインやメキシコでコチニール等を用いて染色され織り上げられた布(bayeta)を解体して繊維を抽出、撚りなおすことによって毛糸を得ていました。
パターン(柄)にもナバホ族独特の特徴を持ち、アイダズラー(目くらまし)やバンデッド(縞模様)、卍やスター、ピクトリアル(写実的な柄)等、非常に多くのパターンが見られます。また、そのパターンの様式を大別する際には『クリスタル』や『ガナード』、『トゥーグレイヒルズ』等、主に地域に密着したトレーディングポスト毎の特徴を用いてカテゴライズされています。その為『リージョナルラグ』(地域の織物)と呼ばれる事もあります。
ただし、細かな文様の意味合いについてはファミリー単位で受け継がれており、細かな製法は秘匿されている事も多く、門外不出となっている為に多くは伝わっていません。
唯一、クリスタルから生まれた『ストームパターン』については、その特徴的なパターンの持つ意味合いが伝わっています。
長方形に織られたラグの四隅にナバホネーションを囲む様に存在する4つの神聖な山を表すエレメントが配され、そこからライトニング(稲妻)がナバホネーションを象徴する中央部分につながり、織り手に幸運や精霊をもたらす事を意味しています。
さらに、それらの山の間にはダイヤモンド型にMを合わせた様な文様が構成されており、それは水資源に関連したモチーフであるウォーターバグ(水生昆虫)を象ったデザインです。(前述のスパイダーウーマンを示しているという説もあり)
その名の通り、ストーム/嵐と関連したパターンでもあり、砂漠の民にとって最も重要な資源である雨や水の恵みも象徴しています。
例外として、上記の地名と同じように『ジャーマンタウン』と呼ばれる1870年代後半~1900年頃までにのみ作られた種がありますが、これはナバホネイションに存在する地名ではなく、アメリカの国策によってペンシルべニア州においてドイツ系移民の町(ジャーマンタウン)が大規模な紡績の町として発展、その上質な糸を使用したナバホラグが現在ではジャーマンタウンと呼ばれています。
既製の糸(コマーシャルヤーン)特有の均一な細さと光沢を持ち、他のナバホラグには無い極彩色の組み合わせが大変美しい為、多くのコレクターを持つジャンルとなっています。
ただし、ジャーマンタウンでは縦糸にコットンが採用され、オールウールの織物よりも少し強度が劣ります。その為かは不明ですが、1900年代にはナバホの織物からジャーマンタウンで紡績された糸は姿を消し、原毛からラグまでの全てを織り手が担う伝統的な製法に戻りました。
現在、その殆どが染色された既製の毛糸を使用するようになりましたが、それら既製の糸の品質も上記のジャーマンタウンのようなクオリティを有しておらず、織りの美しさや緻密さは大きく向上していながら、ナバホラグ自体の質は低下しているようにも感じられます。
今日ではその担い手も大変少なく、後世には殆ど残らない工芸品となってしまう事も懸念されています。
ナバホ族の伝承では、ラグを織る事は【子孫を残す/子供を産む事】の象徴ともされ、一つ一つのパターンに意味や願いがこめられ、時々長期の休憩もはさみながら時間をかけて丁寧に織られています。
大きいフロアラグの場合には、一枚織り上げる為に年単位の時間を要し、時間対効果を度外視した伝統工芸品です。
惜しみない労力を注ぎ、子供を生み出す様な深い愛情が込められることで、それぞれに特別な美しさを持った織物となっています。
こちらで使用されているラグは、アイダズラーを含むパターンの1940年代~1950年代頃に織られたナバホラグとなっています。
既製の糸ではなく、ハンドスパン(手紡ぎ)された糸を使用しており、赤はアニリンによる染色、ナチュラルホワイトとブラウンは羊の毛色を活かした無染色の糸です。
毛玉のできないフラットな質感や僅かな色ムラが大変魅力的で、左右対称に近い柄の取り方により、クラシックで落ち着いた印象に仕上がっています。
ナチュラルな素材や控えめなサイズ感により、性別やスタイルを問わず取り入れて頂きやすい印象です。
また、オールレザーのバッグと異なりピンブローチによる装飾が可能であり、それを選び組み合わせる楽しさもあるバッグです。
※画像で装着しているピンブローチは付属しておりません。
アンティーク工芸品を気軽に取り入れる事を可能にするバッグであり、作り手の思いを宿し日常の生活に歴史の奥行やエスニシティな魅力を与えてくれるバッグとなっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
※天然素材に由来する特徴として、革のシボ感、ロープの染色具合や色ムラ、細かなキズや僅かな個体差等はございます。