【HOPI】ホピか【NAVAJO】ナバホの作品で、シールリング/印台型のクラシックでシンプルな造形をベースとし、フェイスにはオーバーレイによってエルク(鹿)モチーフが描き出されたアンティーク/ビンテージリング。1940年代以前のクラスリング(カレッジリング)にも近いフォルムは、古代のジュエリーの様なプリミティブな風格と、モチーフや細部から漂うビンテージインディアンジュエリー特有の魅力も帯びた作品となっています。
1950年代前後の作品と思われ、具体的なモチーフがあしらわれたインディアンジュエリーにおけるオーバーレイ技術初期のピースのため、ホピによるものかナバホのシルバースミスが制作した作品か断言できませんが、アニマルモチーフ等から、おそらくホピのシルバースミスによって制作された作品と推測されます
ある程度キャストで成形されたと推測されるシャンク/地金は、『シールリング』と呼ばれる印台型をベースに、フェイスのみオーバーレイによって構成されており、サイドには削る技術であるファイルワークやスタンプワークによって、彫りが深く立体的なシルバーワークが施されています。
オーバーレイによって描き出されたエルクのデザインは、キャッチーで独特のリラックス感がありますが、重厚なシルバーワークやクラシックなリングのシェイプなどはチープな印象を与えず、アンティークインディアンジュエリー独特の雰囲気と存在感を生み出しているようです。さらに、現在制作されているホピジュエリーにおいて、抽象化/図案化されたオーバーレイの紋様スタイルが持つようなエッジーで硬い印象はなく、ポップでアーシーなリングに仕上がっています。
【Overlay】オーバーレイと言う技法は、シルバーの板に描いたデザインを切り抜き、下地のシルバーの上に貼り付けることで立体的に絵柄を浮き出させる技法です。スタンプワークやカッティングと組み合わされた作品も見られ、完成度を高められたオーバーレイ技法を用いた美しいホピのジュエリーは、現代に至るまでに多くの傑作を残しています。
1930年代にホピの大家【Paul Saufkie】ポール・スフキー(1904-1998)によって生み出された技術で、1940年代~1950年代に【Harry Sakyesva】ハリー・サキイェスヴァ(1922-1969?)や【Allen Pooyouma】アレン・プーユウマ(1922-2014)、【Victor Coochwytewa】ヴィクター・クーチュワイテワ(1922-2011)等により、ホピの代表的なスタイルの一つとして定着させられました。
オーバーレイ技術の定着以前にも、オーバーレイと近い造形を生み出すような大きく大胆で細かな刻みを持たないスタンプ(鏨)がホピの作家によって制作されていました。しかし、スタンプ(刻印)というデザインやサイズが固定されてしまう技術から解放し、もっと自由な図案を具現化できる技術・技法として生み出されたのではないかと考えられます。
本作は、オーバーレイ技法にとっての黎明期に作られた作品であり、現代のオーバーレイ作品に見られるような下地となるシルバーへのテクスチャー(スタンプやエングレイビングによる表面加工)も施されていません。それにより、現代の作品よりも素朴でクリーンな印象となっているようです。
また、比較的希少なメンズサイズのピースで、オーセンティックなシールリングのシェイプはクラシックなイメージを持っていますが、描かれているポップなイメージのエルクは、男性向けのアクセサリーに重要な要素である『ギャップ』と『遊び心』を与えてくれるアイテムであり、さり気なくスタイルに奥行きをもたらすことが出来るリング。ビンテージ感のある渋い質感やシルバーのみで構成された素朴な表情もナチュラルで使いやすい作品です。
また、ハンドメイドによる独特のリラックス感を持ったリングであり、遊び心を感じるプエブロの動物等の自然モチーフの図案化は、日本人の価値観にも通じる美意識が感じられます。
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コンディションも良好です。シルバーには多少のクスミやハンドメイド作品特有の制作時のムラ、細かなキズ等が見られますが、ダメージは無く良い状態を保っています。また、過去のサイズ直しの形跡が確認できますが、強度には不安の無いコンディションです。