【ZUNI】ズニのビンテージジュエリー、細かなワイヤーワークとターコイズで構成されたハンドメイドジュエリーで、房や集合体という意味を持つ『クラスター』と呼ばれる伝統的な造形スタイルをベースに、ターコイズを放射状/バースト状に配したダイヤモンドシェイプのアンティーク/ビンテージピンブローチです。
ズニジュエリーとしては長く作られている伝統的なスタイルを持ったピースで、その製作時期は1960年代~1980年代頃まで可能性が考えられますが、古い作品と同様にすべての工程がハンドメイドにより丁寧に作られた作品です。
『レインドロップ』とも呼ばれるとても小さなシルバーボールを中心にバースト(放射状)にターコイズが施されています。それらのターコイズ一つ一つを囲むように、ティアドロップシェイプのシルバーワイヤーが施されることで、全体のシェイプが菱形に構成され、巧みなデザインワークにより、放射状の広がりは星型の様な印象に仕上げられています。また、それらのシルバーワイヤーがシャドーボックスに近い陰影を生み出しており、作品に奥行きを与え、ターコイズを強調する効果をもたらしているようです。
このようなワイヤーワークによって作る影の中心に小さな『スネークアイ』とも呼ばれるラウンドカットターコイズをセットする造形は、ズニジュエリーにおいて古くから作られている伝統的なスタイルの一つで、繊細で緻密なシルバーワークによって生み出されるディテールであり、ナバホジュエリーとは違った表情を持つ作品群となっています。
さらに、それぞれの先端に小さなシルバードロップが配されることで、広がりと華やかさを備えたクラスターデザインが完成しています。また、それらターコイズを留めるベゼル(覆輪)には、刻みのあるノッチドベゼルが採用されており、それらのディテールやターコイズの質などから制作された年代を推定しています。
こちらのようなクラスターデザインは、1930年代以前からみられる伝統的なスタイルの一つで、バースト状に石を配置することによりターコイズの美しさを際立たせ、大きな石の作品以上にターコイズの存在感を重視した造形と言えます。 初期の作品においては、ナバホ・ズニ共に差異の少ない比較的大きくカットされた石によるクラスターデザインの作品を制作していましたが、1950年代以降には細かな石のカットなどを得意とするズニの作家たちにより、ストーンインレイ等と共にこちらのようなスタイルも、ズニを代表する造形として認知されることになりました。現代においては現地に住むインディアンの人々は圧倒的にクラスターデザインを好んでいるようです。
【Shadowbox】シャドーボックスは、1930年代の後半に確立された技法で、1960年代~1970年代に多く見られた造形です。主にターコイズの外側に空洞を作ることによって深い黒(影)が現れるのが特徴で、それによりターコイズの美しい色や輝きをより際立たせる技法です。巨匠【Kenneth Begay】ケネス・ビゲイ(1913?-1977)も好んだ技法/スタイルの一つであり、現代まで受け継がれています。
本作ではシャドーボックスの様な深さによる強さのある影は作られていませんが、緻密なワイヤーワークによってそれぞれの石の周辺に影を生み出しており、やはりターコイズの持つ美しさを際立たせています。
また、すべての工程がハンドメイドによって仕上げられており、左右で非対称な部分等には手仕事特有のムラや粗暴な印象もありますが、繊細で緻密な仕事はそれらのムラを含め柔らかな完成度を見せているようです。
細かなシルバーワークと規則的に配されたターコイズが作り出す複雑な表情は、ビンテージズニジュエリー独特の美しさを生み出しています。またそれらの可憐な雰囲気は、女性に向いた印象を持っていますが、ハンドメイドの質感やシェリフのバッジの様なエンブレムにも似たシェイプにより男性にもフィットする重厚感を持っています。
そして、バースト状(放射状)に配置されたターコイズは、パワフルで楽しい雰囲気も有しており、多くのスタイルにおいて良いアクセントになり、カラーやラペル以外にもハット、バッグ等、多くのアイテムと合わせることができると思います。
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コンディションは、全体にシルバーのクスミや過去の磨き跡によるシルバーの色ムラが見られますが目立ったダメージはなく良好な状態です。
ターコイズも石の動きやクラック等のダメージは無く、良いコンディションを保っています。