【NAVAJO】ナバホのビンテージジュエリー、深く澄んだ水色に強いブラック~ブラウンウェブの入る美しいハイグレードローンマウンテンターコイズが9つ羅列された『Row Work/ローワーク』と呼ばれるスタイルの作品。クオリティーの高いシルバーワークを含め、非常に上質でハイエンドなアンティーク/ビンテージバングルです。
1940年代末頃~1950年代に作られた作品と思われ、インゴットシルバー(銀塊)から成形された大変重厚なのトライアングルワイヤー2本に挟まれるようにターコイズがマウントされています。またそのベースとなっているバンドは、上下のトライアングルワイヤーだけでなく、中央に2本のワイヤーを撚り合わせたツイステッドワイヤーをハンマーワークによってフラットなシェイプに成形したワイヤーが配されており、非常に手の込んだ端正なシルバーワークも特徴的な作品です。さらに、トライアングルワイヤーには力強く美しいスタンプワークが刻まれ、ターコイズのベゼル(覆輪)にはそれぞれツイステッドワイヤーが施されています。そして、石と石の間には18個もの小さなシルバードロップ/ボールが配されることでナバホジュエリーらしい奥行きと陰影が与えられているようです。
さらに、ターミナル(バングル両端)部分には、ワイヤー断面に対して垂直方向に小さなシルバーパーツが備えられることで、バンドを構成する3本のワイヤーがしっかりとまとめられています。このようなディテールは、ナバホギルドの代表を務めた【Ambrose Roanhorse】アンブローズ・ローアンホース(1904-1982)によって完成された技術とされ、バングルの摩耗を防ぐ質実剛健なディテールであり、細部まで美意識を感じさせる造りとなっています。
本作のような上下にトライアングルワイヤーを配し、その間に石をマウントする造形スタイルは、インディアンジュエリーの古典期から見られる造形であり、1930年代以降にはナバホの偉大な作家【Fred Peshlakai】 フレッド・ぺシュラカイ(1896-1974)等も多くの類似した作品を残しており、1950年代~1970年代には、こちらも巨匠である【Fred Thompson】フレッド・トンプソン(1921or1922-2002)が多く制作したスタイルです。そして、現代まで長く受け継がれ、現在もコンテンポラリー作家の中でも素晴らしい技術を持つ【Perry Shorty】ペリー・ショーティー等が受け継いでいます。本作の秀逸なシルバーワークは、アンティークを凌ぐクオリティーを持つPerry Shorty氏の作品を上回るような完成度を誇っています。
セットされたターコイズは、大変美しくハイグレードにグレーディングできるオールドローンマウンテンターコイズがセットされています。長い時間を経てなお、高い硬度を感じさせ、美しいブルーを保っています。深みのあるブルーグラデーションに、ブラック・ブラウン・ゴールドなどのウェブが入り、独特の複雑でワイルドな表情を作り上げており、ローンマウンテンらしい色相と特徴を備え、宝石としての煌きを持った石となっています。
9つの石の間で少しばらつきが見られますが、全て現在でも変色/劣化のない美しい色を湛え、宝石としての価値を持った無添加ナチュラルターコイズです。
さらに、ローワークという石が羅列される造形スタイルによって石の質の高さが際立ち、ジュエリーとしての完成度も高めています。
【Lone Mountain Turquoise】 ローンマウンテンターコイズは、ネバダ州のエスメラルダ郡にあり、北米4大ターコイズの一角です。長い歴史のある鉱山であり、1920年代後半から現在の『Lone Mountain』と言う名称になり、現在もわずかながら採掘されている鉱山です。非常に硬度が高く、変色や劣化に強いターコイズとして知られ、採掘される原石はどんなに小さなものでもカットされ、そのほとんどがジュエリーに用いられました。
【Charles Loloma】チャールズ・ロロマや【Mark Chee】マーク・チー等も好んでジュエリーにしたターコイズです。現在ではそのクオリティーと希少性からランダーブルーに次ぐ評価を受けており、こちらのようなサイズもある石はほとんど市場に出てきません。
【Ingot Silver】インゴットシルバー(銀塊)からの成形は、アンティークインディアンジュエリーにおいて非常に重要なファクターですが、銀含有率/品位などの素材とは関係なく、ジュエリーの製法技術を表します。
現在制作されている作品の多くは、材料として市販されているシルバープレート(銀板/ゲージ)を加工することでジュエリーとして成形されていますが、インゴットから成形する製法では一度溶かしたシルバーを、鍛冶仕事に近い方法であるハンマーやローラーで叩き伸ばすことでジュエリーとして成形していきます。最終的にはどちらもプレートやバーの形態になるため、大きな差は無いように思われますが、インゴットから成形されたシルバーの肌は、硬くなめらかで鈍い光を持っています。それにより生み出されるプリミティブで武骨な作品の表情は、やはりアンティークインディアンジュエリーの大きな魅力です。こちらの作品においてターミナル(両端)片側の一部に見られるようなシルバーの重なったような亀裂部分は、ハンマーワークによるインゴット成形作品の特徴です。
また、1930年代にはシルバープレートが登場しますが、当時シルバープレートを用いて制作されたジュエリーは政府によりインディアンクラフトとして認定されず、グランドキャニオンなどの国立公園内で販売できなくなった記録も残っています。
重厚で卓越したシルバーワークと美しいジェムクオリティーターコイズが織りなす造形美や表情は、 素晴らしい奥行きを生み出しており、クラシックな印象と上質感をもたらしています。
また、ターコイズが羅列されたローワークデザインは男性的な強さを感じさせますが、インディアンジュエリー独特の武骨でワイルドな印象とクラシックでエレガントな美しさを併せ持ち、上質感を漂わせる完成度は、クラシックなイメージやはビンテージスタイルにはもちろん、ドレスや少しフォーマルなスタイルにもフィットすると思われます。
本作のようにアンティーク作品において、ジェムクオリティーのターコイズがセットされた作品は非常に貴重であり、質の高いターコイズが作り上げる静かで悠然とした存在感と、それをバックアップする突出した技術力が注がれたシルバーワークは、アートピース・ウェアラブルアートとしても高く評価される作品となっています。
◆着用サンプル画像(10枚)はこちら◆
コンディションも大変良好です。ハンドメイドによる造形ですので僅かな制作上のムラ等が見られますが、使用感少なくターコイズを含め良い状態を保っています。
また、ターコイズにはマトリックス部分に凹凸が見られますが、それらはカットされた時からの天然石が持つ特徴であり、現在もアンティークピースとしては素晴らしい艶を保っています。