【NAVAJO】ナバホのアンティークジュエリー、インゴットシルバー(銀塊)から成形されたバンド/地金をベースに全体に力強くスタンプワークが施された素朴ながら力のある作品。センターには【逆卍】Whirling Logが刻印された貴重なアンティーク/ビンテージバングルです。
1920年代~1930年代製と思われる作品で、インゴットシルバー(銀塊)から成形されたバンドは、日本で『平打ち』と呼ばれるスタイルに近いシェイプに造形されていますが、センター部分が少し広くターミナル(両端)にかけて細くなるシェイプとなっており、このような造形からもハンマーで叩きのばすことで成形されたアンティークピースらしさを感じることができます。また、サイドのエッジ部分には上下にファイルワーク(ヤスリで削る技法)による立体的な刻みが施されており、さり気なくも効果的に奥行きを与えているようです。全体に刻印されたスタンプワークの表情によって複雑でクラシックな表情となっていますが、それほど多くのスタンプ/鏨が用いられているわけではなく、工夫されたスタンプワークの構成によって豊かな表情に仕上げられています。
卍 【スワスティカ】 Whirling Log 【ワーリングログ】について・・・
4つの【L】 『LOVE・LIFE・LUCK・LIGHT』 からなる幸福のシンボル卍(Swastikaスワスティカ)はラッキーシンボルとして当時よく使われていたモチーフです。
しかしながら、1933年のナチスドイツ出現、1939年にWW2開戦によりアメリカにおいては敵国ドイツのハーケンクロイツと同一記号は不吉だとして使われなくなってしまいました。
当時の新聞記事にも残っていますが、インディアンたちにも卍が入った作品の廃棄が求められ、政府機関によって回収されたりしたようです。 その後、大戦中にも多くが廃棄されてしまった歴史があり、現存しているものは大変貴重となりました。
こちらはそのような受難を乗り越えて現存しているものです。
【Ingot Silver】インゴットシルバー(銀塊)からの成形は、アンティークインディアンジュエリーにおいて非常に重要なファクターですが、銀含有率/品位などの素材とは関係なく、ジュエリーの製法技術を表します。
現在制作されている作品の多くは、材料として市販されているシルバープレート(銀板/ゲージ)を加工することでジュエリーとして成形されていますが、インゴットから成形する製法では一度溶かしたシルバーを、鍛冶仕事に近い方法であるハンマーやローラーで圧力をかけて伸ばすことでジュエリーとして成形していきます。最終的にはどちらもプレートやワイヤーの形態になるため、大きな差は無いように思われますが、インゴットから成形されたシルバーの肌は、硬くなめらかで鈍い光を持っています。それにより生み出されるプリミティブで武骨な作品の表情は、やはりアンティークインディアンジュエリーの大きな魅力です。こちらの作品の一部に見られるような僅かにシルバーの重なったような部分は、ハンマーワークによるインゴット成形作品の特徴です。
また、1930年代にはシルバープレートが登場しますが、当時シルバープレートを用いて制作されたジュエリーは政府によりインディアンクラフトとして認定されず、グランドキャニオンなどの国立公園内で販売できなくなった記録も残っています。
シルバーのみで構成され、渋いシルバーの質感は派手さは持っていませんが独特の味わいと量産品にはない雰囲気を持つピース。素朴でシンプル、無駄のない秀逸なデザインは、多くスタイルにもフィットし長年にわたってご愛用いただけると思います。
ナバホの古典的な技術によって構成された作品であり、素朴でナチュラルな印象を受けますが、現代においても秀逸なデザイン/造形や質実剛健なシルバーワークのクオリティは、練り上げられた工芸品としての完成度を持つバングル。とてもコレクタブルで高い史料価値も持った作品です。
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コンディションは、僅かな制作上のムラは見られますが、ダメージ/リペア跡など見られずとても良好なコンディションです。