【NAVAJO】ナバホのアンティークジュエリー、インゴットシルバー(銀塊)から成形されたしっかりとしたバンド/地金をベースに、センターにクロスアローズのアップリケ/パッチワークが施されたアンティーク/ビンテージバングルです。
こちらの作品も、当時アメリカ中西部の観光客向けに国立公園で売られていた【Tourist Jewelry】ツーリストジュエリーと呼ばれるスーベニアアイテムの一つではありますが量産化されたピースではなく、全ての工程が一人のインディアンシルバースミスの手によって仕上げられており、ワイルドで力強い作品になっています。
1920年代~1930年代に作られた作品と思われ、インゴットシルバー(銀塊)から成形されたバンド/地金は硬く重厚な質感で、フロント部分は鏨を使い3本に割り開かれています。このようなディテールは『スプリットバンド』と呼ばれ、ナバホの伝統的なスタイルの一つ。さらに、センターにはクロスアローズが大きくアップリケ/パッチワークが施され、全体にプリミティブなスタンプワークが刻まれることで奥行きのある質感に仕上げられています。
こちらの作品のような時期に制作され、類似したスタイルを持つピースについては、観光客向けに作られたツーリストジュエリーやフレッド・ハービースタイルとして認識されていますが、この作品については、【Manufacturers】メーカーによって量産されたものではなくそれらのデザインソースとなった『オリジナル』作品であり、その希少性と価値を高めています。
1910年代~1940年代当時、サウスウエスト地方の観光の隆盛に伴ってスーベニア産業もその需要に応えるため、多くのショップやメーカーが生まれました。それらは元々トレーディングポストとして運営されていましたが、やがて多くのインディアンを雇い入れる【Maisel's Indian Trading Post】マイセルズ インディアントレーディングポストや、【BELL TRADING POST】ベルトレーディングポスト等も創業されることになります。初期の1910年代~20年代までは、双方の作品には製法やデザインに大きな差がありませんでした。 しかし、後者のメーカーは1930年代に入ると工房で多くのインディアンに同時制作させることにより分業化や機械化をはじめ、少しずつ伝統的な製法や作品の味わいは失われていきました。
また、それらのメーカーの生産する作品の多くはクリエイティブな作家を要するトレーディングポストで生まれた作品の模倣も多く、【Fred Peshlakai】 フレッド・ぺシュラカイ(1896-1974)やGARDEN OF THE GODS TRADING POSTに所属した【Awa Tsireh】アワ・ツィレー(1898-1955)のデザインを作品をはじめ、【NAVAJO GUILD】ナバホギルドの作品や【C. G. Wallace Trading Post】の工房で作られたなどの作品等は多くの模倣品が作られています。そのため当時、模倣品との明確な区別を促すため、UITA【United Indian Trader's Association】などが組織され、上記のような量産化された作品と差別化が図られた歴史もあります。
こちらの作品も、非常に類似するデザインのものが量産化されたピースにおいて流通しており、それらのデザインソースとなった作品の一つです。
【Ingot Silver】インゴットシルバー(銀塊)からの成形は、アンティークインディアンジュエリーにおいて非常に重要なファクターですが、銀含有率/品位などの素材とは関係なく、ジュエリーの製法技術を表します。
現在制作されている作品の多くは、材料として市販されているシルバープレート(銀板/ゲージ)を加工することでジュエリーとして成形されていますが、インゴットから成形する製法では一度溶かしたシルバーを、鍛冶仕事に近い方法であるハンマーやローラーで叩き伸ばすことでジュエリーとして成形していきます。最終的にはどちらもプレートやバーの形態になるため、大きな差は無いように思われますが、インゴットから成形されたシルバーの肌は、硬くなめらかで鈍い光を持っています。それにより生み出されるプリミティブで武骨な作品の表情は、やはりアンティークインディアンジュエリーの大きな魅力です。
また、1930年代にはシルバープレートが登場しますが、当時シルバープレートを用いて制作されたジュエリーは政府によりインディアンクラフトとして認定されず、グランドキャニオンなどの国立公園内で販売できなくなった記録も残っています。
【Crossed Arrows】クロスアローは、 『フレンドシップ』『友情』を象徴しています。
インゴットシルバー(銀塊)から成形されたシルバーの質感やプリミティブなシルバーワークによる造形は、風格のある作品でありツーリストジュエリーながらチープな印象がなく、アンティーク工芸品として完成された美しさと威厳を感じさせる作品です。
女性にも向いたサイズで、ビンテージ独特の素朴な雰囲気は性別やスタイルを問わずフィットすると思われます。
こちらのようなアンティークの良作は大変希少であり、多くフレッド・ハービースタイルジュエリーのデザインソースとなった史料価値も高いピースです。
着用画像はこちら↓
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コンディションも大変良好でシルバーは黒い肌になっていますが、使用感は非常に少なく良いコンディションを保っています。ハンドメイドによる造形ですので、少し制作上のムラは見られます。