【Fred Harvey Style】フレッド・ハービースタイルや【Tourist Jewelry】ツーリストジュエリーと呼ばれる、20世紀前半頃にアメリカ中西部の観光客向けに制作されたスーベニアアイテム(土産物)の一つ。中でも当時有名工房の一つであった【Arrow Novelty】アローノベルティ社製のピースで、大変美しいターコイズがメインとなった貴重なアンティーク/ビンテージバングルです。
内側には、Arrow Novelty社のホールマークである『COIN 900』の文字が刻まれたアローヘッドが刻印され、地金がコインシルバー(品位900銀)である事も判断可能な作品となっています。
1920年代末頃~1940年代製で、コインシルバー(銀含有率90.0%)から作られたバンドはトライアングル(竜骨型)ワイヤー2本をターミナル(両端)で一体化し、フロント部分にかけて少しづつ広くなるシェイプが形作られています。
その上下のトライングルワイヤーに挟まれるように美しく高さのあるカットのターコイズがセットされています。
また、その石の両サイドには比較的大きいシルバーボール/シルバードロップが配されており、石と連続したつながりのある造形となっています。
またバンドのフロント~ターミナル(両端)には、伝統的でオーセンティックなモチーフのスタンプワークが刻まれています。
中でもサイド部分に刻印されている、アローとドットを用いた『Warding Off Evil Spirits』と呼ばれる魔除けのデザインや、ターミナル付近に見られるサンダーバードモチーフが刻印されることで、ツーリストジュエリー特有のキャッチーな雰囲気と奥行きのある表情が生み出されています。
製作した工房やモチーフは、ツーリストジュエリーを代表するオーセンティックな背景とキャッチーなイメージですが、《30g》を超える重量を誇り、ツーリストジュエリーの中ではしっかりとした造りとなっています。
また、ほとんどの工程がハンドメイドで作られているようですが、おそらく一部の工程には機械が用いられていると思われ、マシン&ハンドメイドのハイブリッドなピースかと思われます。
マウントされたターコイズは、ネバダ産の【Paiute Turquoise】パイユートターコイズや【Burnham/Godber Turquoise】バーナム/ガドバーターコイズ、イラン産の【Persian Turquoise】パージャンターコイズ/ペルシャンターコイズ等と近い特徴を持つ、アンティーク作品では貴重なジェムクオリティを誇るターコイズですが、その鉱山を特定する事が出来ません。
深みのある水色のグラデーションを基調に、ブラック・グレーのスパイダーウェブが入り、とてもワイルドで複雑な景色を見せる上質なターコイズ。高さのあるカットも特徴的で、少し柔らかな色相ながら強い存在感を示す煌めきを誇るターコイズです。
現在も変色/劣化のない美しい色を湛えており、ミドルグレード上位~ハイグレードにグレーディングできる宝石としてのクオリティーを持った無添加ナチュラルのジェムクオリティターコイズ。奥行きを感じさせる透明感も素晴らしい石であり、特別な存在感と煌きを誇っています。
【Arrow Novelty】アローノベルティ社は、アメリカにおいてツーリスト向けのジュエリーを最も古くから製造していたコロラド州デンバーのメーカー【Harry Heye Tammen】H.H.タンメン社でアシスタントマネージャーをしていた【Rudolph Litzenberger】がニューヨークで1919年に創業しました。
1925年には現在復刻されてよく見かけるカタログを発行し、当時のツーリストジュエリームーブメントを支える大手メーカーの一つとなっています。
また、当時のカタログを比べた時にH.H. TammenとArrow Noveltyのデザインが極似し、品番やプライスも同一であることから、Arrow Noveltyの販売した製品は、ある時期までH.H. Temmenが製造していたと推測されます。
当時、すでに競争が激しかったスーベニア産業においての同社の戦略は【Maisel's】の長所(そのスタイルやクオリティー)とH.H. Tammenのノウハウ(量産化)を同時に進めることだったようです。
製造元を表すサインであるホールマークはあまり多く刻印されなかったようですが、その多くをコインシルバーで制作し、Maisel'sやGARDEN OF THE GODS TRADING POST、SOUTHWEST ARTS&CRAFTS等、古くから営まれる工房の作品をデザインソースとしながらも、それまでのツーリストジュエリーに比べすっきりと完成度の高いデザインが多いのが特徴で、プライスもMaisel'sの似たタイプのものと比べ安く設定されていたようです。
ただし、いつ頃からか不明ですが、残念ながら製造にはインディアン以外の作業員が携わっていたとされています。
そのため、カタログには『Indian Design』と表記されており、多くの秀逸なデザインを残していますが、同じようにジュエリーの量産化を進めたBellやMaisel'sと違いインディアンメイドではないという理由で、Arrow Noveltyのピースは当店での取扱いが少なくなっています。
【Coin Silver】コインシルバーとは、ネイティブアメリカンジュエリーにおいては銀含有率90.0%の地金を表します。
また、アメリカの古い硬貨における銀含有率は900ですが、日本では800~900や古い100円硬貨では600、メキシカンコインは950であり、900シルバーが最も多く使われていますが世界中で共通した純度ではありません。
同様に【Sterling Silver】スターリングシルバー=【925シルバー】は、銀含有率92.5%の地金であり、こちらは世界中で共通の基準となっています。
また『割金』と呼ばれる残りシルバー以外の7.5%には、銅や鉄、アルミニウム等が含まれています。(現在では、スターリングシルバーの割金は7.5%全てが銅と決められています)
主にイギリスの影響を受けた国において『STERLING』、それ以外の国において『925』の表記・刻印が使用されています。
925シルバーは熱処理によって時効硬化性をもち、細かな細工や加工に向いていたため食器や宝飾品等様々な物に利用されていますが、ネイティブアメリカンジュエリーにおいては、その初期に身近にあった銀製品、特にシルバー製のコインを溶かすことで、材料(地金)を得ていた背景があるため、現代でも限られた作家によりコインシルバーを用いる伝統が残されています。
ネイティブアメリカンジュエリーの歴史では、1900年代初頭にH.H.タンメン社が『800-Fine Silver』(シルバー含有率80.0%)を採用し、1910年代~1940年代初頭までに作られたツーリストジュエリーにおいては、Coin Silver 900が多く採用されました。
シルバーの色味や質感は、『割金』や製法にも左右され、コインシルバー900とスターリングシルバー925の差異は純度2.5%の違いしかない為、見た目で判断するのは困難ですが、やはりコインシルバーは少し硬く、着用によってシルバー本来の肌が現れた時に、スターリングシルバーよりも深く沈んだ色味が感じられると思います。
さらに古い1800年代後半頃の作品では、メキシカンコインが多く含まれていたためか、そのシルバーの純度は95.0%に近くなっているようですが、身近な銀製品を混ぜて溶かしていた歴史を考えると純度に対してそれほど強い拘りはなかったことが推測されます。
【Thunderbird】サンダーバード はネイティブアメリカンジュエリーの伝統的なモチーフの一つで、伝説の怪鳥であり、雷や雲、ひいては雨とつながりが深く幸福を運んでくるラッキーシンボルでもあります。 ジュエリーでは『限界の無い幸福』を表すシンボルであり、ネイティブアメリカンの守り神的存在です。
実在しない為にその容姿は作者の意匠に委ねられており、イーグルの様な威厳のある姿から、小鳥の様な可愛いデザインまで幅広く表現されているのも魅力の一つとなっています。
ある程度量産化されていた『ツーリストジュエリー』ですが、スタンプワークのデザイン等を含めると全く同じデザインの個体に出会う事が殆どない事も魅力であり、本作の様に上質なターコイズが用いられたピースは非常に希少となります。
ただし、現在の様に厳しく石のグレーディングが行われている時代の作品ではないので、こちらのように素晴らしい石の個体が極稀に見つかる事がございます。
素晴らしいターコイズを生かしたシンプルで洗練された造形デザインやバランスの良いボリューム感も大変魅力的なブレスレット。腕に対する心地よい重量感もあり、クラシックな印象を持ったデザインやスリットにより肌の透ける造形は性別や季節を問わず多くのスタイルに自然に馴染みやすい印象です。
製作元が明確であり、史料価値も高くトレジャーハントプライスな個体の一つとなっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションも大変良好です。
僅かなキズやシルバーのクスミ、ハンドメイド特有の制作時のムラは確認できますが、使用感の少ない良い状態を保っています。
ターコイズはマトリックス部分の凹凸等が見られますが、それらは天然石に由来する『マトリックスロス』でありダメージではありません。
僅かにマットな質感となっていますが、石もダメージの無い良好なコンディションとなっています。