【NAVAJO】ナバホのアンティークジュエリー、【Fred Harvey Style】フレッド・ハービースタイルや【Tourist Jewelry】ツーリストジュエリーと呼ばれる20世紀前半頃にアメリカ中西部の観光客向けに制作されたスーベニアアイテム(土産物)として作られたアンティーク/ビンテージバングル。愛らしい印象のサンダーバード×2がアップリケされたブレスレットとなっています。
また本作は、故Dennis June氏の著書『Fred Harvey Jewelry』の76ページで紹介されているピースそのもの(ON BOOK)です。
当店ではDennis June氏との長きにわたるリレーションシップを持ち、大変懇意にして頂きました。多くの事を学ぶ機会を頂き、今後も沢山のご協力を仰ぎたいと考えておりましたが、大変残念ながら2020年に永眠されております。
その後、同氏が1965年から経営したギャラリーを受け継いだご家族より、前述の著書に掲載されている作品の一部を譲り受けました。こちらもそれらの中の一つとなっております。
1930年代~1940年代製と思われ、バンド(地金)は『スプリットバンド』と呼ばれる伝統的な造形でサイドから3本に割り開かれており、センターに幅とボリューム感を持たせたナバホのオーセンティックな造形スタイルです。
またそのバンド中央にはロープ状のデザインが施され、上下のバンドにはスタンプワークが刻まれる事で、ナバホジュエリーらしい複雑な表情に仕上げられています。
センターには、サンダーバード2体が重ねてアップリケされた比較的珍しいデザインとなっており、それぞれの中央には味わい深いターコイズがマウントされています。
それら、サンダーバードも細かくスタンプが刻まれる事で細部が描き出され、どこか愛嬌のある顔がとても魅力的です。
さらに、サイド~ターミナル(両端)にもホーガン(住居)を意味するデザインや、ライトニングスネーク/稲妻型ガラガラ蛇が刻まれることで、ツーリストジュエリー特有のキャッチーな雰囲気が与えられているようです。
また、多くの工程がハンドメイドとなっていますが、ターコイズを留めるベゼル(覆輪)には『ベゼルカップ』と呼ばれる既製のパーツが用いられており、一部の工程に機械による加工が採用されたマシン&ハンドメイドのハイブリッドなピースとなっています。
ツーリストジュエリーではオーセンティックなデザインですが、現在では現存数が非常に少なく類似したピースを探すのは困難で、高い希少性とバランスの良いデザインを持ったブレスレットとなっています。
造形スタイルやディテール等から、1923年により創業され多くのナバホやプエブロの職人が所属した有名工房【Maisel's Indian Trading Post】マイセルズ インディアントレーディングポストで制作されたものと推測されますが、ショップマークやホールマークは入らず正確な詳細は不明となっています。
【Thunderbird】サンダーバード はインディアンジュエリーの伝統的なモチーフの一つで、伝説の怪鳥であり、雷や雲、ひいては雨とつながりが深く幸福を運んでくるラッキーシンボルでもあります。
ジュエリーでは、限界の無い幸福を表すシンボルであり、ネイティブアメリカンの守り神的存在です。
【Rattlesnake】ガラガラヘビ/スネークは、インディアンにとって神聖な存在として、特にプエブロインディアンの間で古くからジュエリーやポッテリー等、色々な作品に用いられました。
当店のロゴにも登場するモチーフであり、脱皮して成長していく姿から、<挑戦><革命><知恵> 等を象徴するシンボルとされています。
【Maisel's Indian Trading Post】マイセルズ インディアントレーディングポストは、1923年にMaurice Maiselにより創業された店で、当時の観光産業隆盛によるインディアン工芸品(土産物)ビジネスとして開業され、フレッド・ハービーホテルの向いに店舗を構えていました。
その後、1939年にはアルバカーキダウンタウンに移転し、2019年まで同じロケーションで【Skip Maisel's Indian Jewelry】として営業していました。
ピーク時には150人以上のインディアンの職人を雇い入れ、その作業を外から見える形で運営していました。そのスタイルは近年まで受け継がれ、【Will Vandever】等、腕の良いベテラン作家がジュエリーを制作しました。
さらに、ジュエリー以外のインディアンアートや工芸品、お土産物も多く遺しており、近年までビジネスを継続していた数少ないトレーディングポスト兼工房です。
オーセンティックでフレッド・ハービースタイルらしいモチーフが特徴的な作品ですが、ビンテージ独特な渋いシルバーの質感や味わい深いターコイズによって落ち着いた雰囲気も帯びたブレスレットとなっています。
また、サンダーバードの持つ愛らしい雰囲気によって、アンティークジュエリーとは思えないキャッチーな印象に仕上がっていますが、スプリットバンドの造形や程よいボリューム感はさり気なく馴染みやすく、高い汎用性を示します。
多くの装いにフィットさせることが可能で、日常的なコーディネイトに取り入れやすいアイテムです。
定番のモチーフとバランスの優れたデザインが秀逸な個体であり、ツーリストジュエリーのキラーピースといえるブレスレット。ON BOOKというスペシャリティも有するコレクタブルなピースとなっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションも良好です。2つのターコイズにはどちらもクラックが確認できますが、肉眼では視認が難しいクラックであり、着用にも不安のない状態です。