【ZUNI】ズ二のビンテージジュエリー、厚く重厚なバンドをベースにドームシェイプにカットされた美しいターコイズインレイが施されたアンティーク/ビンテージバングルです。
『ホロースタイル』と呼ばれる中空のシルバーワークによって立体的なバンドが形作られ、比較的細い幅のバングルですが、シルバーの厚みとハイドームにカットされたターコイズによって独特なボリューム感と存在感を持った作品となっています。
ズニジュエリーの伝統的な技術を駆使して作られた作品であり、ズニ族はファミリーで伝統技術やデザイン/造形を代々継承している為、正確な制作時期を特定するのは困難です。
シルバーワークの細部やマウントされているターコイズの質等からは、不確かながら1950年代~1970年代前後に作られた作品と推測されます。
バンド(地金)は、厚みとボリューム感のあるシェイプが『ホロースタイル』という中空構造によって造形されています。中空となっていますが、分厚いシルバーシートを使用することで大変重量感があり、それが特別な上質感を与えているようです。
サイド部分にはさりげなくスタンプワークも刻まれており、インディアンジュエリーらしい武骨な雰囲気も帯びた仕上がりです。
またホロースタイルの造形技術を用いることで、ターミナル(両端)からフロントに向けて徐々に厚みが増すという、立体的で美しい造形が実現しており、ターミナルにはバンドの断面に対して垂直方向に小さなシルバーパーツが備えられ、強度と着用感を高めています。
このような造形は、インレイする為のカッティングを施したフロント部分と、その裏側(内側)を構成するバンド、そして上下の厚みとなるパーツを別々に用意し、それぞれのパーツをバングルの形状にしてからロウ付けすることで造形しています。
そしてサイド~フロントには、丸くハイドームにカットされた高さのあるのターコイズがインレイされており、そのインレイ部分のみ、ハーフラウンドワイヤー(半円型の断面)の様なシェイプが生み出されております。
サイド~ターミナルは厚みのあるフラットなシェイプとなっており、インレイ部分だけがハーフラウンドシェイプとなっている造形は、殆ど類似した作品がなく、本作の独自性であり、スペシャリティとなっています。
インレイワークは、シルバーワークによって格子状の区画分けが形成されており、そこに美しいターコイズがセットされています。
ターコイズのカットも大変特徴的で、バングルのカーブに合わせながらハイドームの曲面が作られ、非常に高度で綺麗な仕事からは、作者の卓越した技巧が感じられます。
インレイされたターコイズは、その産地を明確に出来ませんが、色相やマトリックスの特徴からは【Sleeping Beauty Turquoise】スリーピングビューティーターコイズ、そして【Morenci Turquoise】モレンシターコイズが想起されます。
高さのあるカットからは、塊状で産出するスリーピングビューティーターコイズの可能性が高いと思われますが、モレンシターコイズとは類似点も多く確定が困難です。
僅かにグレイッシュで柔らかな色相ながら、しっかりとした発色と強い艶を持つターコイズです。部分的にパイライトのマトリックスや奥行きのあるグラデーションも見られ、アーシーで味わい深い石となっています。
一部のターコイズには、変色によりグリーンになっている石も見らますが、その変色がもたらしたマルチカラーもビンテージ独特な表情を生み出しており、無添加ナチュラルターコイズの証ともなっています。
【Hollow Style】中空構造/ホロウスタイルは、インディアンジュエリーにおいて1940年代前後からみられる彫金技法・技術の一つで、本作の様に立体的なシルバーの造形を中空構造で構成する造形スタイルを指します。
ハンマーワークや立体的なカッティング、そして繊細なロウ付けを駆使する技術であり、美しく造形するには高い技術を必要とし、本作の様に立体的で綺麗なフォルムを作り上げるのは容易ではありません。
ボリューム感のある造形を過剰な重量にすることなく形作ることが出来る技術であり、インディアンジュエリー以外でも古くから見られる技法です。
【Inlay】インレイ/チャンネルインレイは、古くからズニ族が得意として発展させた技術であり、カットしたターコイズやシェルなどをシルバーにピッタリと嵌め込む螺鈿細工のような技術です。
ナバホのシルバー技術に次ぐ長い伝統のある技術であり、1920年代以降、現在に至るまで多く作られましたが、そのモチーフはサンダーバード、ナイフウイング、レインボーマン、サンフェイス等、とても多様なモチーフが見られます。【C. G. Wallace INDIAN TRADER】C.G.ウォレスインディアントレーダー等有力なトレーダーの元では、ナバホのシルバースミスがシルバーワークを担当し、そこにズニのシルバースミスがインレイワークを施した共作品なども作られてます。
また、現在ではインレイ技法で制作される多くのジュエリーがキャストによる量産品(量産されたシルバーに石をはめ込むだけ)となってしまいましたが、こちらはシルバー部分を含めてすべてがハンドメイドで成形されています。
丁寧で重厚なシルバーワークをベースに、繊細なターコイズのカットにより、その美しさと際立った作品となっています。
技術としては伝統的でオーセンティックな造形の作品ですが、際立ったオリジナリティも有し、洗練されたミニマムなデザインによりとても現代的で現在でも新鮮な印象を受けるブレスレットとなっています。
質実剛健なシルバーワークには、ビンテージインディアンジュエリーらしいハンドメイドの重厚感や素朴な味わいを感じさせますが、精巧なインレイやターコイズの端正なカットは、エレガントな印象を付加しており、シンプルでクリーンな造形美はあらゆるスタイルによく馴染みます。
前述の様にズニジュエリーの伝統的な技術と上質な石が組み合わせられることで、アートピースとしても評価できるハイエンドな作品であり、トレジャーハントプライスなブレスレットとなっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションは、シルバーに多少のクスミや細かなキズ、ハンドメイド特有の制作上のムラはありますが、特にダメージの無いとても良好な状態です。
ターコイズは前述のように変色が確認できますが。現在も素晴らしい艶を保っています。
また、僅かなクラックが見られますが、それらはセットされた時からの天然石に由来する特徴で、ダメージではないと思われます。