【NAVAJO】ナバホの偉大な作家【Jack Adakai】ジャック・アダカイの作品。ナバホジュエリーの伝統的な造形スタイルを踏襲しながらも、同作者のオリジナリティが感じられるビンテージベルトバックルです。迫力のあるボリューム感と、中央にマウントされた上質なターコイズも特徴的な作品となっています。
※本作はベルトバックルのみの販売となります。画像にあるレザーベルトは付属となりませんのでご注意ください。
裏面に刻印されたホールマーク(作者のサイン)が、イニシャルではなく『JACK ADAKIE』というフルネームとなっており、その綴りも現在とは異なっている事から、同作者の長いキャリアの中でも初期に近い1940年代~1950年代頃の作品と思われます。
オーバルシェイプをベースとしたナバホジュエリーのオーセンティックなデザインの作品ですが、ベルトバックルとしてはとても大きく迫力のあるピースです。中央には高さのあるカットが特徴的な美しいターコイズがマウントされ、その石を留めるベゼル(覆輪)は、細かな刻みのあるノッチドベゼルやトゥースベゼルと呼ばれるディテールとなっています。現在では既製のノッチドベゼルが販売されていますが、本作では作者のハンドメイドによるベゼルとなっています。
また、全体に力強いスタンプワークが施され、ターコイズを囲むように『バンプアウト/リポウズ』と呼ばれる技法により、リーフ(たばこの葉)を起源とするデザインに立体的で迫力のある凸の造形が形作られることで、美しく奥行きと力強い存在感のある造形が生み出されています。このような立体的な造形は、現在多くみられる凸と凹の金型ツールを用いた技術ではなく、硬い木の土台や鉛の塊にアール(曲面)の溝を彫り込み、そこにシルバーを細かく何度もタガネで叩き沿わせることによって曲面を作る古い技法によって形作られています。エッジには連続してスタンプワークを刻む『チゼルワーク』が施される事で、ナバホジュエリーらしい武骨な表情や味わい深く複雑な印象が与えられています。
また、ハンマーワークによって全体にアール(曲面)が施されており、ベルトに必要なアールを持った造形になっています。
マウントされたターコイズは、澄んだ曇りのないアクアカラーのグラデーションを基調に、ブラック・ブラウン/ゴールドのウェブが入り、非常に高い硬度を感じされるハイクオリティーなターコイズです。高さのあるカットも特徴的で、こちらのような上質なターコイズが多く用いられていることもJack Adakai作品の特徴となっています。
正確な鉱山の特定は困難ですが、おそらく【Godber/Burnham】カドバー/バーナムターコイズと思われます。現在も美しい艶を保ち複雑でワイルドな印象も有する、ナチュラル無添加のジェムクオリティターコイズです。
【Jack Adakai】ジャック・アダカイは、ナバホのシルバースミスの中でも高い技術を持つ名工として有名で、伝統的なスタイルからモダンで独創的な作品まで幅広く素晴らしい作品を残しています。
書籍などでは1953年生まれと紹介されていることがありますが、同名の別人と間違われているようです。実際には、娘である【Mattie Adakai】マティー・アダカイ氏が、1920年代に生まれて第二次世界大戦に従軍し、帰国後にトラックドライバーなどをしながらシルバースミスとしての腕を磨いたと証言しています。また、息子は日本でも有名な作家【Ray Adakai】レイ・アダカイ氏であり、白人作家【John Hornbeck】ジョン・ホーンベックの義父、そして甥には【McKee Platero】マッキー・プラテロがいます。
1950年代には【NAVAJO GUILD】ナバホギルドのメンバーとして後進の育成やインディアンジュエリーの普及にも尽力し、やはり残されている作品群は、ナバホのトラディショナルな技術やスタイルを守りながら独自性を追求したピースが多く見られ、ナバホギルドから受け継いだ考え方や志が感じ取れます。また、それらの価値観や技術は、Ray Adakai氏と現代ナバホのトップアーティストであるMcKee Platero氏に受け継がれているようです。
そして、上記の様に偉大な後進を育て、1980年代の半ば頃に亡くなっておられます。
ホールマークの綴り「JACK ADAKIE」に関しましては、現在知られている同作者の綴り「JACK ADAKAI」とは異なっています。これは、ナバホ語が文字を持たない事に起因しています。ミッドセンチュリー以前には、個人名も発音だけを元にしたアルファベットの綴りとなっていました。その為、時代により名前の綴りが変わることは珍しい事ではなく、現在では正確な発音が不明となってしまった人物も数多く存在しています。本作の作者であるJACK ADAKAIも、いつ頃までかは不明ですが、JACK ADAKIEという綴りを使用していました。本作のホールマークはその名残で、刻印のミスや異なる作者の作品ではありません。
本作もナバホの古典スタイルを踏襲した、Jack Adakaiらしい作品であり、リポウズやスタンプワークと等の伝統的な技術・製法を駆使して作られた武骨でワイルドな印象を持った作品です。また、大きめでボリューム感のあるベルトバックルであり、多くのスタイルにおいて強いアクセントや要となり得る作品です。
【Jack Adakai】ジャック・アダカイという偉大な作家のアイデンティティを宿す作品であり、手工芸品としてだけでなくアートピース/ウェアラブルアートとしても評価される非常にコレクタブルなベルトバックルとなっています。
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コンディションは、シルバーのクスミや細かなキズ、ハンドメイド作品特有の制作上のムラ等が見られる程度でターコイズを含め大変良好な状態です。