【Cochiti】コチティの大巨匠【Joe H. Quintana】ジョー・キンタナ(1915-1991)の作品。『ナバホパール』とも呼ばれる79個ものベンチメイド(ハンドメイド)シルバービーズで構成され、その全てに力強く細かな文様を刻むスタンプワークが施されています。単一のシルバービーズで大変長く組まれた貴重なビンテージネックレスです。
本作は、Irma Bailey著の書籍【Joe H. Quintana Master in Metal】の28ページで紹介されている下記の作品
ITEM CODE:JNO001249
Joe H. Quintana [ON BOOK] Stamped SilverBead Necklace c.1969
と全く同じスタンプ(鏨)が刻印されたビーズが使用された同一のビーズとなっており、【Joe H. Quintana】ジョー・キンタナの作品であることが特定可能となっています。
上記の書籍では、1969年頃の作品と紹介されており、おそらく本作もその前後の時代に制作されたものと思われます。
『ナバホパール』に相応しい、真珠に近くシルバービーズとしては少しだけ控えめなサイズの美しいシルバービーズで作られたネックレス。それぞれに力強くも細かな文様を刻むスタンプワークが施されており、パール/真珠とは全く異なった奥行きとインディアンジュエリーらしい味わいが付加されています。
その総数79粒にも及びます。非常に手間がかかるシルバービーズは、現代では限られた作家しか制作しないアイテムとなっており、特に本作で見られるような小さな粒は制作に高い技術と集中力を必要とします。また、こちらのように古くからの製法でビーズを制作すると、一日中制作しても数粒程度しか制作できない為、全てのシルバービーズをそろえる為に大変長い時間が費やされていることが判ります。
こちらのような完全なハンドメイドのビーズは、材料の加工からの全ての工程を手作業により作り上げられており、コンチョを作るような手法で半球体を制作し、それらを二つロウ付けすることでビーズに成形しています。そのため、その形状や大きさは不均一ですが、独特の味わいが感じられます。
同様のスタイルを持つシルバービーズ/ナバホパールは、1950年代以前から制作されていますが、非常に美しく高い完成度は、Joe H. Quintana以外にはない素晴らしいクオリティーです。
【Joe H. Quintana】(Jose Higineo Quintana)の功績はこちらで語りつくせるものではありませんが、多くの賞を獲得しただけでなく、革新的な造形を生み出し、技術的にも頂点に達したインディアンジュエリーにおける最高のシルバー・スミスの一人です。 現在、トップアーティストとして活躍する作家【Cippy CrazyHorse】シピー・クレイジーホースの師であり、父親としても有名です。
1915年、Cochiti Puebloに生まれ、1932年頃からシルバースミスのキャリアをスタートさせたようです。1930年代後半頃には、【Julius Gan's Southwestern Arts and Crafts】(ユリウス・ガンズ サウスウエスト アーツアンドクラフト)に所属し、シルバースミスの一人としてジュエリーの制作に従事しました。Southwestern Arts and Craftsには、【Ambrose Roanhorse】アンブローズ・ローアンホース、【David Taliman】デビッド・タリマン、【Mark Chee】マーク・チーも在籍していた記録が残っており、優秀でクリエイティブな作家を生み育てるバックアップや技術の継承があったと推測されます。
第二次世界大戦中は造船の仕事に従事し、ブラック・スミス(金属(鉄)鍛冶)の技術を身に付け、戦後の1950年代頭頃にニューメキシコに戻り、ロスアラモスの【Turquoise Post】やアルバカーキに在った【Seligman's】、その他にもFrank Pataniaの経営する【Thunderbird Shop】やManny Goodmanの【Covered Wagon】等、多くのインディアンクラフトショップに所属していたと言われています。 その間、1960年代中頃までになんと22本ものアートショーにおけるアワード受賞リボンを獲得しました。
1960年代後半には、【Irma Bailey】の経営する【Irma's Indian Arts & Pawn】等のために作品を制作、70年代にIrma's Indian Arts & Pawnが閉店するとコチティ族の家に戻ってシルバースミスとして活動を継続しました。
長いキャリアの中で、特に影響を感じさせるのが【Frank Patania Sr】フランク・パタニアです。1927年にサンタフェに【Thunderbird Shop】をオープンし、自身もアーティストとして評価の高いイタリア人作家のFrank Patania Srは【Joe H. Quintana】だけでなく、【Julian Lovato】ジュリアン・ロバト(1925-)や、【Louis Lomay】ルイス・ロメイ(1914-1996)にも技術やその美意識を教授した人物として知られています。
彼らは共通して高い独自性とインディアンジュエリーの伝統的で素朴な強さを持ちながら、新しい価値観や実験的な造形を生み出し、品位を感じさせる作品を多く残しました。 それぞれに強い個性を持っていますが、どこか共通する美意識を感じるのも特徴です。
ジョー・キンタナの作品はシンプルで洗練されたクリーンなデザインが特徴で、唯一無二のクオリティーを誇るシルバービーズや伝統的でプリミティブな技術を駆使し、非常に完成されたエレガントな作品を生み出すことを得意としています。
石の選別にも素晴らしい物があります。またそのシルバーワークは多岐にわたり、銀食器や花器など様々な作品を残していますが、やはりジュエリーのクオリティーや美しさは特別なものです。
70年代頭に制作したコンチョベルトはDOORSの【Jim Morrison】が愛用したことでも有名になりました。
ほとんど作品が市場に出ない作家の一人であり、その技術やデザインは【Cippy CrazyHorse】シッピー・クレイジーホース氏に継承されていますが、Joe H. Quintana氏のオリジナルピースは、現在ではほとんど見つかりません。
本作もJoe H. Quintanaを代表するシルバービーズ/ナバホパールネックレスであり、インディアンジュエリーらしいエスニシティな魅力を見せながら、無駄のないモダンな印象には、現在でも斬新な印象を受けます。
また、かなり長いネックレスとなっている為、性別を問わず非常に多くのスタイルにフィットし、他のネックレスとの重ね付けにも向いた作品となっています。
Joe H. Quintanaの突出した造形センスとオリジナリティが与えられることで、伝統工芸品として作られたシルバージュエリーが、ウェアラブルアートとしても評価できるアートピースへと昇華されているようです。
また、こちらの作品はJoe H. Quintana氏が得意としたシルバービーズで構成されていますが、スタンプワークの施されたナバホのオールドスタイルに比較的近い作品です。現在は息子の【Cippy CrazyHorse】シピー・クレイジーホース氏が、同じ技術と造形、ツールも受け継ぎ、非常に類似したビーズネックレスを制作していますが、こちらのようなスタンプワークの施されたシルバービーズ等は近年では作られていないと思われます。
ナバホジュエリーの伝統を色濃く反映したスタンプワークが特徴的な作品でありながら、Joe H. Quintana氏らしいエレガントさも感じさせるネックレス。アメリカ国内でも市場に出にくく、なかなか出会うことのできない貴重な作品の一つであり、トレジャーハントプライスな作品となっています。
◆着用サンプル画像(10枚)はこちら◆
コンディションも大変良好です。ハンドメイド作品特有の制作上のムラ等が見られ全体に黒っぽくなっていますが、使用された痕跡の無いコンディションです。
また、こちらの作品はワイヤー(フォックステイルチェーン)やフックパーツ等も当時のオリジナルです。ダメージなどが見られなかったため、交換しておりません。