【NAVAJO】ナバホのアンティークジュエリー、内側にはアローヘッドの中に『ES』とデザインされたホールマーク(作者のサイン)が刻印されていますが、残念ながら作者は不明の作品。インゴット(銀塊)から成形された非常に分厚く重厚なバンド/地金にシンプルで洗練されたスタンプワークが施されたアンティーク/ビンテージバングルです。
1940年代後半~1960年代頃に制作された作品と思われ、当時モダンスタイルと呼ばれたデザインとセンスにより、クリーンでミニマルに仕上げられた高い完成度を持つピース。インゴットシルバー(銀塊)から成形されたベースは<約82g>と非常に重く分厚い造りで、そこにナバホらしく力強いスタンプワークにより美しい紋様が施されています。さらに、上下のエッジは丸くなめされており、そのディテールによって重厚で武骨な表情と比較的ワイドな幅のバングルに、柔らかな印象と上質感、そして多くのビンテージインディアンジュエリーと一線を画す独自性や装着感を与えているようです。
また、このようにシンプルでミニマムな造形によってインディアンジュエリー独特の味わいや武骨さを生み出す造形スタイルは、ナバホジュエリーのヒストリックな技術を重視し、それら古典作品を踏襲しながら高い完成度で再現することで、当時『モダンスタイル』と呼ばれた作品を残し、後進の育成に注力した【Ambrose Roanhorse】アンブローズ・ローアンホース(1904-1982)の影響を感じさせます。
現代では、ナバホのトップアーティストである【McKee Platero】マッキー・プラテロ氏等がこちらの作品のようなAmbrose Roanhorseやナバホギルドが生み出した「古典作品(技術)をベースにモダンで完成されたジュエリー」の影響を強く受けていると思われます。特に初期のMcKee Plateroの作品では、こちらと同じようなシンプルで簡潔なスタンプワークとファイルワークのみで構成されたピースが散見されます。
それらをベースにさらに自身の思想や美意識を反映させ、高い次元へと作品を昇華させたマッキー・プラテロ氏は、日本の伝統継承で云う『守・破・離』を体現し、ナバホジュエリーをアートピースに押し上げています。
【Ingot Silver】インゴットシルバー(銀塊)からの成形は、アンティークインディアンジュエリーにおいて非常に重要なファクターですが、銀含有率/品位などの素材とは関係なく、ジュエリーの製法技術を表します。
現在制作されている作品の多くは、材料として市販されているシルバープレート(銀板/ゲージ)を加工することでジュエリーとして成形されていますが、インゴットから成形する製法では一度溶かしたシルバーを、鍛冶仕事に近い方法であるハンマーやローラーで叩き伸ばすことでジュエリーとして成形していきます。最終的にはどちらもプレートやバーの形態になるため、大きな差は無いように思われますが、インゴットから成形されたシルバーの肌は、硬くなめらかで鈍い光を持っています。それにより生み出されるプリミティブで武骨な作品の表情は、やはりアンティークインディアンジュエリーの大きな魅力です。
また、1930年代にはシルバープレートが登場しますが、当時シルバープレートを用いて制作されたジュエリーは政府によりインディアンクラフトとして認定されず、グランドキャニオンなどの国立公園内で販売できなくなった記録も残っています。
こちらのピースもインゴット製法をはじめ「古典作品(技術)をベースにモダンで完成されたジュエリー」と云う特徴を備えています。そしてそれらのシルバーワークは、クリーンで洗練された印象を与え、アンティークピースながら現代的な作品となっています。
また、大変重く作り上げられたバングルですが丁寧な仕上げによって滑らかなシルバーの肌を持ち、手首に対するフィット感も素晴らしいピース。柔らかな曲面で構成された表情は、女性にもフィットし普遍的で美しい造形美は長くご愛用いただけると思われます。
また、アンティーク作品の中でもこれほどの重量感を持った作品は希少で、ビンテージインディアンジュエリーの力強い武骨さだけでなく、悠然としたアートピースのような佇まいを持ち、練り上げられた工芸品としての資料価値も高い作品です。
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コンディションも素晴らしく、シルバーのクスミや細かなキズは見られますが、ダメージやリペア跡の無い大変良好な状態です。