【NAVAJO】ナバホの巨匠【Thomas Curtis Sr.】トーマス・カーティス(1945-2013)の作品で、同作者を代表するスクエアワイヤー(断面が正方形のシルバーワイヤー)をベースとした作品の中でも最も重厚で太いバンドのバングルです。
ヘビーゲージ/ヘビーワイヤーを用いた重厚で美しい作品は、トーマス・カーティスの得意とするスタイルであり、最も高い評価を得ている作品群です。特にこちらのスクエアワイヤーは幅(厚み)が約8㎜、重さ90gを超えるスクエアワイヤーバンドの中でも最も太く重量のあるピースです。
ワイヤーの正面だけでなく上下の断面にも素晴らしい技術を感じさせるスタンプ(鏨)により細かな紋様が刻まれ、エッジにはファイルワークと呼ばれるヤスリで削る技術により、立体的な動きとスタンプワークを際立たせる効果が生み出されています。またこのような彫刻的なディテールは、同氏の無機質な印象を与えるほど正確なスタンプワークに有機的でナバホらしい奥行きをもたらしています。
さらに、太すぎるワイヤーの為かターミナル(両端)に向けて少し厚みが削られ着用感にも考慮した同作者らしい丁寧で細部にも手抜きのない仕事が感じられます。
この様なスクエアワイヤーをバンド(地金)としたバングルは、インディアンジュエリーの古典期と呼ばれる時代から見られ、さらにスタンプやファイルワークで装飾されたこちらの様な造形の作品は、1930年代以降にナバホの偉大な作家【Fred Peshlakai】フレッド・ぺシュラカイ(1896-1974)や、サン・イルデフォンソプエブロの【Awa Tsireh】アワ・シーディ(ツィレー)(1898-1955)、同時期に活躍したホピの【Ralph Tawangyawma】ラルフ・タワンギャウマ(1894-1972)、アコマの【Wayne Henry "Wolf-Robe" Hunt】ウェイン ヘンリー『ウルフ ローブ』ハント(c.1902-1977)】らの作品でも少数ながら発見されています。
上記の様な偉大な作家達が残した伝統的なスタイルを現代を代表する職人でありアーティストであるトーマス・カーティスが受け継ぎ、独自の完成度を持たせた素晴らしいクオリティーの作品です。
【Thomas Curtis Sr.】トーマス・カーティスは、1943年にアリゾナ州北東部の町キームズ・キャニオンに生まれ、父方母方の両方の祖母がシルバースミスであった影響で12歳のころにはそのキャリアをスタートさせていたようです。その後、ロデオカウボーイとしてもチャンピオンに輝き、シルバースミスとロデオカウボーイを並行してキャリアを重ねてゆき、ジュエリー作品でも1980年代の後半から2000年頃にかけて多くのアートショーにおいてアワードを受賞しています。
その作品群は、ナバホのトラディショナルなスタイルや技術を踏襲しながらも唯一無二といえる深く正確なスタンプワークや細かなファイルワークを駆使し、武骨ながら繊細で特別な完成度を持った作品を多く残しています。トーマス・カーティスの作品のようなほとんどズレやムラが見つけられないスタンプワークは、氏の作品を見ていると非常に簡単に作られているように感じられますが、実際にはとてつもなく高い技術力と集中力を必要とし、ナバホのベテラン作家でも真似することのできないクオリティーを持っています。
大変残念ながら、2013年6月にお亡くなりになり、現在は娘である【Jennifer Curtis】ジェニファー・カーティスがその技術やツールを受け継ぎ、父親に負けない高い完成度を持った作品を生み出しています。
同作者の代表作と言えるスクエアワイヤーバングルであり、その太く重厚なシルバーは、ワイドバングルとは違った強い存在感を持っています。また、完成されたシルバーワークにより洗練された印象を与え、アーリーナバホスタイルを踏襲した造形ですが、ナバホらしい武骨さと共にジュエリーとしての美しさも兼ねそろえたバングルに仕上がっています。
男性が身に着けるのにふさわしい風格を宿し、普遍的な造形美は長年にわたってご愛用いただけると思います。
美しく計算され、洗練度の高いデザインと重厚で男っぽさを放つThomas Curtisの貴重な作品。現在では出会うことが少ない貴重な作家の遺作の一つとなっています。
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コンディションは、長くコレクションとして保管された未使用の作品として入荷していますが、僅かな擦れなどが見られますので未使用ではない可能性があります。ただし、目立ったキズや摩耗は無く素晴らしい状態を保っています。