【Hopi】ホピの名工【Elgene Sehongva】エルジーン・セホンヴァ(1953-2005)による作品で、心地よい重量感を持ったバンドをベースに、オーバーレイ技法を用いて強いコントラストが生み出されたビンテージ/オールドバングルです。
正確なモチーフは不明ですが、おそらく雲をや雨、水の循環等の自然現象が象徴的に様式化・抽象化された意匠も秀逸な作品となっています。
1970年代後半~1990年代頃に制作されたと思われる作品。オーバーレイ技法によって大胆に紋様が描き出されたバンド(地金)は、現代のオーバーレイ作品に比べ、カッティングされた厚いシルバープレートが薄いシルバープレートを土台として張り合わされています。
このようなディテールはカッティングに大変な手間がかかり、古いオーバーレイ作品の特徴といえるディテールとなっています。
さらに、土台となっているシルバーには細かなテクスチャも刻まれることで複雑な表情が与えられ、とても深く強い陰影が生み出されています。
また、ハンマーワークによって全体に極僅かなアール(曲面)がつけられることで、微妙な立体的と曲線・曲面が与えられ、美しい造形美と腕になじむ上質感を感じさせます。
このようなディテールは、木(丸太)やレッド(鉛の塊)に施された凹みに、地金となるシルバーをハンマーで叩き沿わせることによってドーム状の膨らみを作り上げています。
高度な技術と手間を必要とするため、現在ホピの作品ではあまり見ることが出来なくなりました。
ホピのトラディショナルなスタイルを守ったデザイン/造形でありながら細部には作者の高い技術や拘りが伺え、素朴な印象と共に強い陰影によりエッジーでモダンな魅力が感じられる作品となっています。
裏側には同作者のホールマークである『ES』の文字が刻まれています。
【Elgene Sehongva】エルジーン・セホンヴァは、1953年にアリゾナ州ホートビラに生まれ、クラン(ホピ特有の氏族)はCorn/コーン。1973年頃からシルバースミスとしてのキャリアをスタートさせたようです。
ホートビラの名店であり多くのシルバースミスを育てた『Hopi Crafts/ホピクラフト』で学び、その後はサードメサに居住しながらシルバーワークを継続していたようですが、2005年に若くして亡くなられており、その現存作品は多くありません。
【Overlay】オーバーレイと言う技法は、シルバーの板に描いたデザインを切り抜き、下地のシルバーの上に貼り付けることで立体的に絵柄を浮き出させる技法です。
本作の様にスタンプワークと組み合わされた作品も見られ、完成度を高められたオーバーレイ技法を用いた美しいホピのジュエリーは、現代に至るまでに多くの傑作を残しています。
1930年代にホピの大家【Paul Saufkie】ポール・スフキー(1904-1998)によって生み出された技術ですが、その黎明期にはホピ以外のナバホ・プエブロのシルバースミスにも新しい表現方法として色々な作品が作られていました。
1940年代~1950年代にかけて【Harry Sakyesva】ハリー・サキイェスヴァ(1922-1969?)や同い年の作家【Allen Pooyouma】アレン・プーユウマ(1922-2014)、そして【Victor Coochwytewa】ヴィクター・クーチュワイテワ(1922-2011)等により、ホピの代表的なスタイルの一つとして定着させられました。
オーバーレイ技術の定着以前にも、オーバーレイと近い造形を生み出すような大きく大胆で細かな刻みを持たないスタンプ(鏨)がホピの作家によって制作されていました。
しかし、スタンプ(刻印)というデザインやサイズが固定されてしまう技術から解放し、もっと自由な図案を具現化できる技術・技法として生み出されたのではないかと考えられます。
【Hopicrafts】ホピクラフツは、ホートビラ出身の【Emory & Wayne Sekaquaptewa】エモリー&ウェイン セカクアプテワ兄弟によって、1960年に創業した工房でありショップです。
ホピのオーバーレイを用いた作品を専門的に扱い、シルバーワーク技術指導に前述の【Harry Sakyesva】ハリー・サキイェスヴァ(1922-1969?)を招いていました。
1962年にはホピネーション内であるカイコツムービービレッジに移りました。
その後、1979年にWayne Sekaquaptewaが亡くなり、1983年に閉店となっています。
現在、巨匠として知られる【Bernard Dawahoya】バーナード・ダワホヤ(1935or36-2010)や【Eldon James】エルドン・ジェームス等が在籍した工房です。
非常にオーセンティックなオーバーレイジュエリーを数多く展開し、卓越した技術力を持つシルバースミスを育てました。
そのジュエリー群の多くは、素朴でクリーンな印象のオーセンティックなホピジュエリーですが、細部のクオリティや現代作品に比べ厚い地金のカッティングにスペシャリティを持つ作品が多く遺されており、質実剛健でシンプルながら質の高いシルバーワークに大変定評のある工房です。
本作も素朴なデザインが端正なシルバーワークによってモダンアートの様なグラフィカルでアーティな趣を持ったブレスレットに仕上げられています。
石がマウントされていない事や無駄のないデザイン/造形により、多くのコーディネイトに違和感なくフィットし、さり気なくもしっかりとした存在感を示します。
また、ホピの人々は基本的に農耕民族であり、どこか優し気で日本人にも共通する自然モチーフが図案化されたデザインは、ナチュラルでアーシーな表情を持ち、季節やスタイルを問わずお使いいただける高い汎用性を持った作品となっています。
オールド作品特有の重厚なシルバーの迫力と、ハンドメイドジュエリーらしい味わいが感じられ、現在では作者を含めコレクタブルな作品の一つとなっています。
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コンディションは、多少のクスミや細かなキズ、ハンドメイド作品特有の制作上のムラは見られますが目立ったダメージの無い良好なコンディションを保っています。