【Hopi】ホピの名工【Jason Takala】ジェイソン・タカラ氏(1955-)による作品。卓越したオーバーレイ技術により、非常に緻密で味わい深いコーンモチーフが描かれたビンテージ/オールドバングルです。
内側の2か所に刻印された、現在とは少し異なる作者のホールマーク(Snow Cloud=雪雲)や、カッティングのディテールなどからは同氏の長いキャリアの中でも中期以前の1980年代~1990年代中頃までの作品と推測される作品です。
まだ、Jason Takalaという作者の強いアイデンティティを感じさせるデザインではありませんが、キャリア初期から現在まで継続して好んでいるコーンモチーフを羅列し、素朴ながら複雑で強いコントラストが美しいブレスレットとなっています。
バンドはそれほど重厚な厚みはありませんが、古いオーバーレイ作品の特徴といえる、現代よりも厚いシルバープレートをカッティングし、逆に少し薄いシルバープレートをベースにしてオーバーレイされています。
4つに分割された枠に、細かなカッティングワークとスタンプワークを駆使して、繊細でナチュラルな印象のコーンが描かれています。
フレーミングされた4ヶ所に連続して構成される事で、モダンアートを想起させるキャッチーな印象が与えらえ、作者のオリジナリティやホピの伝統にとらわれないデザインセンスが感じられます。
また緻密な印象のコーンですが一つ一つを観察すると、それぞれ個性があり異なった特徴を持ち、自然からの恵みや恩恵に対するリスペクトが感じられます。
さらに、よく観察するとバンド全体にハンマーワークによる極僅かなアール・曲面が施されており、それが独特の上質感や美しいフォルムを生み出しています。
このようなディテールは、硬い木(丸太)の土台や鉛の塊にアール(曲面)の溝を彫り込み、そこにシルバーを細かく何度もタガネで叩き沿わせることによってドーム状の膨らみを作り上げています。
この繊細なハンマーワークによる立体感や曲面により、手首に美しく馴染みます。
裏側には、同作者のホールマーク(Snow Cloud=雪雲)が2か所に刻まれています。少し古いタイプの刻印と推測され、現在のホールマークとは少し異なります。
【Corn】コーンは、ホピ族や多くのプエブロにとっても主食であり、大地そのものを表したり、生命の始まりや豊穣、実りを意味するモチーフとなっています。
儀式においてもプレイヤーフェザー/パホ等と共に登場し、大変尊い自然の贈り物と考えられています。
ナバホジュエリーにおいてもコーンフラワーをモチーフとした作品は古くから見られ、1920年代後半頃の伝説的なシルバースミス【Eskie Tsosie/Eskiesose】エスキー・ツォージー/エスキーソセの作品が発祥と推測されます。
1930年代以降はナバホの巨匠である【Austin Wilson】オースティン・ウィルソンなどの作者によって受け継がれますが、植物という自然モチーフの為、ナバホの作家よりも農耕民族の多いホピやズニ、プエブロの作家に好まれたモチーフと考えられます。
【Overlay】オーバーレイと言う技法は、シルバーの板に描いたデザインを切り抜き、下地のシルバーの上に貼り付けることで立体的に絵柄を浮き出させる技法です。
本作の様にスタンプワークと組み合わされた作品も見られ、完成度を高められたオーバーレイ技法を用いた美しいホピのジュエリーは、現代に至るまでに多くの傑作を残しています。
1930年代にホピの大家【Paul Saufkie】ポール・スフキー(1904-1998)によって生み出された技術ですが、その黎明期にはホピ以外のナバホ・プエブロのシルバースミスにも新しい表現方法として色々な作品が作られていました。
1940年代~1950年代にかけて【Harry Sakyesva】ハリー・サキイェスヴァ(1922-1969?)や同い年の作家【Allen Pooyouma】アレン・プーユウマ(1922-2014)、そして【Victor Coochwytewa】ヴィクター・クーチュワイテワ(1922-2011)等により、ホピの代表的なスタイルの一つとして定着させられました。
オーバーレイ技術の定着以前にも、オーバーレイと近い造形を生み出すような大きく大胆で細かな刻みを持たないスタンプ(鏨)がホピの作家によって制作されていました。
しかし、スタンプ(刻印)というデザインやサイズが固定されてしまう技術から解放し、もっと自由な図案を具現化できる技術・技法として生み出されたのではないかと考えられます。
【Jason Takala】ジェイソン・タカラは、1955年にションゴポーヴィで生まれ、クラン(ホピ特有の氏族)は『Snow』、伯父にはホピの巨匠【Bernard Dawahoya】バーナード・ダワホヤ(1935or36-2010)というファミリーで育ちます。
高校生までの若い時期には絵画を学んだようで、シルバースミスとしては1976年から活動を始めたとされ、1980年代に妻の故郷であるオライビに移ってから本格的にジュエラーとしてのキャリアをスタートさせました。
Man In The Maze/マンインザメイズをモチーフとした作品等、同氏を代表するデザインも多数存在し、アワード・コンテストでの受賞歴も多数を誇ります。
ホピの伝承や価値観等が織り込まれたJason Takalaの作品群は、アメリカ国内外を問わず高い評価を受けており、その技術や思想は、ご子息を始めとする次世代に受け継がれています。
現在、Jason Takala氏の代表的な造形スタイルとして紹介されてるデザイン・造形とは異なりますが、若い時期の綺麗なカッティングワークと同氏特有の質実剛健な彫金技術が体感できる作品です。
素朴でナチュラルなモチーフでありながら、モダンアートの様なグラフィカルでアーティな趣を持ったブレスレット。石がマウントされていない事や無駄のないデザイン/造形により、多くのスタイルに違和感なくフィットし、シーンやスタイルを問わずお使いいただけます。
【Jason Takala】ジェイソン・タカラという作者を含め、現在ではとてもコレクタブルでトレジャーハントプライスなピースとなっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションは、極僅かなクスミや細かなキズ、ハンドメイド作品特有の制作上のムラは見られますが大変良好なコンディションを保っています。