【Hopi】ホピの巨匠【Allen Pooyouma】アレン・プーユウマの作品で、美しいターコイズと立体的で上質なシルバーワークで形作られたペンダントトップ/ピンブローチです。
インディアンジュエリーの伝統的な技術で構成されながら、ホピ族出身の同作者らしい植物を想起させるような有機的でアーシーな印象を受ける独創性を持ったデザインのトップと、同作者が制作したと推定されるオリジナルのハンドメイドチェーンによって構成された作品となっています。
長い制作期間を誇るAllen Pooyoumaですが、こちらの作品は1950年代後半以降に作られたキャリア中期以降のピースと推測されます。
現在、ホピジュエリーの代表的なスタイルとなっているオーバーレイ技法ではなく、偉大なイタリア人作家【Frank Patania Sr.】フランク・パタニア(1899-1964)の作品を想起させる様な技術と造形スタイルの作品となっています。
1940年代以前に作られたホピやズニの作品は、多くの才能ある作家により独自性のある作品が作られていましたが、現在の様にナバホジュエリーとの明確なスタイルの違いは見られませんでした。
こちらの作品もオーバーレイ技法を定着させた作家の一人であるAllen Pooyoumaの作品ですが、同作者はナバホスタイルの彫金技術においても高い技量を有し、本作はナバホジュエリーを踏襲しながらデザインにはプエブロらしさを宿したピースとなっています。
丁寧にカッティングされた土台のシルバーに、ラウンドワイヤーによるワイヤーワークやシルバーボール、そして、リポウズ/バンプアウトと呼ばれるハンマーワークによって立体的なアールを持った花弁の様なパーツが放射状に配される事で、フローラルなデザインが形作られています。
さらに中央と上記のシルバーワークの間には、美しいターコイズがマウントされており、立体感と柔らかなアールを持つシルバーワークと共に素晴らしい造形美を生み出しているようです。
また本作はチェーン部分も当時からのオリジナルと思われ、そのチェーンを含めすべてハンドメイドによって作り上げられています。
このようなチェーンは、細い棒や板にシルバーワイヤーをコイル状に巻き付け、それをカットして一コマ一コマを作ります。 さらにそれを丁寧にロウ付けし、つなぎ合わせることでチェーンにする手の込んだものです。
こちらのように小さい丸環と長いオーバル環を交互に配したチェーンは『ホピチェーン』と呼ばれ、ナバホジュエリーでも見られますが、元々はホピの作品を発祥とした造形スタイルとなっているようです。
裏側にはAllen Pooyoumaのホールマーク(Ear of Corn)が刻まれています。
また、こちらにセットされたターコイズは、【Bisbee Turquoise】ビズビーターコイズターコイズの様な色味と透明感を備えていますが、おそらく【Persian Turquoise】パージャンターコイズ/ペルシャンターコイズと思われます。
深く濃いブルーに水色を湛え、パージャンらしい黒(チャート)のとてもワイルドなマトリックスが入ります。少しラフなカットは、作者によるカットと推測され、黒の強いマトリックスが作品自体に緊張感やエッジーな雰囲気を与えているようです。
【Persian Turquoise】パージャンターコイズ/ペルシャンターコイズは、現在のイラン産にあたり、カスピ海近くの鉱山で古くからたくさんのターコイズを算出しています。その歴史は紀元前にさかのぼることができ、中世にはトルコを経由してヨーロッパに輸出されたことから、ターコイズ/トルコ石と呼ばれるようになりました。(トルコではターコイズは産出していません。)
北米とは違った価値基準を持ち、マトリックスの入らないフラットなブルーが上質とされ、すでに1930年代以前からアメリカにも輸出されていたようです。
また、1950年代にはネバダ、アリゾナの多くのターコイズ鉱山の石が細かくグレーディングされ、パージャンターコイズも上質なものは流通量が少なくなっていたようです。
北米産ターコイズの多くが薄い脈状で形成されているのに対し、パージャンターコイズは塊で採掘できるのが特徴で、それにより高さのあるハイドームカットが可能になっています。北米産では、【Number Eight Turquoise】ナンバーエイトや【Lone Mountain Turquoise】 ローンマウンテンターコイズ等が塊状で採掘されます。 色はターコイズらしい水色~ブルーの石を産出し、大変幅広いバリエーションを持っています。
幅広いバリエーションを持つ為、グレーディングの困難なターコイズであり、前述の様に世界基準と北米の基準は全く異なっていますが、比較的ペールトーンの石が多く、透明感と深く濃い色味を持ちワイルドなマトリックスの入るこちらの様な石が北米における基準では最も高く評価されると思います。
【Allen Pooyouma】アレン・プーユウマ(1922-2014)は、アリゾナ州ホートビラの生まれで、なんと15歳から父親にシルバースミスとしての技術を教わりました。父親は【Gene Nuvhoyouma】で、叔父にあたるのはホピの大巨匠【Ralph Tawangyawma】ラルフ・タワンギャウマ(1894-1972)です。
目が悪く第二次世界大戦に徴兵されなかったため、リザベーションでジュエリーの製作を続け、1940年代半ばまではフラッグスタッフの【Doc Williams Saddle & Curio Shop】に作品を供給していたようです。
その後は、ツーソンで叔父であるRalph Tawangyawmaと共に働き、高度な技術を身に付けながら独自の造形/デザインを多く作り出しました。
また1940年代~1950年代には、ホピの偉大な作家【Paul Saufkie】ポール・スフキー(1904-1998)によって1930年代に生み出されたオーバーレイ技術を早くから取り入れ、同い年の作家【Harry Sakyesva】ハリー・サキイェスヴァ(1922-1969?)や、【Victor Coochwytewa】ヴィクター・クーチュワイテワ(1922-2011)等と共に、同技術をホピのスタイルとして定着させた作家の一人とも言われています。
ただし、Allen Pooyoumaの作品におけるスタイル/作風は、とても多くのバリエーションを持ち、ファイルワークとスタンプワークというナバホの伝統的な技術と、当時は新しい技法であったオーバーレイの技術をうまく組み合わせ、どこか有機的でモチーフの生き生きとした躍動感を生み出すことに長けた作家です。
本作では、基本的にナバホの技術やディテールをベースにしていますが、ホピ族の作品にみられる繊細で柔らかな雰囲気が最大の魅力となった作品です。
丁寧で上質感を感じさせるシルバーワークは、ビンテージインディアンジュエリー独特の素朴でナチュラルな印象も持ち、Allen Pooyoumaの師であり叔父のRalph Tawangyawmaや同時代に活躍した【Frank Patania Sr.】フランク・パタニアの影響を感じさせます。
独特の造形美とハンドメイドの味わいを感じさせるナチュラルな印象は、高い汎用性があり性別やスタイルを問わずフィットさせる事が出来るネックレスです。
また、ピンブローチとしてもアウターのアクセントやハットのワンポイント等にも使い勝手の良いピースです。
その独自性とオリジナリティのあるデザインから【Allen Pooyouma】アレン・プーユウマという巨匠のアイデンティティーも感じ取れる作品であり、大変コレクタブルで史料価値も高いアンティークジュエリーとなっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションも大変良好。シルバーには僅かなクスミやハンドメイド作品特有の制作上のムラ等は見られますが、ダメージ等はありません。
ターコイズにはマトリックス部分に凹凸が見られますが、それらはカットされた時からの天然石が持つ凹凸であり、現在も素晴らしい状態を保っています。