【Hopi】ホピの巨匠【Bernard Dawahoya】バーナード・ダワホヤ(1935or36-2010)による作品で、オーバーレイ技法により流麗で力強いベアトラック/ベアポー(熊の足跡/熊の足)が連続して描き出され、躍動感のあるデザインが生み出されたビンテージ/オールドバングルです。
大変心地よい重量感を持ち、柔らかなドームシェイプと滑らかに仕上げられたエッジ等により、手首に対するフィット感や優しい装着感にも配慮されたハイエンドな作品となっています。
同作者の長いキャリアの中でいつ頃制作されたピースか正確に判断するのは困難ですが、作品のディテールやホールマークなどから1970年代後半~1990年代の作品と推測されます。
現代のオーバーレイ作品に比べ、厚いシルバープレートをカッティングし、逆に少し薄いシルバープレートをベースにとした、古いホピ族のオーバーレイ作品独特の特徴を持っています。
その土台となっているシルバーには細かなテクスチャも刻まれることで複雑な表情が与えられ、とても深く強い陰影が生み出されていますが、薄い地金の為にテクスチャーのスタンプを刻印した『跡』が内側に残っています。
またそのテクスチャーは、多くのオーバーレイジュエリーに比べあえて少し荒く毛並みのように刻印を刻む事で、ワイルドなベアトラックの力強さやアーシーな印象を与えているようで、なぜかそれが独特な上質感さえ与えているように感じられます。
そして、厚いシルバーにより生み出された深く強い陰影によってベアトラック/ベアポーが描き出されたバンド(地金)には、ハンマーワークによって柔らかなアールがつけられ、立体的で美しい曲線・曲面が与えられています。
これも多くの作品に比べ強いアールとなっており、素晴らしい造形美と腕になじむ立体感と柔らかな装着感を両立させています。
このようなディテールは、木(丸太)に彫り込んだ溝に、タガネを使い地金を沿わせるように繊細なハンマーワークによってドーム状の膨らみを作り上げています。
高度な技術と手間を必要とするため、現在ホピの作品ではあまり見ることが出来なくなりました。
ターミナル(両端)付近の内側には、氏のホールマーク(Snow Cloud=雪雲)が2か所に刻まれています。
【Bear Track/Bear Pow】ベアトラック/ベアポーは、『力』を表す象徴としてホピの作品においては古くからみられる伝統的なモチーフの一つです。
他にも『統率力』や『勇気』『権力』などを表し、そのデザインからも力強さを感じさせるモチーフとなっています。
【Bernard Dawahoya】バーナード・ダワホヤは1935年又は1936年生まれで、クラン(ホピ特有の氏族)は『Snow』、アリゾナ州北東部のションゴポーヴィで育ちました。
1956年頃にシルバースミスとしてのキャリアをスタートさせたとされており、長いキャリアを持つ巨匠の一人です。
10代のころは叔父である【Sidney Sekakuku Jr.】シドニー・セカククの元で牧畜の仕事をしながらシルバーワークを教わり、同じく同氏族(親戚)の【Washington Talayumptewa】ワシントン・タラユンプテワらをも師としてトラディショナルなシルバーワークを習得していきました。
1960年代前半頃には、創業したばかりのHopi Craftsにも協力していました。本作もその当時に制作された作品です。
その時に同じく同ショップに在籍していた巨匠の一人であるHarry Sakyesvaにシルバーワークを教わり、当時新しいデザインを多く生み出していた【Peter Shelton】ピーター・シェルトンにも大きな影響を受けたようです。
その後、1966年には【Dawa's Hopi Arts and Crafts】ダワズホピアーツアンドクラフツをオープンします。そして、1970年代以降にはションゴポーヴィにおいて多大な影響力を持ち、多くの後進をワークショップや自身の経営する店を通じて支援・教育しました。
その教え子には自身の娘婿であり、現在も活躍するベテラン作家の【Anderson Koinva】アンダーソン・コインヴァ(1956-)等がいます。
また、長いキャリアの中で多くのアワードを受賞し1989年には、Arizona Indian Living Treasure Award(アリゾナ州人間州宝)に認定されています。
トラディショナルなホピジュエリーの大家であり、Victor Coochwytewaや【Lawrence Saufkie】ローレンス・スフキー(1934-2011)と近い世代の為、並んで評価されることが多い作家ですが、よく見ていると正確で実直なオーバーレイ技術とは相反するデザインのヌケや可愛さ、愛嬌がBernard Dawahoyaの魅力であり、優しくおおらかな人柄が作品に表れていると思います。
ジュエリー以外のアート作品制作にも精力的で、特にキャリア後半ではジュエリーの制作は比較的少なかったこともあり、現在では希少でコレクタブルな作家となっています。2010年に惜しまれながらお亡くなりになられています。
【Overlay】オーバーレイと言う技法は、シルバーの板に描いたデザインを切り抜き、下地のシルバーの上に貼り付けることで立体的に絵柄を浮き出させる技法です。
本作の様にスタンプワークと組み合わされた作品も見られ、完成度を高められたオーバーレイ技法を用いた美しいホピのジュエリーは、現代に至るまでに多くの傑作を残しています。
1930年代にホピの大家【Paul Saufkie】ポール・スフキー(1904-1998)によって生み出された技術ですが、その黎明期にはホピ以外のナバホ・プエブロのシルバースミスにも新しい表現方法として色々な作品が作られていました。
1940年代~1950年代にかけて【Harry Sakyesva】ハリー・サキイェスヴァ(1922-1969?)や同い年の作家【Allen Pooyouma】アレン・プーユウマ(1922-2014)、そして【Victor Coochwytewa】ヴィクター・クーチュワイテワ(1922-2011)等により、ホピの代表的なスタイルの一つとして定着させられました。
オーバーレイ技術の定着以前にも、オーバーレイと近い造形を生み出すような大きく大胆で細かな刻みを持たないスタンプ(鏨)がホピの作家によって制作されていました。
しかし、スタンプ(刻印)というデザインやサイズが固定されてしまう技術から解放し、もっと自由な図案を具現化できる技術・技法として生み出されたのではないかと考えられます。
本作も丁寧なオーバーレイ技法と大胆なデザインによってBernard Dawahoyaらしい柔らかくも迫力のある仕上がりとなっており、流麗にデザインされたベアポーが連続して構成される事で、アイコニックなモチーフが複雑で一見抽象的な文様にも感じられる特別な意匠に仕上げられています。
また、Bernard Dawahoyaの質実剛健な彫金技術により仕上げられ、シンプルでナチュラルな雰囲気を帯びながら力強い存在感を示ます。
ハンマーワークによるドーム型のアール(曲面)は、腕に独特なシルエットを生み出し日常の多様なコーディネイトにおいて大変魅力的なアクセントに成り得る作品であり、着用時に高揚感を与える『力』のあるブレスレットとなっています。
ホピ独特のどこか優し気な雰囲気を帯びた作品群は、日本人にも共通する感性や様式美を感じさせます。
また、図案化された自然モチーフは素朴でナチュラルですが、グラフィカルでモダンな印象もあり、作家の個性や力強さも併せ持つ大変コレクタブルなジュエリー作品となっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションも大変良好です。
シルバーのクミスや僅かなキズ、ハンドメイド特有の制作上のムラが見られますが、使用感の感じられないとても良好な状態を保っています。