メキシカンジュエリーと推測されるビンテージジュエリー、シルバーワイヤーを編み込むことで作り上げた造形をフェイスに配置した、重厚なメンズサイズのアンティーク/ビンテージリングです。

シャンクの外側に925の文字と、ホールマーク(作者や工房等のサイン)と思われる刻印が施されていますが、正確に読み取れない為に作者や制作背景が明確ではありません。ただし、925の刻印や造形・デザインなどから、ミッドセンチュリー期のメキシカンジュエリーと推測しています。

伝統的な技術である『ツイステッドワイヤー』のバリエーションの一つであるシルバーワイヤーを編んで構成したもの(ブレーデッドワイヤー)を、ハーフラウンド型のシャンクと組み合わせてリングとして構成しています。また、本作では2本の細いワイヤーを撚り合わせたツイステッドワイヤーが共に編み込まれており、複雑な表情を与えるアクセントとなっています。
シンプルながら手の込んだ造形であり、洗練されたデザインワークや現代的な印象と立体物としての卓越した造形美を感じられるリングです。


また、こちらのようなシルバーワイヤーを編むことで作り出す複雑なスタイルのブレーデッドワイヤーは、メキシカンシルバーにおいて大変古くから見られる造形の一つであり、現在ではメゾンブランドもリバイバルしているデザインとなっています。
インディアンジュエリーにおいても、ヨーロッパのアンティークジュエリーや古いメキシカンジュエリーをデザインソースにして取り込まれており、本作と非常に近い造形ディテールは、ホピの偉大な作家【Ralph Tawangyawma】ラルフ・タワンギャウマ(1894-1972)の1950年代以前に作られた作品においても同様のディテールを見ることが出来、イタリア人作家である【Frank Patania Sr.】フランク・パタニア・シニア(1899-1964)の作品においても類似したリングが残されています。


『925』の刻印については、銀含有率92.5%の地金であることを示す表記であり『STERLING』と全く同じ意味を表しています。インディアンジュエリーにおいては、80年代以降のホピジュエリーで少し使用されていますが、多くの作品において『STERLING』の刻印が用いられています。
STERLINGは1930年代初頭頃に登場し、1940年代後半以降になってショップやトレーディングポストにおいて多用されるようになりました。925とSTERLINGの普及は、歴史的にイギリスに近い国においてイギリス生まれのSTERLINGが多く用いられ、中南米やアジア諸国では925が多く普及しています。アメリカではどちらも普及していますが、インディアンジュエリーでは『STERLING』そして、メキシカンジュエリーでは『925』の使用が大多数となっています。
925シルバー=Sterling Silver/スターリングシルバーは、熱処理によって時効硬化性をもち、細かな細工や加工に向いている為、現在においても食器や宝飾品等様々な物に利用されています。


当店では数少ないメキシカンジュエリーですが、インディアンジュエリーの起源でもある長い歴史を有し、本作の様な普遍的に秀逸な立体造形作品を多く生み出しています。

本作もシンプルでモダンな印象と、重厚で武骨な表情を併せ持った秀逸なデザインには、メキシカンシルバーらしさを感じられます。ビンテージジュエリーでありながら、現代的でどこかロックな印象もあり、多くのスタイルに違和感なく馴染みやすい作品です。
また、近年のメゾンブランドがデザインソースとしているビンテージ作品であることも、その普遍的でモダンなデザインの完成度を物語っているようです。ミニマルで堅牢なシルバーワークと造形美は、長年にわたってご愛用いただけると思われます。

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コンディションは、僅かな摩耗やクスミが見られ、ハンドメイド作品特有の制作上のムラが見られますが、特にダメージの無い良好な状態を保っています。