【ZUNI】ズ二の伝統的な技術であるターコイズインレイによって構成されたモダンで現代的な印象に仕上げられた比較的大きいサイズ(17.5号程度)のビンテージリングです。
おそらく、ズニの有名ファミリーのひとつであるDishtaファミリーによる作品で、同ファミリーの特徴的なラウンドカットターコイズによるインレイを連続して配置したデザイン/造形の作品です。
1950年代後半~1970年代前半頃のミッドセンチュリー期に制作された作品と思われ、当時のアメリカで流行した『ミッドセンチュリーモダン』スタイルの影響を感じさせます。それは、建築家・デザイナー【George Nelson】ジョージ・ネルソンの名作マシュマロチェアを想起させるデザイン/造形であり、ズニの伝統的な技術やディテールで構成されながら、現在においてもポップで斬新な印象を与える魅力的な作品です。
3本のスクエアワイヤーを重ねることでスプリットシャンクのような造形を作り、細い内側からフェイスに向かって幅とボリューム感を持たせ、フェイスとの自然な繋がりを作っています。そこに、9つのラウンドカットターコイズがセットされたフェイスが構成されており、ハンドメイド独特の武骨で粗暴な部分も見られますが、丁寧なシルバーワークによってモダンなデザインにフィットする仕上がりとなっています。
セットされたターコイズは、一部に変色が見られマルチカラーになっていますが、それらを含めて味わい深い表情の石がセットされています。古い作品らしい優しい発色のターコイズであり、少しマットな質感ですがアーシーなグラデーションが入り、1970年代後半以降のズニジュエリーではほとんど見られない無添加ナチュラルターコイズです。
こちらのようなラウンド型やティアドロップ型の小さなターコイズインレイを駆使して構成するデザイン/造形は【Dishta Style】と呼ばれ、ズニの巨匠【Frank Dishta】フランク・ディシュタ(1902-1954)により作り上げられ、その後その子孫によってDishtaファミリーのスタイルとして定着させられました。
ターコイズがインレイされた上記のようなラウンド/ティアドロップ型パーツをフラワーやクラスターを形作るように配置することで、美しい幾何学模様等を生み出すスタイルで、こちらの作品も『Dishta Style』の代表的な造形を持つ作品です。
【Frank Dishta】フランク・ディシュタは、1902年生まれで他の多くのズニ作家と同じく、C. G. Wallace Trading Postに所属していた作家の1人です。上記のように、当時まだまだナバホジュエリーとの差異が大きくなかった時代に、新しくズニのトラディショナルな技術や造形スタイルを築くことに貢献した人物であり、氏のオリジナリティーあるスタイルを生み出しました。
1954年には亡くなっていますが、息子である【Virgil Dishta Sr.】を始め、多くの優秀な子孫を残し育てています。
ズニの作るジュエリーは伝統的に繊細で女性的なイメージを持つものが多く、シルバーワークよりもターコイズのカービングやインレイの技術に重点が置かれてきましたが、こちらのリングについてはビンテージ独特の重厚なシルバーワークで構成されており、存在感のあるボリューム感も持ったメンズサイスのリングです。
ターコイズのクオリティーやハンドメイドらしいシルバーワークは、ビンテージインディアンジュエリー独特の素朴で味わい深い質感を生み、モダンでコンセプチュアルなデザイン/造形との融合によってスペシャリティーを持った作品に昇華されています。
また、そのデザインとズニ特有の有機的な表情は多くのスタイルにフィットし、希少価値も高いハイエンドな作品です。
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コンディションは、シルバーには僅かなクスミがあり、全体に少し使用感やハンドメイド作品特有の制作ムラ等が見られますが、目立ったダメージやリペア跡は無く良好な状態を保っています。