【NAVAJO】ナバホか【PUEBLO】プエブロのアンティークジュエリー、インゴットシルバー(銀塊)から成形されたバンド/地金にプリミティブなスタンプワークが力強く施され、アンティーク作品独特の強さがありどこか洗練された印象も持つアンティーク/ビンテージバングルです。
1920年代後半~1940年代初頭頃に制作されたと思われる作品。インゴットシルバー(銀塊)から成形されたバンドは、日本で『平打ち』と呼ばれるスタイルで、そこにスタンプワークの施されたとてもオーセンティックなバングルです。製法技術も1800年代後半のインディアンジュエリー創成期に近い時期からみられる大変トラディショナルな技術で構成されています。
また、武骨なスタンプワークは大変古い鏨/タガネ(刻印)が使われており、『ファーストフェイズ』と呼ばれるインディアンジュエリーの創成期から受け継がれるデザインですが、間近で見ると細部までこだわりを感じる細かい細工が施された美しいスタンプ。それらにより抽象的な紋様が描き出されていますが、スタンプワーク自体は、粗暴な部分も見られ、紋様の歪みや左右で非対称になっているハンドメイドらしいムラが多く見られます。しかしながら、それらもまた作品の完成度を高いめているようです。
また、製法やディテールからおそらくナバホのシルバースミスによる作品と思われますが、デザイン/造形にはプエブロ(ナバホ以外のアメリカ中西部に起源を持つインディアン部族) の作品を思わせる有機的でアーシーな雰囲気を持っています。
インディアンジュエリーの歴史では、シルバースミスの最初の一人とされているのは、ナバホの【Atsidi Sani】と言う人物ですが、そのあとそれほど長い時間を経ずにAtsidi Saniの息子によりズニ族へ、そしてズニ族からホピ族へとシルバースミスとしての技術が伝来しました。当時の作品はナバホのオールドスタイルをベースに、馬具などに見られるスパニッシュコロニアルスタイルやメキシカンシルバージュエリーの影響を受けながらそれぞれに発展していきますが、現代のような部族毎の特徴は少なく、共通した技術によって作品が作られていたようです。
こちらの作品では、ズニやホピを含むプエブロの特徴と言える植物を想起させるような有機的なデザインのスタンプワークが施されており、プエブロのシルバースミスによる作品の可能性もあると思われます。
【Ingot Silver】インゴットシルバー(銀塊)からの成形は、アンティークインディアンジュエリーにおいて非常に重要なファクターですが、銀含有率/品位などの素材とは関係なく、ジュエリーの製法技術を表します。
現在制作されている作品の多くは、材料として市販されているシルバープレート(銀板/ゲージ)を加工することでジュエリーとして成形されていますが、インゴットから成形する製法では一度溶かしたシルバーを、鍛冶仕事に近い方法であるハンマーやローラーで叩き伸ばすことでジュエリーとして成形していきます。最終的にはどちらもプレートやバーの形態になるため、大きな差は無いように思われますが、インゴットから成形されたシルバーの肌は、硬くなめらかで鈍い光を持っています。それにより生み出されるプリミティブで武骨な作品の表情は、やはりアンティークインディアンジュエリーの大きな魅力です。
また、1930年代にはシルバープレートが登場しますが、当時シルバープレートを用いて制作されたジュエリーは政府によりインディアンクラフトとして認定されず、グランドキャニオンなどの国立公園内で販売できなくなった記録も残っています。
古典的な技術によって構成された作品ですが、現代においてもデザインの独創性や新鮮な印象を失っておらず、素朴で武骨な雰囲気とアートピースのような強さのある印象は多くのスタイルに馴染みやすく、普遍的な造形美は長くご愛用いただけるバングルだと思います。
また、プエブロの作品を想起させるオリジナリティーを持っており、高い史料価値も有する作品です。こちらのような年代に制作されたピースは現存数が少ないため、現在では大変貴重な作品の一つとなっています。
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コンディションも大変良好でシルバーは黒い肌になっていますが、使用感は少なく良いコンディションを保っています。また、ハンドメイドによる造形ですのでスタンプのズレやバンドの捻り等、少し制作上のムラは見られます。