【PUEBLO】プエブロ・【NAVAJO】ナバホの多くの作家が在籍したインディアンクラフトショップ【GARDEN OF THE GODS TRADING POST】ガーデンオブザゴッズトレーディングポストで作られた貴重なアンティーク/ビンテージバングルです。
迫力を持った立体的な造形に、逆卍/Whirling Log/Nohokos等のスタンプワークやファイルワーク(ヤスリで削る技術)が駆使された同工房の作品の中でも大変手の込んだシルバワークと素晴らしいデザインが大変コレクタブルなピースとなっています。
内側には、少し不明瞭となっていますが『HAND MADE BY INDIANS』と『SOLID SILVER』のホールマークが刻印されており、逆卍のスタンプ等も含め、1920年代末~1930年代頃に同トレーディングポストで作られた作品と判断できます。
また、本作と類似した独特なシェイプを持つブレスレットは、内側の刻印に『SOLID SILVER HAND MADE AT THE "INDIAN" GARDEN OF THE GODS-COLO.』の表記が使用されたとされる1925年~1929年頃の作品に多く見られるデザインであり、本作も1929年~1930年代初頭に近い時期の作品である事が推察されます。
当時、同工房の銀製品には『SOLID SILVER』の刻印が刻まれ、それらは全てコインシルバーとされている事から、本作もコインシルバー(品位900=90.0%の純度)のインゴット(銀塊)から成形されていることが判断可能です。
その様なインゴットコインシルバー(銀塊)から成形されたバンド/地金は、独特のアローヘッド/矢頭をモチーフにしたと思われるシェイプにカットされ、9か所に及ぶ巧みなハンマーワークによって全体的に柔らかな膨らみ/アールが与えられています。
これらは、木(丸太)やレッド(鉛の塊)に施された凹みに、地金となるシルバーをハンマーで叩き沿わせることによってドーム状の膨らみを作り上げており、非常に細かく何度もタガネで叩き沿わせる高度なハンマーワークで成形されています。
それらとは異なり、中央部には凹凸二つの金型で挟み込む事により成形されたエッジーなシェルコンチョのリポウズ/バンプアウトが施され、ネイティブアメリカンジュエリーらしい象徴的なアクセントを持つデザインとなっています。
さらに、そのシェルコンチョを起点としてバースト(放射状)にデザインが構成され、エッジ部分は前述のように『ファイルワーク』と呼ばれるヤスリで削る技術を用いて立体的な刻みが施され、中央のデザインと立体感を強調しています。
そして、全体に大小細かな文様を刻む力強いスタンプワークが隙間なく刻まれており、アイコニックな卍モチーフ等と共に一部のスタンプ(鏨)のデザインにはプエブロ独特な図案の刻印も刻まれています。
それらは、プエブロのポッテリー(焼物)の文様等からジュエリーに落とし込まれたデザインだと思われ、このような特徴は、ナバホだけでなくプエブロ出身のシルバースミスが多く所属したGARDEN OF THE GODSらしい特徴であり、同トレーディングポストの独自性や様式美となっているようです。
それらの特徴的なスタンプツール(鏨・刻印)の完成度や有機的な曲線のシェイプは、GARDEN OF THE GODS独特のデザイン/ディテールであり、オリジナリティーと手間のかかるシルバーワークによる粗暴ながら味わい深いハンドメイドネイティブアメリカンジュエリーの歴史を感じさせる作品です。
また本作も【Tourist Jewelry】ツーリストジュエリーや【Fred Harvey Style】フレッド・ハービースタイルと呼ばれる、20世紀前半のサウスウエスト観光産業の隆盛に合わせて作られたスーベニアアイテムの一つですが、全ての工程が一人のインディアンシルバースミスの手によってハンドメイドで仕上げられています。
その為、生産に機械化や分業化が導入されたスーベニアジュエリーとは一線を画し、ワイルドで力強い作品となっています。
【GARDEN OF THE GODS TRADING POST】ガーデンオブザゴッズトレーディングポストは、もともとFred Harvey Companyで働いていた【Charles E. Strausenback】チャールズ・E・ストローセンバックが、1920年にコロラド州Pike's Peakの国立公園『ガーデンオブザゴッズ』で始めた観光客向けのインディアンアートショップです。
多くの優秀なプエブロインディアン作家を擁し、ナバホのオールドスタイルをベースにしながらも、プエブロスタイルを積極的に取り入れたミックススタイルが特徴的な工房です。
所属していたのは、インディアンジュエリー創成期の最もクリエイティブな作家の一人として知られるサン・イルデフォンソの【Awa Tsireh】アワ・シーディー(1898-1955)をはじめ、ナバホの【David Taliman】デビッド・タリマン(1902or1901-1967)、他にも【Epifanio Tafoya】【William Goodluck】【John Etsitty】等、プエブロ・ナバホの中でも、後に偉大なアーティストとして知られる多くの作家達であり、それぞれが独創的なスタイルを生み出し、沢山の傑作を送り出したインディアンアートショップです。
GARDEN OF THE GODSも1900年代以降のサウスウエスト観光産業の隆盛により創業された「スーベニア(記念品)ビジネス」と言う意味では、【Fred Harvey Style】フレッド・ハービースタイルと呼ばれるジャンルにカテゴライズされている【BELL TRADING POST】や【Maisel's Indian Trading Post】、【Arrow Novelty】等の分業化や機械化を進めインディアンクラフトの量産化を図ったメーカー/Manufacturersと同じスタートを切っていますが、インディアンアートショップとして古い伝統技術や製法を守り、独自性を持ちながら工芸品/アートピースとしての制作が行われており、上記の様なフレッド・ハービースタイルのマスプロダクト製品とは一線を画す存在です。
しかしながら、当時とても新しいかったポップなスタイルを持つAwa Tsirehの作品が、【BELL TRADING POST】をはじめとする量産メーカーに模倣されたことや、【Fred Peshlakai】の作品、【C. G. Wallace】で作られたデザイン/造形が上記のようなメーカーのデザインソースとなったことによりGARDEN OF THE GODS TRADING POSTや【Fred Wilson's Indian Trading Post】、【Southwestern Arts and Crafts】等の分業や量産化を図っていない工房の作品も、模倣されたデザインソース(元ネタ)でありながら量産メーカーによるフレッド・ハービージュエリーと混同されることになってしまいました。
1940年代には、コロラド州ガーデンオブゴッドとコロラドスプリングス、そしてアリゾナ州フェニックスにも店舗を展開しますが、1956年頃にCharles E. Strausenbackが亡くなっており、その後は妻がビジネスを引き継いでいたようですが、1979年にはビジネス自体が買収されました。そのため、ジュエリー等の制作は1950年代頃までだったと思われます。
また、同店はコロラド州にある神々の庭/Garden of the Godsにて、現在もヒストリックなトレーディングポストとして当時の姿を残して土産物店・カフェとして運営されています。
【Coin Silver】コインシルバーとは、インディアンジュエリーにおいては銀含有率90.0%の地金を表します。
また、アメリカの古い硬貨における銀含有率は900ですが、日本では800~900や古い100円硬貨では600、メキシカンコインは950であり、900シルバーが最も多く使われていますが世界中で共通した純度ではありません。
同様に【Sterling Silver】スターリングシルバー=【925シルバー】は、銀含有率92.5%の地金であり、こちらは世界中で共通の基準となっています。
また『割金』と呼ばれる残りシルバー以外の7.5%には、銅やアルミニウム等が含まれています。(現在では、スターリングシルバーの割金は7.5%全てが銅と決められています) 925シルバーは熱処理によって時効硬化性をもち、細かな細工や加工に向いていたため食器や宝飾品等様々な物に利用されていますが、インディアンジュエリーにおいては、その初期に身近にあった銀製品、特にシルバーコインを溶かすことで、材料を得ていた背景があるため、現代でも限られた作家によりコインシルバーを用いる伝統が残されています。
シルバーの色味や質感は、『割金』や製法にも左右され、コインシルバー900とスターリングシルバー925の差異は純度2.5%の違いしかない為、見た目で判断するのは困難ですが、やはりコインシルバーは少し硬く、着用によってシルバー本来の肌が現れた時に、スターリングシルバーよりも深く沈んだ色味が感じられると思います。
さらに古い1800年代後半~1920年代以前の作品では、メキシカンコインが多く含まれていた為、そのシルバーの純度は95.0%に近くなっている個体も多いようですが、身近な銀製品を混ぜて溶かしていた歴史を考えると純度に対してそれほど強い拘りはなかったことが推測されます。
【Ingot Silver】インゴットシルバー(銀塊)からの成形は、アンティークインディアンジュエリーにおいて非常に重要なファクターですが、銀含有率/品位とは関係なく、ジュエリーの製法技術を表します。
現在制作されている作品の多くは、材料として市販されているシルバープレート(銀板/ゲージ)を加工することでジュエリーとして成形されていますが、インゴットから成形する製法では一度溶かしたシルバーを、鍛冶仕事に近い方法であるハンマーやローラーで叩き伸ばすことでジュエリーとして成形していきます。
最終的にはどちらもプレートやバーの形態になるため、大きな差は無いように思われますが、インゴットから成形されたシルバーの肌は、硬くなめらかで鈍い光を持っています。
それにより生み出されるプリミティブで武骨な作品の表情は、やはりアンティークインディアンジュエリーの大きな魅力です。
また、1930年代にはシルバープレートが登場しますが、当時シルバープレートを用いて制作されたジュエリーは政府によりインディアンクラフトとして認定されず、グランドキャニオンなどの国立公園内で販売できなくなった記録も残っています。
こちらの作品に刻印されている『SOLID SILVER』は、無垢の銀製と言う意味で、メッキでないことを表しており、インゴットシルバーであることを表してはいませんが、当時のGARDEN OF THE GODSの作品は全てがインゴットシルバーからハンマーで叩くことで成形されており、こちらの作品が制作された時期には全てのシルバージュエリーにコインシルバー(銀含有率90.0%の地金)が使われていたとされています。
【卍】鉤十字 (Swastika/スワスティカ)とは・・・
ネイティブアメリカンにおける卍モチーフは【Whirling Log】ワーリングログや【Nohokos】ノホコスと呼ばれ『LOVE・LIFE・LUCK・LIGHT』4つの単語における頭文字【L】を組み合わせる事で生み出された幸福を象徴するラッキーシンボルとして長い歴史を持っています。
また世界的にも、サンスクリット語の『幸運』を意味する言葉に由来し、仏教、ヒンドゥー教、オーディン教、さらにキリスト教における十字の一種としても用いられ、神聖なシンボルとして古くから世界中で見られる記号・象徴の一つとなっています。
日本においても家紋や寺社を表す地図記号として現在でも使用され、身近な図案や記号として用いられています。
しかしながら1933年のナチスドイツが出現し、1939年にはアメリカも第二次世界大戦に参戦すると、敵国ドイツ(ナチス)のシンボルであるハーケンクロイツと非常に類似した記号は不吉だとして使われなくなってしまいました。
1941年の新聞記事にも残っていますが、ネイティブアメリカンたちにも卍が入った作品の廃棄が求められ、政府機関による回収も行われました。
その後、大戦中にも多くの卍を用いた作品が廃棄されてしまった歴史があり、現存しているものは大変貴重となりました。
本作はそのような歴史的な受難を乗り越えて現在まで受け継がれてきたピースであり、史料価値を感じる事の出来るビンテージジュエリーとなっています。
また、ネイティブアメリカンの工芸品においては、ジュエリーだけでなくラグやバスケット、ポッテリー等でも重用されていたモチーフですが、卍と逆卍の使い分けは意識されていなかったようで、比較的逆卍が多いようにも感じられますが、卍・逆卍共に区別なく用いられていたと思われます。
プリミティブな技術で作り上げられたワイルドなデザイン/造形は男性的ですが、ハンマーワークによる柔らかな曲面や細かなスタンプワークは有機的な印象を作り、その奥行きのある豊かな表情によって、多くのスタイルに溶け込む素朴なムードも備えたブレスレットです。
また、比較的ワイドな幅を持ち、コーディネイトの要と成り得る強い存在感を示しますが、シルバーのみで構成されたソリッドな質感は派手な存在感を与えず、季節やシーンを問わず長くご愛用頂けると思われます。
GARDEN OF THE GODS TRADING POSTの個体は、ツーリストジュエリーとして作られた作品ながら、アンティーク工芸品としても評価される美しさを持ち、高い完成度と共にプエブロ特有のデザインを取り入れた独自性も有する事でどこか威厳さえも感じさせます。
現存数が少ない同トレーディングポスト作品の中でも高い希少性を持つ秀逸なデザインのブレスレットであり、史料価値も高くミュージアムクオリティを誇る貴重なアンティークピースの一つです。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションも大変良好です。
シルバーのクスミやハンドメイド作品特有の制作上のムラ等は見られますが、使用感の少ない大変良好な状態を保っています。
【卍】の入るピースは戦後もほとんど着用されずに保管されていることが多く現存数は少ないですが、コンディションの良い個体が多いことも特徴の一つです。