【ZUNI】ズ二のビンテージジュエリー、『ボックス構造』や『ホロースタイル』と呼ばれる高度なシルバーワークによって立体的で大変厚く重厚なバンドが形作られ、そこにアーシーな【Nevada Blue Turquoise】ネバダブルーターコイズがインレイされたアンティーク/ビンテージバングルです。
本作の様な作品は、ミッドセンチュリー期まではズニジュエリーのオーセンティックな造形スタイルの一つとなっていました。
しかしながら、1970年代以降になると工業的なキャストによって作られた量産品(石をインレイするだけでジュエリーが完成するシルバーの土台)の普及により高度なシルバー彫金技術の継承が途切れてしまった事や、上質なターコイズの枯渇・価格高騰によって、現在では殆ど制作されなくなってしまいました。
ズニのシルバースミスや石のカーバー(彫工家)は、ファミリーで代々技術やデザインを受け継いでいる為、正確な制作時期を特定するのは困難ですが、造形スタイルやマウントされているターコイズ等からは、1940年代末頃~1970年代初頭頃までに作られた作品と推測されます。
バンド(地金)は地金製法の一種である『ボックス構造』で形作られ、非常に手の込んだシルバーワークによって形作られています。
ターコイズをインレイする為の立体的な格子を施した表と、バンドの内側と外側、そして上下の厚みとなるパーツを全て別々に切り出し、それぞれをハンマーワークによって立体的なフォルムに成形、それらのパーツを高度な技術によってロウ付けする事でバングルを立体物として作り上げられていることが分かります。
その厚みとボリューム感のあるバンドの一部は中空となっており、その様な造形スタイルは『ホロースタイル』と呼ばれます。
中空部分がありますが、分厚いシルバーを使用することで大変重量感があり、それが特別な上質感を与えることに寄与しているようです。
この様な手の込んだシルバーワークにより、フロント部分はとても厚く、ターミナル(両端)にかけて少し薄くなるそのフォルムはとても美しいボリューム感を持ち、重厚な仕上がりとなっています。
さらに、美しいターコイズがインレイされたフェイス部分も大きくドームシェイプに成形される事で、ブレスレット自体の立体的な造形を際立たせ、リッチで上質な存在感を示しています。
また、その様な立体としてブレスレットを形作る製法の為、フラットな状態にスタンプワークを刻み最後に丸く成形する事が基本となるナバホのバングルと比べサイズ調整(バンドを曲げる)が非常に困難となります。
さらに、バンド上下の分厚いエッジ部分にはスタンプワークが刻まれており、さり気ないディテールながら、ビンテージネイティブアメリカンジュエリーらしい表情が与えられています。
インレイされたターコイズは、彩度の強い石ではありませんが、緑味が無く澄んだ水色を基調にチョコブラウン~ブラックのタイトなスパイダーウェブを持ち、水面の様なグラデーションが見られることで大変複雑な景色を形成しており、ネバダブルーらしい特徴を備えたアーシーなターコイズです。
また、奥行きを感じさせる透明感も素晴らしい石であり、特別な存在感と煌きを誇っています。
現在も硬度を感じさせる艶を保ち、ミドルグレード上位以上にグレーディングされるジェムクオリティを誇る無添加ナチュラルターコイズです。
長い時を経ていながら現在も強い存在感を示す上質なターコイズであり、アンティーク/ビンテージ作品においてこちらのようなグレードのターコイズが用いられていることは少なく、作品の希少性を高めています。
【Nevada Blue】ネバダブルーターコイズは1901年に発見され、【Timberline Mine】ティンバーラインと言う別名を持つターコイズ。ナゲット(塊)で採掘され、高い硬度と美しい色、独特の複雑な景色を持つターコイズを産出する鉱山です。
1970年代頃には多くの有名作家に愛され、ナバホの【Lee Yazzie】リー・ヤジー(1946-)や、コチティの【Joe H. Quintana】ジョー・キンタナ(1915-1991)の作品でも散見されるターコイズです。
またその制作背景については、推測や想像の域を超えませんが、遺されている資料や造形スタイル等から【C. G. Wallace Trading Post】C.G.ウォレスインディアントレーディングポストで制作された作品が想起されます。
しかしながら、本作にはホールマーク(作者や工房のサイン)が刻印されていない為、作者や工房等は全て不明となっています。
【Hollow Style】中空構造/ホロウスタイルは、インディアンジュエリーにおいて1940年代前後からみられる彫金技法・技術の一つで、本作の様に立体的なシルバーの造形を中空構造で構成する造形スタイルを指します。
ハンマーワークや立体的なカッティング、そして繊細なロウ付けを駆使する技術であり、美しく造形するには高い技術を必要とし、本作の様に立体的で綺麗なフォルムを作り上げるのは容易ではありません。
ボリューム感のある造形を過剰な重量にすることなく形作ることが出来る技術であり、インディアンジュエリー以外でも古くから見られる技法です。
【Inlay】インレイ/チャンネルインレイは、古くからズニ族が得意として発展させた技術であり、カットしたターコイズやシェルなどをシルバーにピッタリと嵌め込む螺鈿細工のような技術です。
ナバホのシルバー技術に次ぐ長い伝統のある技術であり、1920年代以降、現在に至るまで多く作られましたが、そのモチーフはサンダーバード、ナイフウイング、レインボーマン、サンフェイス等、とても多様なモチーフが見られます。【C. G. Wallace INDIAN TRADER】C.G.ウォレスインディアントレーダー等有力なトレーダーの元では、ナバホのシルバースミスがシルバーワークを担当し、そこにズニのシルバースミスがインレイワークを施した共作品なども作られてます。
また、現在ではインレイ技法で制作される多くのジュエリーがキャストによる量産品(量産されたシルバーに石をはめ込むだけ)となってしまいましたが、本作はシルバー部分を含めてすべてがハンドメイドで成形されています。
本作ではインレイ技法を用いた作品の中でも高度なシルバーワークによって構成されており、この様な造形は、現在では極限られた作家しか制作出来なくなってしまい、ビンテージジュエリー特有のスペシャリティを持つ作品です。
また、大きなボリューム感による強い存在感がありながら繊細な仕事が詰め込まれた表情は、女性に向いた可憐な印象を生み出しており、ターコイズが持つ複雑でアーシーな表情により他に類を見ない上質感も宿すブレスレットです。
そして、それは日常のスタイルに馴染む許容性と、多くのコーディネートで要となる存在感を示し、装着により高揚感さえ感じるウェアラブルアートとしても高く評価されるアンティークジュエリーとなっています。
ナバホ・ホピ等のジュエリーとも相性が良く以外に色々なアイテムとスタイリングしやすいブレスレットです。
技術力・造形力の結晶の様なシルバーワークと着用者に自然・大地の一部を身に付けるような感覚を与えるワイルドでアーシーなターコイズにより大変コレクタブルで貴重なアンティーク/ビンテージジュエリーの一つとなっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションは、シルバーに多少のクスミや細かなキズが見られ、制作上のロウ付け跡等、ハンドメイド特有の制作上のムラも見られますが、着用に不安の無い強度を保ち、ビンテージジュエリーとしては良好な状態かと思われます。
また、ターコイズにはマトリックス部分に凹凸が見られますが、それらはカットされた時からの天然石が持つ特徴であり、現在も変色の無い美しい色と艶を保っています。