【NAVAJO】ナバホのシルバースミスによるアンティークジュエリー。裏面にある『UITA17』の刻印により【Hubbell Trading Post】ハッベルトレーディングポストで制作されたことが確認できるピース。バックルとループ2つがセットとなったアンティーク/ビンテージレンジャーバックルセットです。
※レザーベルトは付属していません。バックルとループパーツ2点のみのご紹介となります。
ネイティブアメリカンアートの成長と普及に大きく貢献したヒストリックなトレーディングポストであるHubbell Trading Postで制作・販売された事が明確な作品であり、大変コレクタブルでシルバーワークの質も高いベルトバックルとなっています。
1940年代~1950年代前半頃の作品と推測され、本作の様な幅のレザーベルトを対象としたベルトバックル・ベルトループ・ベルト先端用のチップパーツ等をセットとして作られたアイテムは『レンジャーバックルセット』と呼ばれます。
現在も多く作られている幅20㎜程度のベルトにフィットするサイズとなりますが、本来レンジャーベルトと呼ばれるタイプのベルトは、30~36㎜幅のベルトの上にバックル部分を装着する為の細いレザーを縫い留めたタイプとなります。(このような仕様は、レンジャーが乗馬時にバックルの金属部分が肌に触れにくい工夫が起源となっています)
約20㎜に作られたベルトは現代でも多く普及しており、控えめなサイズのバックルと共に日常的なコーディネイトに取り入れて頂きやすい作品かと思われます。
質実剛健で伝統を踏襲したシルバーワークによって形作られており、木(丸太)やレッド(鉛の塊)に施された凹みに、地金となるシルバーをハンマーで叩き沿わせることによってドーム状の膨らみを作り上げる高度なシルバーワークによって立体的な丸みを持った造形が形作られています。
さらにその裏面にはフラットなシルバーが施される事で【Hollow Style】ホロウスタイルと呼ばれる中空構造となっており、重すぎず高い強度を誇るバックルとなっています。
また、プロング(ツク棒)部分が中央から上下に動かないように細工されていたり、そのプロング自体もハンマーワークによって強度と使用感が両立された造形となっており、細部まで拘り抜いたシルバーワークからは作者の熱量と技量が伺えます。
バックルのエッジ部分には、力強いスタンプワークが連続して刻まれる事でその立体的な造形が強調されており、レザーで隠れない部分の中央にはオーバルカットされたナチュラルで味わい深いターコイズがあしらわれています。
さらに、その石の上下にはさりげないアップリケが施され、ループパーツにもそれぞれナバホジュエリーらしい文様が刻み込まれています。
バックルに与えられた全体のアール(ドームシェイプ)によって、独特な上質感や立体的な迫力、そしてバックルに必要な高低差が生み出されています。
裏側に刻印された『UITA』が表している【the United Indian Trader's Association】(以下UITA)は、1931年に組織されC. G. WallaceやGARDEN OF THE GODS TRADING POST、Tobe Turpen等をはじめ、最終的には75のトレーディングポスト/インディアンアートトレーダーが加盟する組織となりました。
UITAが組織された目的は、BELL TRADING POSTやMaisel's等のManufacturersと呼ばれるインディアン工芸品の分業化や量産化を推し進めたメーカー(マスプロ)に対抗するためで、伝統的な製法や材料、一つの作品を一人のシルバースミスが全行程を通して制作するという体制等を守ることなどを規定し、上記のマスプロ品との差別化を計ることでした。
当時、サウスウエスト地方の観光の隆盛に伴ってスーベニア産業もその需要に応えるため、多くのショップやメーカーが生まれました。それらは元々トレーディングポストとして運営されていましたが、やがて多くのインディアンを雇い入れるMaisel'sやBell等のメーカーも創業されることになります。
初期の1910年代~20年代までは、双方の作品には製法やデザインに大きな差がありませんでした。 しかし、後者のメーカーは1930年代に入ると工房で多くのインディアンに同時制作させることにより分業化や機械化をはじめ、少しずつ伝統的な製法や作品の味わいは失われていきました。
また、それらのメーカーの生産する作品の多くはクリエイティブな作家を要するトレーディングポストで生まれた作品の模倣も多く、NAVAJO GUILDの作品やGARDEN OF THE GODS TRADING POSTに所属したAwa Tsirehのデザイン、VAUGHN'S Indian Storeの作品等は多くの模倣品が作られています。
特にこれらの模倣作品はピンブローチが多く、UITAの作品はブレスレットやコンチョベルト等すべてのアイテムに見つけることが出来ますが、ピンブローチに比較的多く刻印されている傾向があるのは、模倣品との明確な区別を促すためだったのではないかと推測されます。
また、UITAではそれぞれのトレーダー(ショップ)ごとにナンバーを割り振っており、『UITA』の末尾にそれぞれのナンバーが刻印されています。それらの内、いくつかのナンバーはそのトレーダーが判明していますが、いまだ不明となっているナンバーも多く存在しています。
『1』 = 【Gallup Mercantile】 ギャラップ マーカンタイル
『2』 = 【C. G. Wallace INDIAN TRADER】C.G.ウォレスインディアントレーダー
『12』 = 【Packards Indian Trading】パッカーズインディアントレーディング
『21』 = 【SOUTHWEST ARTS&CRAFTS/Ganscraft】サウスウエスト アーツアンドクラフト
等々・・・
そして、本作も内側に刻印されたホールマーク【UITA17】の末尾の数字『17』から、【Hubbell Trading Post】で制作・販売された作品であることを特定することができます。
【Hubbell Trading Post】ハッベルトレーディングポストは、1878年に【J. Lorenzo Hubbell】ジョン・ロレンツォ・ハッベルによってアリゾナ州のインディアン居留地であるガナードに設立され、ネイティブアメリカンとの交易を目的として運営された最古のトレーディングポストの一つです。
ネイティブアメリカンの工芸品をアメリカを代表するアート・民芸品として広く普及させ、特にラグとジュエリーにおいては非常に大きな役割を果たしたトレーディングポストです。
経営者であるJ. Lorenzo Hubbellは、トレーディングポストの運営だけでなく政治家としても活動し、スペイン語・英語・ナバホ語を習得していました。
そして、ナバホの人々と対等な立場での交易を提案し、その交易品の成長を助けました。
特にナバホラグの発展に貢献し、同トレーディングポストの周辺で作られたラグである『ガナード』と呼ばれるリージョナルラグ(地域特性の強いナバホラグ)は、美しい赤を特徴とし、現在でも大変人気の高い作品群となっています。
それらのデザインは、J. Lorenzo Hubbellがサンプルとして提供した世界中の織物を起源としており、染料等の新しい材料も同トレーディングポストが供給しました。
『ガナード』という地名もJ. Lorenzo Hubbellによって名付けられた地名であり、ナバホ族のチーフ『Ganado Mucho』の名前に由来しています。
ジュエリーにおいても1910年代頃から『ハッベルグラス』と呼ばれるイミテーションターコイズをイタリアのベネチアにオーダーしており、安定した供給が難しかったターコイズに代わる素材として世界初のイミテーションターコイズを生み出しています。
それら『ハッベルグラス』を用いた作品は、その現存数の少なさや独特な表情等から、現在では大変貴重な作品群となっています。
1960年に国定歴史建造物に指定され、1967年にはヒストリックなトレーディングポストとして国立公園協会の運営となりましたが、現在でも100年前と大きく変わらない姿で営業が続けられています。
UITA参加時期は明確になっていませんが、『17』というナンバーから1930年後半~1940年代頃と推測されます。
『STERLING』の刻印は、銀含有率92.5%の地金であることを示す表記であり、1930年代初頭頃には登場していました。
ただし、ショップやトレーディングポストにおいて多用されるようになったのは戦後である1940年代後半以降のようです。
本作の様に1940年代以前に作られたジュエリーでも散見されますが、第二次世界大戦中の金属需要が影響したと推測され、1940年代末以降の作品で非常に多くみられるようになりました。
『925』の表記も同じ意味を持っていますが、925の刻印はインディアンジュエリーにおいては非常に新しく採用された刻印であり、そのほとんどが1990年代以降の作品に刻印されています。
主にイギリスの影響を受けた国において『STERLING』、それ以外の国において『925』の表記・刻印が多く使用されています。
Sterling Silver/スターリングシルバー=925シルバーは、熱処理によって時効硬化性をもち、細かな細工や加工に向いている為、現在においても食器や宝飾品等様々な物に利用されています。
ナバホの伝統的で高度な技術によって形作られた作品であり、素朴でオーセンティックな印象を受けますが、その立体的な造形やセンスを感じさせるクリーンなデザインには、作者の個性が光りさり気なくも主張のあるベルトバックルとなっています。
また程よいボリューム感と派手さの無い印象により、日常的あコーディネイトに取り入れて頂きやすく、長年にわたってご愛用いただけるかと思われます。
アンティークピースながら完成されたシルバーワークと上質感が体感できる作品。ヒストリックな背景を持つコレクタブルな作品であり、トレジャーハントプライスなピースの一つとなっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションは、経年と着用によりエッジの摩耗やハンドメイド作品特有の制作上のムラ等がありますが、特に目立ったダメージはなく着用に不安の無い状態を保っています。
ターコイズにつきましても経年によりマトリックス部分の凹凸(マトリックスロス)等が見られますが、石のガタツキ等は無くご着用にあたって不安の無いコンディションとなっています。