【NAVAJO】ナバホのアンティークジュエリー、中央にサンダーバード、その両サイドにはアローが刻まれた【卍】Whirling Log/Nohokosのアップリケが施されたアンティーク/ビンテージバングルです。
【Fred Harvey Style】フレッド・ハービースタイルや【Tourist Jewelry】ツーリストジュエリーと呼ばれる20世紀前半頃にアメリカ中西部の観光客向けに制作されたスーベニアアイテム(土産物)の一つですが、そのデザインやシルバーワークの完成度が素晴らしく、大変魅力的な個体となっています。
1930年代頃に作られたピースで、フロント部分がカットアウトされる事で、2本に割り開かれたスプリットバンドに近い造形となっています。
その中央にはスタンプワークによって細部が描き出されたサンダーバード、その左右にはアローのスタンプが印象的な卍がアップリケされています。
さらに、バンドのサイドからターミナル(両端)にかけてもアロー等のスタンプワークが配され、ターミナルにはキャッチーで質の高いラトルスネークのスタンプとなっています。
ツーリストジュエリーのオーセンティックなモチーフや構成となっていますが、それらの中でもシルバーワークが丁寧で仕上がりの美しいバングルです。
また、多くの工程がハンドメイドで作られているようですが、一部の工程には機械が用いられているため、マシン&ハンドメイドのハイブリッドなピースです。
しかしながら同じものが量産されたわけではなく、類似したディテールを持ったジュエリーは発見できますが、構成まで似たバングルの現存数は非常に少なくなっています。
スタンプや造形スタイル等から、1923年により創業され多くのナバホやプエブロの職人が所属した有名工房【Maisel's Indian Trading Post】マイセルズ インディアントレーディングポストや、1932年創業の【BELL TRADING POST】ベルトレーディングポストで制作されたものと推測されますが、ショップマークやホールマークは入らず詳細は不明となっています。
ただし、当時のカタログ資料によればその製作工房によらず、コインシルバー製である可能性の高い事が推測されます。
【Thunderbird】サンダーバード はインディアンジュエリーの伝統的なモチーフの一つで、伝説の怪鳥であり、雷や雲、ひいては雨とつながりが深く幸福を運んでくるラッキーシンボルでもあります。 ジュエリーでは『限界の無い幸福』を表すシンボルであり、ネイティブアメリカンの守り神的存在です。
実在しない怪鳥の為にその容姿は作者の意匠に委ねられており、イーグルの様な威厳のある姿から、小鳥の様な可愛いデザインまで幅広く表現されているのも魅力の一つとなっています。
卍 【スワスティカ】 Whirling Log 【ワーリングログ】について・・・
4つの【L】 『LOVE・LIFE・LUCK・LIGHT』 からなる幸福のシンボル卍(Swastikaスワスティカ)はラッキーシンボルとして当時よく使われていたモチーフです。
しかしながら、1933年のナチスドイツ出現、1939年にWW2開戦によりアメリカにおいては敵国ドイツのハーケンクロイツと同一記号は不吉だとして使われなくなってしまいました。
当時の新聞記事にも残っていますが、インディアンたちにも卍が入った作品の廃棄が求められ、政府機関によって回収されたりしたようです。
その後、大戦中にも多くが廃棄されてしまった歴史があり、現存しているものは大変貴重となりました。
こちらはそのような受難を乗り越えて現存しているものです。
【Arrow/Arrowhead】アロー/アローヘッドは、『お守り』の意味合いを持ちインディアンジュエリー創成期からみられる最古のモチーフの一つです。
【Rattlesnake】ガラガラヘビ/ラトルスネークは、インディアンにとって神聖な存在として、特にプエブロインディアンの間で古くからジュエリーやポッテリー等、色々な作品に用いられました。
当店のロゴにも登場するモチーフであり、脱皮して成長していく姿から、<挑戦><革命><知恵> 等を象徴するシンボルとされています。
【Coin Silver】コインシルバーとは、インディアンジュエリーにおいては銀含有率90.0%の地金を表します。
また、アメリカの古い硬貨における銀含有率は900ですが、日本では800~900や古い100円硬貨では600、メキシカンコインは950であり、900シルバーが最も多く使われていますが世界中で共通した純度ではありません。
同様に【Sterling Silver】スターリングシルバー=【925シルバー】は、銀含有率92.5%の地金であり、こちらは世界中で共通の基準となっています。
また『割金』と呼ばれる残りシルバー以外の7.5%には、銅やアルミニウム等が含まれています。(現在では、スターリングシルバーの割金は7.5%全てが銅と決められています) 925シルバーは熱処理によって時効硬化性をもち、細かな細工や加工に向いていたため食器や宝飾品等様々な物に利用されていますが、インディアンジュエリーにおいては、その初期に身近にあった銀製品、特にシルバーコインを溶かすことで、材料を得ていた背景があるため、現代でも限られた作家によりコインシルバーを用いる伝統が残されています。
シルバーの色味や質感は、『割金』や製法にも左右され、コインシルバー900とスターリングシルバー925の差異は純度2.5%の違いしかない為、見た目で判断するのは困難ですが、やはりコインシルバーは少し硬く、着用によってシルバー本来の肌が現れた時に、スターリングシルバーよりも深く沈んだ色味が感じられると思います。
さらに古い1800年代後半頃の作品では、メキシカンコインが多く含まれていたためか、そのシルバーの純度は95.0%に近くなっているようですが、身近な銀製品を混ぜて溶かしていた歴史を考えると純度に対してそれほど強い拘りはなかったことが推測されます。
本作もコインシルバーから成形された硬く渋いシルバーの質感が特徴的で、ツーリストジュエリーらしいキャッチーな表情とビンテージジュエリー特有の雰囲気を帯びており、スリットにより肌の透けるバンドの造形も含め、性別やスタイルを問わず多くのコーディネイトに馴染みやすいバングルとなっています。
また、多くのモチーフが盛り込まれた見所の多いピースであり、アイコニックなサンダーバードモチーフは、男性向けのアクセサリーには重要な要素である『ギャップ』と『遊び心』を与えてくれるアイテムです。またそれは、日常のスタイルにアクセントと奥行きをもたらしてくれると思われます。
サンダーバードモチーフは現在、アメリカ国内でも最も人気の高いデザインの一つであり、こちらの様なジュエリー作品は特に希少でコレクタブルなピースとなっています。
◆着用サンプル画像はこちら◆
コンディションも大変良好です。
シルバーの僅かなクスミやハンドメイド特有の制作上のムラ等などは見られますが、特にダメージの無いとても良好な状態を保っています。
【卍】の入るピースは戦後もほとんど着用されずに保管されていることが多く、現存数は少ないですが、コンディションの良い個体が多いことも特徴の一つです。